シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗 Kindle版
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百合ホームズである。
2013年秋のロンドンが舞台だ。怪我で除隊したジョー・ワトソンはベイカー街で頭脳と電脳を駆使して危機と戦う人工心臓の安楽椅子探偵シャーリー・ホームズと同居している。ジョーはシャーリーの助手となって現場に赴いては事件の顛末をWEB誌に「自身を男体化」して掲載している。
そんなホームズ・パスティーシュだ。今回はバスカヴィル家の狗(シリーズ2冊目)
冒頭からかっ飛んでいた。ジョーの叔母から贈られてきたお土産の推理、叔母の現在地と状態の推理からの、叔母から送られてきた答え合わせのような手紙にまず笑った。ものすごく百合なんですよ百合。良い百合です。バスカヴィル家の犬はわたしは人生のかなり初めで接したミステリなので思い出深い。
バーツのモルグで彼女に出会ったときから、私はすこしずつ失ったものを取り戻しているような気がしていた。喪失感の補完ではない、寂しさを埋めているのでもない、一番近い言葉は「輸血」。必要なものを失いすぎて死にかけていた私に、彼女という存在が自分に少しずつ与えてくれたことがなによりうれしかった。
私はシャーリーと同じモノになりたかったのかもしれない。同じモノを食べ、同じ空気を吸い、同じ空間を過ごして、彼女と似た私になろうとした。私が生きるためにずっとそうしてきたように、環境に擬態し人を模する。そうしてできるだけ楽に、同化するのだ。同じだと認識してもらえれば、私は攻撃されずしばらくそこで生きていられる。(P128)
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