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私の家では何も起こらない (幽BOOKS)

書影では黒っぽくなっているところが金色できらきらします。
短編です。ぞわっとする感じのホラーです。びびりがうっかり夜に読むとあばばばばばばばとなります1
どれも怖いんですが大工の話「俺と彼らと彼女たち」でちょっと救われた気がした。こわい。
でも好きなのはびびった2話「私は風の音に耳を澄ます」「俺と彼らと彼女たち」「奴らは夜に這ってくる」
「夜を這うもの」でニャル子をおもいだす。

  1. つまり私のことである。1話はともかく2話はやべえええええとなった。 []

忙しい日でも、おなかは空く。

料理のレシピとそれにまつわるエッセイかと思えば台所回りのあれこれや茶器とかについてもある。
「ささみのだしの卵のスープ」「きゅうりのライタ」はなんだかとても気になるので作ってみようと思います。

お嬢さまとお呼び!

ちょっと前にルルル文庫の新人作品に悪役令嬢ヴィクトリアという作品がありました。
買おうかなーとぺらっとしてみたところ最初の5ページ読んでみたらびっくりするほどお嬢さまシリーズ。
そらもう記憶の水底から高笑いしながら舞い上がってくる麗花お嬢さま。懐かしくなって10年ぶりぐらいに再読しました。今はなき学研レモン文庫で出た森奈津子デビュー作品でその新装版です。ありがとうエンターブレイン。

1冊で3巻分が収録されています。どんな感じの話かというと私立花園学園中等部が舞台で。

あたくしの名前は、綾小路麗花。
人はあたくしを「お嬢さま」と呼ぶ。
なぜなら、あたくしのトレードマークはたてロールの髪型にピンクのリボン。
そして身にまとうは、フリルぴらぴら、レースひらひらのお嬢様ワンピース。

(お嬢さま帝国 P285)

こういう女の子が主人公です。「ツンデレ」ということばがない時代のツンデレです。
子どもの時に読んだバレエ漫画のいじわるお嬢さまに感銘を受けて悪役お嬢さまを目指した中学3年生です。笑う時は当然「ホーホホホホホ」とかって笑います。

わたし麗花お嬢さまが可愛いと思ったことが一番「俺も年取るわけだぜ……」というぐらいの衝撃。
「眼鏡を外したら美人」のメイド(というか侍女)系女子。学園のアイドル的イケメン。変人系1のイケメン。
「眼鏡を外したら可愛い系。女装超似合う。ラノベキャラでいうと生徒会シリーズの中目黒」の男子。
91年作品である。時代先取りしすぎた。

お杉さま最強です。この本ではまだ出てないけど「3歩下がって師の尻なでる」は私の中で燦然と輝く名言。「ぼくのことはイクラちゃんとお呼びください!」も死ぬかと思ったけど

「だ、だれだっ! さっさと出てこいっ!」
「愛らしく戦いたい! 『サザエさん』がつづくかぎり! 千年幼児イクラちゃんだ!」

(P372)

殺されるかと思った。どんだけイクラちゃん好きやねん。

時代を感じるぜええと思ったのは「トレンディ」とか「モーションをかける」「スケ番」「ぶりっ子」という単語ですね。公衆電話もポケベルもまだ生きています。

書き下ろしも一編収録されています。めっちゃおもろかった。
手持ちの新装版は2冊ですが友達に文庫版も借りているのでごりごり読みます。

やっぱり、たまには大切に思っていることを態度に示してあげようかしら。
だって……本当に大切にしてあげたいんですもの。
「大切にしなくちゃいけない」とか「大切にしたほうがいい」とかいう理由じゃなくて、ただ、あたくし、拓人のこと「大切にしてあげたい」って思っているだけ。
それが理由よ。
ふんっ。
誰にも文句はいわせなくってよ。

(P258)
  1. ハチクロの森田さん風 []

乙女の日本史

世の中は「歴女」「歴女ブーム」とかなんとかいうけれど、そこには「日本史が好きなのはおっさん」という前提があるからでこの本では通説とされがちなおじさん史観にツッコミを入れつつ、乙女寄り目線で古代から第2次世界大戦ぐらいまでの歴史を語ってみるよというこの本。

ノリとしては非常に軽いです。とても面白くて笑えます。
ウズメは「脱いで笑いをとる女芸人」になっているし「日本は神話の時代から肉食女子×草食女子」とかそういう感じに始まる。そして

古代史の現場はただ今激変中。たとえば今は『仁徳天皇陵』は現在「大仙古墳」と書き、横に「伝・仁徳天皇陵」と書くのが主流

とか

現在、多くの中学歴史の教科書で、鎌倉幕府ができたのは1192年(いいくに)ではなく1185年(いいはこ)になっているという事実をご存知でしょうか。

まじで! と思った。今度教科書ガイド的なあれ確認してこよう……と思った。

吾妻鏡が凄く気になる。
公式記録なのに頼朝がいつラブレター送ったとか、政子が嫉妬しただとか、静御前が生まれた子どもと引き裂かれるのを嫌がって4・5時間粘ったとか逐一載ってるとかなにそれすごい。

あと聖武天皇が愛用したベッド1が正倉院に保存されててベッドカバーの大きさがシングルベッド2つくっつけたダブルサイズとか! 奈良時代凄い。

万葉時代の「ますらを」は友情の交歓も、すこぶる濃厚だったようですね。藤原久須磨と大伴家持との有名な相聞歌を紹介してみましょう。
「夢のごと 思ほゆるかも はしきやし 君が使の 数多く2 通えば」 (巻第4)
「キミがボクに手紙を届けてくれる回数がこんなに多いなんて……まるで夢みたいだ」と喜んでおります。そんな家持に、久須磨は
「奥山の 岩陰に生ふる 菅の根の ねもころ我も 相思はざれや」 (巻第4)
菅の根というのは、今でいうスゲという植物で、根が細やかに長く伸びます。
「管の根くらい細やかに、濃密に、しかもねもころ(=ねんごろ)にボクは家持のことを思ってるんですよ」とレスしたんですね。……これって友情じゃなくて愛じゃないか……と感じる人も多いでしょう。ですが、『万葉集』に(ほぼ)限って、こんな歌が男同士で多く詠まれてるという事実と、当時の貴族の情熱的な気風を考えると、私はこれが「ますらを」風の友情だったと考えます。

(P28)

奈良時代パねえっす。

  1. 奈良時代なのにベッド! []
  2. まねく []

吉祥寺の朝日奈くん

短編集。
交換日記の話が好きだ。「交換日記」ていう響きが懐かしい。「文通」に似た響きだ。
交換日記とうるさいおなかが好きだ。しかし

たとえば、天使がステッキをふりまわしているかのような「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」という音。

(P190)

それ本当にステッキかい。撲殺されてないかい。

交換日記がしたいと思いながら読んだ。

難民探偵

いい意味で西尾維新風ではなかったなあ。驚きだ。
西尾維新作品の登場人物なのに証子が普通の子だった。
「おいやめろそこに鏡置くな」「私のHPはもうわずかよ!」と思えるぐらいに同じ穴の狢感があった。

就職活動に失敗し教授に留年を薦められるも就職先未定のまま卒業、今日も書類選考や面接に落ちる。
そんな生活がもう数年続いている。
証子は本当ならもっと簡単に就職できたはずなのだ。大学時代の就活では内定も何社か出た、卒業後の先の見えない就職活動をはじめたころにはバイト先で「うちの正社員にならないか」とも言われたこともあった。しかしどこも蹴った。どこでもいいと思いつつもハードルをあげている。「もっと自分向きの仕事があるんじゃないか」と高望みしている。往生際の悪さがどんどん首を絞めている。

最近もなんかそういうの読んだなと思ったらあれか。増田か。→わたし、こんなところで埋もれたくない。
あと豊島ミホのエッセイやさぐれるには、まだ早い! に「向いてる仕事なんてないんだよ」とかそんな感じのがあったような。

そうして証子が辿り着いたのは叔父で作家をしている窓居京樹のところだ。
この叔父、お金の使い方が非常に雑であった。雑と言ってもけっして浪費家ではない。切り詰めどころは締め上げるのだが初対面時には「半年程度面倒を見よう。就職活動でもなんでもしてください。合間に家の片付けとか雑用をしてくれたら給料も出すよ、1日1万の月30万ぐらい? とりあえず300万渡すから引越しの準備とかしといて」というのである。

証子はこの人の元にいたら駄目になる、と今日も就職活動に精を出す。
そしてひょんなことから叔父の友人・根深陽義と出会い殺人事件に首を突っ込むこととなる。

ところで

「根深さん。働くってなんなんでしょう」
「生きる手段だよ。自己実現の手段でもあるし、世界をよくするための手段かもしれない。まあ色々あるけれど、詰まるところは——手段だ」

(P220)

犀川助教授と萌絵を思い出した。

「先生、現実ってなんでしょう?」
萌絵は小さな顔を少し傾げて言った。
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」
犀川はすぐ答えた。
「普段はそんなものは存在しない」

(すべてがFになる 森博嗣)

もいちどあなたにあいたいな

その日は澪湖(みおこ)が「やまとばちゃん」と呼び慕う叔母、和(やまと)の娘が亡くなった日だった。
澪湖は父・大介とともに徒歩1分のところに住む恭一・和夫妻の家へ行った。

やまとばちゃんは強い。いや強い人だと皆に思われてる。子どもの時から様々な不幸に見舞われてきた。
しかしまるで泣かないし立ち直るまでの期間がとても短かった。それが和最強伝説の裏づけとなっていったのだが、今度は不妊治療を続けてきた上でようやく生まれた愛娘の死だ。
父子は今度こそ和を支えねばと思ったのだ。

しかし澪湖は違和感に襲われる。このやまとばちゃんは私が知ってるやまとばちゃんなのか?
澪湖・大介(父)・陽湖(母)と視点が移り変わりつつ話は進んでいく。

途中なんとも言えない静かな恐ろしさがあった。和どころかお父さんさえも得体の知れない不気味さがあったのだ。お母さんもこわいこわい。「オタクの基礎教養」という木塚くんが癒しスポットだった。

作中では「盗まれた町だね」っていってたけどわたしは盗まれた町は未読なので月の裏側とタイムリープと薄めたおしまいの日がミックスされた。よいSFでホラーだった。

しかしなんだ、やまとばちゃんはいいが和とでるとなごみとしか読めない1し、澪湖はれいことしか読めない2

  1. 友人に和と書いてなごみと読む子がいるのだ []
  2. どうみても澪音の世界である。 []

12歳からの読書案内とれたて!ベストセレクション 12歳からの読書案内

この本すごくね?
タイトルは12歳?ですが中高生が読むと楽しいかもしれないよブックガイドです。
それより上の年代でも十分楽しめるのではないでしょうか(わたしはがっつり読みたい本が増えました)
同じく中高生向けのブックガイドといえばcolorful - 勝てる読書/豊崎由美とかもあるんですけど、こちらは翻訳メインで「え、この本を10代で?」っていう本が結構多いです。

わたし中学生ぐらいでこんな本あったら丸呑みする勢いで読んでいったと思う。今の子いいなあ!
ていうかこのラノ読んでるあたりの「ラノベ好きなんだけどラノベ以外もちょっと読みたくて、でも何が面白いの」っていう10代20代は読めばいいんじゃねと思った。

1冊目が発行されたのが2005年、2冊目が発行されたのが2009年。1冊目はこんな感じではじまる。

YA物は売れなかったのだ。それがこの10年ほどでがらっと変わった。(略)とくに国内では、江國香織、佐藤多佳子、あさのあつこ、梨木香歩、上橋菜穂子、荻原規子、伊藤たかみ、乙一、嶽本野ばら、などなど、あげればきりがないしこれにライトノベルを加えると、その数はさらに増える。

そしてセンスのよい本読みに自分の好きな本を紹介してもらった、というのがこの本である。
さらに2冊目は2000年以降に発行された本に限定されている。太宰治とか文豪作品とかはまったく載っていない。古典は古典で素晴らしいものだけど、読めばいいなと思ってくれるかもしれないけどこの本はあえて「新しいもの」「若々しくて新鮮なもの」を選んでもらったということだ。

絵本・YA作品・ノンフィクション・ライトノベル・短歌・10代にもオススメの一般文芸色々掲載されている。

いやもう1冊目「調理場という戦場」からはじまるし2冊目「夜市」とかもあってさあ!
ハッピーアイスクリームと笹公人が一緒にいる!とかさあ! 
一言で言うと「あの本とこの本が一緒にブックガイドに載ってるってすごくね?」っていう話だと思う。

あとラノベのセレクトもすごい。
禁書とかとらドラとかBBBとかシャナとか戯言・化物語とかラノベ的にメジャー作品はあまりない。
何が載っているかというと1冊目は「キノ」「君にしか聞こえない」「吉永さんちのガーゴイル」「霧の日にはラノンが見える」「銃姫」「Missing」「りすか」「イリヤの空」「ムシウタ」
2冊目は「人類は衰退しました」「魔女の結婚」「バカテス」「狂乱家族日記」「いちごタルト事件」「砂糖菓子」「ミミズク」「オペラ・エテルニタ」「七姫物語」「狼と香辛料」「円環少女」「ぼくらは虚空に夜を視る」
あと新書レーベルから「煌夜祭」「ドラゴンキラーあります」 

このカオスっぷりすげえ!

ていうか2冊目は随分とラノベレーベルが幅を利かせていた気がするな。ちなみにこのラノベリスト選んだの誰や! すごいな! と思って巻末の書評者プロフィールを見たらLNF実行委員の人が2人いました。
2冊目が既読率が高いこともあり読みたい本チェックが多かったのは1冊目。
このリストやべえ! とより思ったのは2冊目。

この本はふらふらと児童室@図書館に入った時に目にしたものですがすごくときめいた。
児童室は宝庫だな! あっちにも足を運ばねばなるまい!

ていうかわたしこういう本作りたい。作りたいといっても同人ではなくもちろん商業でもなく自分で製本1。ブログからいくつか抜き出してだな! タイトルはクマーだな!

ちなみに既読率は1冊目17/100 2冊目30/100 でした。

  1. 最近また高まっている製本熱 []

神様のカルテ

信州にある一般診療から救急医療まで幅広く行う基幹病院「本庄病院」の内科医として勤務する(あと夏目漱石に傾倒する)栗原一止の忙しき日々の話。短編集で200ページ程度の薄めの本だけど3編収録されている。

医者として患者を看取ったり翻弄されたり徹夜続きの激務に追われる一方で、変人や半ば世捨て人のような人が住む築20年の幽霊屋敷のようなアパート御嶽荘で過ごす妻1や住人との日々。
個人的には医療方面より御嶽荘の生活をもっと読みたいなあと思いました。というのもわたしはこういうアパート同居モノがとても好きだからです。

そんなわけで一番好きなのは門出の桜。
それぞれ「ドクトル」「男爵殿」「学士殿」と呼び合っているのが好きだ。

ちなみに脳外科の教科書によると脳には痛覚神経はないらしい。だから仮に麻酔なしで脳みそをぐちゃぐちゃにスプーンでかきまわしても、人は痛みを感じない。もちろん実際試した人はいないし、試してから「痛いですか?」と聞いて返事ができたら、それは人間ではない。
いずれにしてもこの頭のど真ん中ががんがんする頭痛を感じるたびに、私には、凡人にはない特殊な痛覚神経が脳の中を走っているのだということを革新するのだ。

(P14)

思わずされ竜のアナピヤ周辺とひぐらしの皆殺し編か祭囃子編かのコミカライズを思い出す。

ところでわたしカスヤナガトと中村佑介の区別がつきません。
こっちは「あ、植物図鑑と似てる」と思ったので間違ってはないのですが。

御嶽荘は不思議な空間である。
まるで世の中に適合しきれなくなった人々が、さまよい歩いた先に見つけた駆け込み寺のような様相が確かにある。だが、寺と大きく違うことは、訪れた人々はけして世を儚んで出家などせぬということだ。彼らは再び世の中という大海原に向けて船を出す。難破を恐れて孤島に閉じこもる人ではない。生きにくい世の中に自分の居場所を見つけるために何度でも旅立つ人々だ。

(P93)
  1. 漱石かぶれの栗原は地の文では彼女のことを細君と呼ぶ []

やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)

L25でやっていたエッセイ。
この連載をやっているということでL25読みたかったんだけど首都圏のみとか無理だし取り寄せできるみたいだったけど送料はんぱねーという感じだったのでハンカチを噛んでいた覚え。

この本は今までになかった「彼氏」の話が初めて出てくる。しかしこの本の最後のほうにはもうぱきっと心が折れた感じで彼氏とは別れるし作家業は休業して秋田の実家に引っ込むこととなる。

底辺女子高生に出てきた放課後自習の恋の話、1人称「オラ→あたし」と引き換えに失ったKくんの話がちらりとあったりする。

「日記はロマンです」「その桜がきれいな理由」「ほやほや」の章が好きだ。

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