あのころの、 (実業之日本社文庫)

窪 美澄,瀧羽 麻子,吉野万理子,加藤千恵,彩瀬まる,柚木麻子による女子高生青春アンソロジー。
女子高生ですが当人的にはほとんど恋愛は関わってこなくて、むしろ百合百合である。
高校卒業したらもうこんな風に一緒にいられないとか、たくさんの時間と出来事を共有しているのに同じものを見ていないとか、一緒に東京へ行こうとか、女子校で女の子にキャーキャーいう感覚。焦燥感に絶望感、ともだち。
百合ですよって言うのは単に女の子同士がキャッキャウフフしているだけに留まらずキスまではするからです。でも性的な百合はないよ。
アンソロだったら割と当たり外れがあったりもするんですが、これは割とどれも面白い。
で特に好きなのは加藤千恵「耳の中の水」 彩瀬まる「傘下の花」 柚木麻子「終わりを待つ季節」
要するに百合百合してるやつです!
「耳の中の水」は仲良しグループのかなめから「好きな人ができた」と告白され、きゃあきゃあいいながら協力しかなめは無事彼氏ができた。のはいいのだけど四人は段々すれ違ってきたように思う。高校2年生、進級したくないようずっとここでいたいようという話。
「傘下の花」は転勤族の母に連れられやってきた長野県での話。標準語の私・訛ってる周り。馴染めない。
そして出会ったのが老舗の和菓子屋の一人娘だった。
「終わりを待つ季節」は大学推薦をとって私の選択はこれで間違ってなかったんだろうかエスカレーターではなく外に出るべきではなかったのかと悩み、ひょんなことから学年1の人気者と仲良くなる話。

「約束は今も届かなくて」は鷺沢萠さんのことが出てきてドキッとした。訃報を目にしたのも今ぐらいの季節だったなあ。ぐぐったら4月11日、もう8年前のことでまだ35歳だった。

「でも、女の子も怖いよね。みんなさあ、子供です、無邪気ですって顔しているんだけど、体はもうバッチリ大人なんだよね。男が欲しくてうずうずしているんだよ。私はいわば男の代替品。もみの木の代わりのヒマラヤ杉、ホットケーキミックスで作るお菓子、口紅じゃなくて色つきリップクリームってとこ」

(P256)