花宵道中

江戸吉原を舞台にした連作短編。
性描写がっつり濃厚なんですが最初に出てくる感想は「雰囲気が」えろいなんです。
どう少なく見ても全体的に半分以上、最初の短編で「女による女のためのR-18文学賞」大賞・読者賞受賞作の「花宵道中」にいたっては8割以上がそういう描写なんですけど「直球の描写なんてしてませんよ」ていう気になるところが凄いと思う。1

この本の感想はえろいの抜きでは多分何も書けないので、続きを読むモードに放り込みます。
そういう本が苦手な人・嫌いな人はここで回れ右でお願いします。

八津が好きだ! 切ない恋が好きだ! EROI! 決して救われないけど希望はあると思った。
好きなのは十六夜時雨と薄葉蜉蝣です。全体的に漂う甘い雰囲気と遊女同士の絆がよいですね。
読みながら何回かtwitterに「花宵道中がえろい」って流した。くらくらするえろさです。濃いです。
間夫とか張見世とか知らない単語がちょこちょことあったのでぐぐりました。大体「かたちは知ってるけど名前は知らない」パターンでした。銀魂とかでそれ見たことあるよ! ていうオチだった。

既読組のななきさんが「帯には選評が載ってて『子どもには読ませたくない 読ませてなるものか』ってあった」って言ってて、確かに子どもには読ませたくないよねえと思うのと同時にこれは10代のときに出会わなくてよかったって思った。2私が10代のときは性的なものにすごく潔癖なところがあって、時代小説は今よりずっと苦手な部類だった。そのときに読んでたら確実に地雷認定していると思う。そのぐらいはえろいもの。今ぐらいの年で出会えてよかった。

茜は今頃、寝具を涙に濡らしながら、朝霧の幻を追う男の腕に抱かれているのだろうか。晦日に聞いた茜の痛々しい泣き声が、今でも耳の奥に残っている。好いた男に帯を解かれたかったろう。八津も初見世を前に、好いた男なんていないにも拘らず、そう思ったことを憶えている。好いた男に髪を乱されたかったろう。好いた男にくちづけられたかったろう。可哀相だけれど、売られた娘にそれを選ぶ権利はない。

(P152)

乱暴に胸を掴まれる。この痛みではきっと明日は指の痕が残るだろう。ねえ、痕を刻まないで。いずれ消えてしまう痕なら、刻まないで。きっと他の女にもおんなじ痕を残しているんでしょう。

(P209)

そもそも宮木あや子を読もうと思ったのは活字倶楽部でのインタビューで凄く気になったのだ。

——女性向けの「R-18」と男性向けとの違いはどこにあると思いますか。
宮木 なんだろう……男汁臭くないことじゃないですか?
——お、男汁!?
宮木 男の人の書くエロって、大概下品で即物的なんですよね。それを私はゲラゲラ笑いながら読むんですけど、でも読んだ後にすごく物悲しい気分になります。だから女の人が読んだ後物悲しい気分にならないものが、女の人の求めているエロなんじゃないかなあと思っていて。あとはやっぱり、「求められたい」欲みたいなものがあるんじゃないかと。私も、求めて求めてフられる話よりも、求められつつも私はこっちの道を選ぶわみたいな、『花宵道中』の八津さん的な展開にグッときたりします(笑)。

(活字倶楽部 2009夏号 宮木あや子インタビューより)

この人が書くものはどんなのなんだろう、と思って読んだ。

わたしはほのめかしと雰囲気重視で、三点リーダー多用系の台詞を入れるぐらいであれば描写がっつりのほうがよくて、おまけとかボーナストラック程度についてくるぐらいなら朝チュンでいいよって思うほうだからティアラはいまいち選びかねているのか、って思った。

  1. 実際は30ページ少々の短編で最後までが2回、これはもしかして……?というのが複数 []
  2. といっても10代の時にはまだこの話は存在すらしませんので例えとして []