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きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

普段はBL畑の人の多分初の? 一般向け作品。
2025年夏、17歳の明日子・日々人のもとに突如現れたいとこの今日子。彼女は火事に巻き込まれたことで全身に火傷を負い生死の境をさまよった。
その、さまよった期間は実に28年、冷凍睡眠で眠っていた彼女は夜眠って朝目覚めたままの17歳で止まっている。1年半リハビリをしてついに社会に出ることになった。
影の濃い真夏の、3人の17歳の話。

今日子はミスチルのシーソーゲームが新曲としてラジオに流れていた時に17歳に巻き込まれ、そのまま年を重ねれば47歳だった。リテイク・シックスティーンは2009年から1997年にやってきた女子高生だったけど、今日子は未来の世界に来てしまった。未来と言っても別に車がチューブの中を走るわけでもなく、温暖化は相変わらず叫ばれていて、東京タワーは変わらずそこにあって、でも自分が愛したCDも、MDも、ゲームも、漫画も、自分が知っているものと違うもの、よく似ているはずなのに別のものであふれていた。
夏が舞台の話は情緒があっていい。

「また夏休みがいいな」
「うん、もっと暑くなってても、ジャングルになってても、砂漠になってても、そんなこと関係なく一緒に遊ぼう」
 もっと大きな塔が東京に建っていても。明かりを灯し始めた東京タワーがなくなっていても」
「うん、絶対」
と今日子が答えた。

(P236)

ブックマートの金狼

カッコいい男を描こうというコンセプトの新レーベル。表紙はこれ4分の3帯で海外文学系の装丁みたいでかっこいい。
まあ神様のメモ帳方向の杉井光なんですけど、ヘタレではない。昼行燈ぽい感じはあるんですけどそれよりかは童顔の人が伊達眼鏡をかける感じの装いが近い。

かつては裏の世界に足を突っ込んで気の合う仲間とチームを組んで喧嘩に明け暮れたり金を稼いだりして、そっちの世界では名の知れた掃除屋で感覚は鈍ってないし心身のどこかが欠損しているわけでもない。
でも今は書店の店長をしていて、童顔がたたってバイトにもなめられていて、という感じだけどとびかかってきた男の腕は慣れた感じで関節を外す。
昔馴染みのやくざに頼まれてアイドルのストーカー対策に乗り出すことになる。
頭が悪いけどやたらとノリのいいチンピラは健在。ナオト(店長)よりレイジ(ナオトの昔の仲間)がいい。
神メモの1巻を読んだときの感じとか近いなあって思った。

皮肉を呑みこんで、俺も段ボール箱のひとつに取り掛かる。やけに重たい。テープをはがして開いてみると、色とりどりの紙が折りたたまれてぎっしり詰め込まれていた。折り込みチラシでも保管しているのかと思って何枚か抜き取って開いてみると、それは便箋だった。どれも、きらきらした丸文字できらきらした文章がつづられている。
『ことみん愛してる』
『おかげで受験頑張る勇気が出ました』
『新曲最高! ライブぜったい行きます』
『全財産かけて一生推す』
『ことみんにあえてよかった、生まれてきてくれてありがとう』
 一読しただけで息が詰まり、俺は便箋を箱に突っ込んだ。

(P111〜112)

ここでうっかりなっちゃんとか玲ちゃんに送ったファンレターは今どうなってるんだろうなあってふと思いました。現実味のある話をすると「一定期間保管後に個人情報後保護のためシュレッダー」処理になってても不思議じゃないと思うんだけど、どこかに残っていればいいなあって思うし、あわよくば次元の裂け目に飛び込んでいるといいなあと思う。陛下宛はどうかなあ。一番古いのは何人かで組んでアルバム形式で送ったから残ってたら段ボールの中かなあ。100本の薔薇は重かった。

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

貧血で倒れた女子大生の碧は目を覚ますと小料理屋の一角に寝かされていた。この小料理屋を営む大樹と、バイトをすることになった碧とその周辺の人々の話。

小料理屋と聞いてラ・パマルとか香菜里屋をちょっと期待して読んでみたら、小料理屋ゆきうさぎに集まってくる人々の悩みの提示とその解決という感じで、ほっこりライト文芸あるあるの1冊。序章は大樹と意味深な野良猫ではじまったから大樹と猫と碧の話なのかと思えばずっと碧のターンだった。

還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon (コバルト文庫)

最近はいろんな方面で「2016年だよ!?」というようなことがあるんですが、野梨原花南の新刊がコバルトで出るというのもなかなかすごい。

没落貴族のダリアードは爵位と引き換えに元敵国の警部と結婚することになった。怪盗が犯行予告をしている宝石の警備のためだ。恋に落ちたらもうお祭り騒ぎだし情報を探すためにはいろんなところに行ってしまうぜという話。

わたしこれを読んで古い野梨原花南読者にこれどう? これどう? って言って回りました。というのもすごい雰囲気が懐かしいんですよ。これは確かにコバルトの野梨原花南だ! って思った。

「世の人があきれかえって、笑って、そしてあなたが泥まみれで死んだとしても、だとしても人がしたいように生きるというのは、人生を思うさま謳歌するというのは、とても素晴らしいことです。大切なのは、したいと思ってそれをする今であって、何も決まっていない未来ではないのです。けれど忘れないでダリアード様」
イズーデはダリアードの手を。両手で包んで強く握った。
「この手は、愛を掴んで抱き締める手です。糞で汚してはなりません」

(P57~58)

この辺がもう北でオニキスとクラスターが殴り合いしていたこととか、ポムグラとか比較的古い野梨原作品がぶわーと流れ出てきて猛烈に涙腺パンチされていた。最近火村さんのドラマやっているせいか10代の思春期女子が非常に活発です。yes10代のわたしにとって火村さんが結婚したい相手で野梨原花南作品は神だった。
恋って素敵だ!!! と10代のわたしがきらきらした目で叫ぶよ。ジオとダイヤの物語を読んだ日にはいつだってそうだったよ。
たくさんのいろいろをありがとうございます。

晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と (講談社タイガ)

タイガ創刊したはいいもののひまりさんはどこへいっても在庫がなくてこの前ようやく見つけた。
大学生の春近は幼稚園の頃からさかのぼってもずっと決まって好きになる相手は人妻だった。眠れない冬の夜、公園に散歩に出かけて人妻のひまりさんとサモエド犬の有海さんと出会う。
「今日は○○の日です」と恋と日常の謎ミステリ。

3話がすごく良くて、好きで好きでたまらなくなると、あとは飽和してしぼんでいくだけでしょうと語る大学の友達の彼女の話がとても刺さる。

あんなに大好きで、憧れていて、胸をときめかせていたのに、いつからその想いは薄れて消えていったのだろう。
好きでたまらないものへ一途に向けられていた情熱がさめてしまうことは、あたりまえにあることなのだ。
決して、薄情とか移り気というわけではなく、生活してゆく中で、ごく自然に、あたりまえに、それは残酷な事実で。

(P189)

薄れたり壊れたりするかもしれないけど百年分の幸せのために唇を合わせるんだっていうあれな。

Burn.‐バーン‐ (単行本)

かつて天才子役で今は舞台作家として成功を収めているレイジは子役時代の記憶がない。
当時の映像を見ても到底自分とは思えず、当時の共演者と話をしても歴史の年表を丸暗記をしているようで現実味がない。
そうして出産を間近に控えた妻と交通事故に遭い、入院した先の病院でローズと再会する。
ローズはその失われた20年前の記憶の中で、中心にいた人物の片割れだった。もうひとりは「徳さん」というホームレスで、自分が覚えていないだけで、演出家を目指すうえで影響を与えたかもしれないとローズは語った。

レイジは20年前の記憶を整理するべく小説を書くようにして、(あとはもしかしたら今息詰まっている舞台の脚本のヒントが得られるかもしれないと思って)キーボードをたたいていく。

今のレイジと小学生のレイジが入れ替わりつつ話が進んでいく、のだけど前二作と比べて読みやすさが段違いだった。
失われた記憶を呼び覚ます作業、もうすぐ父になる自分とかつて子供だった自分とかおもしれーなーとか読んでて、いわゆる便所飯のシーンがあって、「人見知り加藤シゲアキエピソード」を目にする機会がわりとあるので1誰かと一緒じゃなくてもいいけどなんかもうちょっとまともなところでご飯食べてたよな実体験じゃないよな、というところが気になった(カツアゲは実体験だって見たしな)

同じ箱にはプールの底に眠る (講談社ノベルス)とか私を知らないで (集英社文庫)とか「あまつき」が入る。
あまつきは徳さんとレイジの関係がトキと蘇芳だからー。
あと「よだかの星」ですね。宮沢賢治のほうじゃなくてSoundHorizonのほう。
よだかの星/Sound Horizonの歌詞

生きているなら燃えてやれ

とかそのまま徳さんでしょう徳さんでしょう。
気になった方はこちらのリンクを踏んでね!
よだかの星 [Short ver.] / Sound Horizon - YouTube

読んでみたらすごい面白かったっていうのが素直な感想で、読後感さわやか、閃光スクランブルは群像劇だった分余計に視点が固定されてるこの感じが読みやすい。あと単純に「なくした記憶」と「うそつきの大人が隠している秘密」とかああいう題材がわたしは好きだという話。
渋谷の物語はこれまでで次は短編集出したいって本の旅人でいってたっけか。
次が楽しみです。

  1. タイムラインに加藤シゲ担がいる []

女装王子の深遠にして優雅なたくらみ (富士見L文庫)

富士見ファンタジア大賞の銀賞作品でL文庫。
シャリア王国のルイーゼは王女として育てられた。というのも先王2人の息子が王位をめぐって争いに巻き込まれることを憂えたからだ。
自分が貴族の派閥争いの結果兄と争って王位についた第二王子だったからなおのこと心配し、第1王子オーギュストが王位を継ぐまでルイーゼの正体は秘密にしようと、事実を知っているものは本人、王、第二王妃、ルイーゼの世話役を任されたヴェルスタール家のみである。
ルイーゼ(ちなみにこの名前も男女どちらでもとれるように付けた名前だ)は予想以上に王女として演じたしオーギュストも王にふさわしい器に育った。王位を譲ればルイーゼのことも大々的に知らせるつもりだったが、王は急病であっという間にこの世を去った。
 「王妹ルイーゼは男である」と世に知らせることができるのは最早ルイーゼのみなのである。現状、唯一真実を知る世話役のクラウスは今すぐにでも言ってほしいがルイーゼはのらりくらりとかわしている。

そうして派手に知らせる場を見つけた。 王にして兄1が持ってきた「ルイーゼの花婿選び」である。花婿選びは同時に事件の始まりでもあったのだという。

ルイーゼは表向きは貴族の視線を一身に集める美貌の完璧な姫君なんですが、まあ本性は雑な、全裸で舞い踊る系の、ついでにいうなら3つ目の顔としてごろつきの親分もやっているという、まあ愛しい系のあほの子。このあほのこがめろめろになっていく話です。

まあ要するに、壮大な一目惚れの話です。

花婿選びに参戦した男は四十二人。自分の秘密をばらす舞台を作り上げるために、最高の人材を見つけたいとして「なんかめんどくさい事情を抱えてそうなやつとか、俺ぐらい美形のやつはいないのか」とサロンをみていたら本当にそんなヤツがいた。それがオレスである。

そして先ほど抱いた感情を打ち消すかのように、自らの頭を幾度も壁に打ち付けた。
「違う!! 違うぞ、今のは違うんだからなっ!!」
しかし思いとは裏腹に、波立った精神はなかなか落ち着くことがない。
「なっ何にもドキドキしてとかないからな!! ふざけるなよ!! 馬鹿っ、変態!! ……って、痛あああっ!!」

(P193~194)
  1. ちなみにお兄ちゃん妹がとても大事にしている。自分もいずれ子供ができたらお前に構う暇がなくなってしまうかもしれないからお前を大事にしてくれる相手を見定めたいというあれである。 []

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

なかなか萌えの塊だった。 サイコパススピンオフの二冊目。
本の大半を占めているのが六合塚弥生と唐之杜志恩、それから弥生のモトカノの話で、これは霜月監視官着任後の話。
もうひとつは宜野座メインの話で、若い。佐々山も生きてる。つまり咬噛さんが監視官でぎのさんも監視官である。

サイコパススピンオフの1冊目はグソンの話がメインで、とことん救いがなくてかなりえげつない話だったけど、この巻はその辺が相当マイルドである。サイコパスなので人は結構死んでるけどグロさはない。
公安局に助けを求めた記憶障害のある少女、未来の証言で弥生は反シビュラレジスタンスの巣食うライブハウスへ潜入捜査をしていた。
この反シビュラ組織にはかなりの少年少女が拉致されており、この組織が狙っているのは色相が悪化しつつある、10代半ばの妊娠の見込みのある少女である。十分な医療施設で手術して赤子をとりあげてから母体は殺しているようだ、という話。
結構サイコパス二期と似た手触りの話で、もうひとつのカムイみたいな感じ。弥生&志恩の愛の話もがっつりとあった。

で、ぎのさんがメインの話である。
これがくっそもえのかたまりでやばい! やばい! っていいながら読んでいた。
動物の再導入という、動物に野生を思い出させようとしたら害獣化して殺処分対象になった本末転倒な計画のせいで若き監視官宜野座が走り回る話である。
何がすごいかとうとおはようからおやすみまでならぬ、幼い頃のギノさん、プライベートのギノさん、実は犬が大好きギノさん、こーがみさんとは良好な仲だったギノさん、もし自分も家庭を持つようなことがあれば思うギノさん、ピルイーターギノさんなどなどさまざまな宜野座が見られるので宜野座ファンはぜひとも読んでいただきたい一冊!

《だからな、ギノ。俺はお前が誰よりも監視官という職に対して真摯であることは理解しているつもりだ》
 そうだ、今だって。
「……いきなり、何だ、急に……」
《征陸執行官の問題については理解している》
「……咬噛」
 分かっている。相手は浅慮で物を言っているのではない。だが、それでもーー。
《しかし、それでもお前は優れた猟犬を正しく扱うべきだ》咬噛のあまりに率直でまっすぐな言葉。《親友だと思うからこそ言わせてほしい。今の俺たちは人数こそ少ないが、かなりベストなチームだ。お前が指揮官となり俺たちを動かすことができるなら、どんな事件であろうと解決できると思っている。負けなしのはずだ。それだけの戦力が揃っている》
 まったく本当にこいつはもう、まるで変わっていない。

(P261〜P262)

この辺のシーン本当に全部引用したいぐらいの鳩死亡ポイントで。
終始こんな感じなので(ああ、サイコパスだなっていうシーンはあるんですが)「犬好きな宜野座」ですでにピンと来た方は是非。

王女コクランと願いの悪魔 (富士見L文庫)

王女コクランの元に現れた伝説のランプの悪魔。しかし願いなど何もないと悪魔を追い返そうとするが悪魔はなんとか願いを聞き出そうとする。ふたりの奇妙な同居生活が始まる。「物語の方」と呼ばれるコクランと「願いはない」ということばの道筋をたどる話。
後宮といっても寵愛を奪い合う場所ではなくて貴族の子女の教育の場みたいな感じで、割とコミカルだったりするんですけど賑やかしの悪魔、冷静な王女のやりとりは面白いんですけど全体的な空気はシリアスで。
どう言うところに着地するんだろうかと思っていたらお、そこか! ってなった。ダンスとかチェスとか悪魔が王女を心を開いていく話かと思ってたんですが、すべてを与えられている王女が唯一欲していたものは誰も与えられることはなかったという。
よい物語だったー。

デュラララ!!SH×2 (電撃文庫)

デュラ世代交代編の2巻。
「首なしライダーが人をさらう」都市伝説と蛇足の話。 セルティよかったね!

あとどっかで言ってるかもしれないけどリーベイってたぶん越佐のリーレイの親戚かなんかだよな。雰囲気似てる感じ。
あと渡草の名前が三郎って表記されて誰だろうってすげえ考えた。

リラ・ティルトゥース・在野に折原臨也を感じ取ったのはたぶん作中の折原狂信者だけじゃなくてリアル折原ファン(考察とかあの辺が好きそうな感じ)も転がったんだろうなあと思った。そんなアナグラム。
1巻とあわせて前後編っていう感じだけど分割三クールなアニメデュラがあるから当分はデュラの展開が多いのかなと思いつつ、5656はまだ待ちたい。

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