星を掬う Kindle版
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DV夫が離婚後も金の無心に来る。食費だろうが何だろうが、千鶴を殴ってでもありったけの金を持ち逃げする。夜逃げ同然で引っ越しても半月もしない間に弥一は千鶴の前に現れた。
夜勤のパン工場で働き、食べ放題のパンで食をつなぎ、それでも生活していくにはお金が必要だから千鶴はラジオの企画に夏休みの思い出を投稿し、それが採用された。母との最後の思い出は5万円と引き換えにコンテンツになった。
でもそれが千鶴の転機となる。小1の時にいなくなった母聖子を「ママ」と慕う恵真に連れられ「さざめきハイツ」で暮らすことになった。聖子は若年性認知症を患っており、さざめきハイツにはほかにも娘に捨てられた彩子が聖子の周りの家事をしていた。
さざめきハイツにはいろんな「母娘風の組み合わせ」がありながらも、「普通の母娘」の関係が築けなかった人間しか住んでいない。
ちょっとあまりにすごい本で吸引力が強すぎて明日仕事だけど読み終わるまで首根っこをつかまれてるみたいな本だった。強い。
どうしようもないほど嬉しかった。いまやっとはじまった私の新しい人生を、すべてが祝ってくれている。私はあの日、たくさんの人に祝福されて生まれた。千鶴がそうしてくれたのだ。
あれ以上の、幸福はない。あれからどんなことがあっても、どれだけ辛くても、思い出すだけで何度だって救われる思い出になった。いままでも、そしてこれからも。私の生きてきた愛しい思い出たちの中で、いっとう輝くうつくしい星。(P287)
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