風車祭 上 (角川文庫)風車祭 下 (角川文庫)

97歳の生年祝い「風車祭(カジマヤー)」を迎えたオバァ、フジの楽しみは長寿と人を弄ぶことだ。
長寿者が多い沖縄といえども風車祭をできる者は早々おらず、フジの同級生はもうこの世にいない。
風車祭を控えたこの1年は長い1年だった。魂(マブイ)を落としてはユタに回収させることは日常茶飯事だったが、もう2度とマブイを落とさないようにお守りを肌身離さず身につけ、マブイ不在の間は貴重な経験と思い出を作った。すべての始まりは旧暦(沖縄暦)8月15日シチの日。あの世の正月のことだった。

高校生の武志はシチの日に200年以上もこの島にとどまる美しき盲目の幽霊ピシャーマと6本足の豚ギーギーに出会い恋に落ち、マブイも落としてしまう。武志はピシャーマがグソー(後生、あの世)に旅立てるように手助けをする。
ある夜ピシャーマは夢の中でニライ神マユンガナシィと出会う。マユンガナシィはこの島が滅びる予言を次々に下した。
やがて島は数々の災害や凶事に見舞われ始める。

沖縄の祭事・民謡・あとは沖縄語がいっぱいまざって「沖縄ってまじファンタジー」っていう感じがする。
主人公は武志なんだよなあ? と思いつつフジオバァの主役喰いっぷりがすごい。
武志と郁子とピシャーマのパナパナとハーリーが好きだ。予言が成就されていく様がすごい。
「だからよー」で済まされている島の空気が段々不穏な色を帯びてきて尋常ではないことが次々に起きて加速していくところがよかった。この島の終焉、津波までのカウントダウンをはじめるシーンとか知らない登場人物、「逃げてーちょーにげてー」としか言えない読者(私)。まじやばい。

どっぷり物語につかれる感じがとてもよかった。
時期が時期だけにひやっとするのは天災系のあれらだ。大雨・洪水・干ばつ・群発地震・津波。
寒かったかと思えば急に気温が上がり5月だというのに台風直撃コースとかいみがわからない。

美ら島物語 「風車祭 カジマヤー」池上永一著をたずねる。