小説家になろうで連載→書籍化→加筆修正して文庫化が本作。連載第1回は2010年。
ハルカがまだ女子高生だったころ、日本から異世界に召喚された。言葉を教えられ理解できるようになったころ、召喚者には「手違いだった。元の世界には戻してやれない」と言われた。ハルカはその後生活のために魔術の道を歩み、師匠となった老魔術師はある朝死んでいた。それから6年後、ハルカは戦地に立っていた。
ハルカは女性だが、出征を求められた際に侮られないよう魔術で男性の姿に化けてから出立した。

物語はハルカが粉塵爆発で敵を殲滅し、息のある味方を片っ端から蘇生し魔力の限界まで癒し続けて限界を迎えたところから動き始める。生きる気力をなくしていた青年にハルカは「私が死んだら家に帰って自殺でも何でもしろ、その代わり私が生きのびたらお前が捨てたお前の一生は私が拾う」と宣言し、ハルカは生き残った。
青年の名前はリカルド・メルツァース・ブラムディ。美形で騎士用の儀礼服を身にまとい実用性を妨げない程度に装飾された剣を佩いた絵に描いたような騎士だ。騎士といえば軍部のエリートで高貴な人間の護衛から指揮まで行う、ただの魔術師のハルカから見ればとてつもない高位の人間だ。
リカルドは貴族でありながら平民ハルカの従僕として仕えるし我が家で療養してくださいという。

物語の着陸場所が分からないままに読んでいた。1人称小説だけど、語り手が時折変わる。カメラを持つ人間は1人や2人ではない。視点が変わったことはわかるが誰目線なのかはすぐにはわからないところがもどかしかった。
読みながらロマンス小説ってこういう感じなのかなあと思うことが結構あった。そう思う程度に戦時下においても戦闘描写より恋愛描写のほうが圧倒的に多い。