カテゴリー「 単行本 」の記事

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神様のカルテ

信州にある一般診療から救急医療まで幅広く行う基幹病院「本庄病院」の内科医として勤務する(あと夏目漱石に傾倒する)栗原一止の忙しき日々の話。短編集で200ページ程度の薄めの本だけど3編収録されている。

医者として患者を看取ったり翻弄されたり徹夜続きの激務に追われる一方で、変人や半ば世捨て人のような人が住む築20年の幽霊屋敷のようなアパート御嶽荘で過ごす妻1や住人との日々。
個人的には医療方面より御嶽荘の生活をもっと読みたいなあと思いました。というのもわたしはこういうアパート同居モノがとても好きだからです。

そんなわけで一番好きなのは門出の桜。
それぞれ「ドクトル」「男爵殿」「学士殿」と呼び合っているのが好きだ。

ちなみに脳外科の教科書によると脳には痛覚神経はないらしい。だから仮に麻酔なしで脳みそをぐちゃぐちゃにスプーンでかきまわしても、人は痛みを感じない。もちろん実際試した人はいないし、試してから「痛いですか?」と聞いて返事ができたら、それは人間ではない。
いずれにしてもこの頭のど真ん中ががんがんする頭痛を感じるたびに、私には、凡人にはない特殊な痛覚神経が脳の中を走っているのだということを革新するのだ。

(P14)

思わずされ竜のアナピヤ周辺とひぐらしの皆殺し編か祭囃子編かのコミカライズを思い出す。

ところでわたしカスヤナガトと中村佑介の区別がつきません。
こっちは「あ、植物図鑑と似てる」と思ったので間違ってはないのですが。

御嶽荘は不思議な空間である。
まるで世の中に適合しきれなくなった人々が、さまよい歩いた先に見つけた駆け込み寺のような様相が確かにある。だが、寺と大きく違うことは、訪れた人々はけして世を儚んで出家などせぬということだ。彼らは再び世の中という大海原に向けて船を出す。難破を恐れて孤島に閉じこもる人ではない。生きにくい世の中に自分の居場所を見つけるために何度でも旅立つ人々だ。

(P93)
  1. 漱石かぶれの栗原は地の文では彼女のことを細君と呼ぶ []

やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)

L25でやっていたエッセイ。
この連載をやっているということでL25読みたかったんだけど首都圏のみとか無理だし取り寄せできるみたいだったけど送料はんぱねーという感じだったのでハンカチを噛んでいた覚え。

この本は今までになかった「彼氏」の話が初めて出てくる。しかしこの本の最後のほうにはもうぱきっと心が折れた感じで彼氏とは別れるし作家業は休業して秋田の実家に引っ込むこととなる。

底辺女子高生に出てきた放課後自習の恋の話、1人称「オラ→あたし」と引き換えに失ったKくんの話がちらりとあったりする。

「日記はロマンです」「その桜がきれいな理由」「ほやほや」の章が好きだ。

都会のトム&ソーヤ〈7〉怪人は夢に舞う 理論編 (YA!ENTERTAINMENT)

段々分厚くなりつつあるような気がするトム&ソーヤ。前後編の前編のほう。
創也と内人作のR・RPG「怪人は夢に舞う」の脚本・宣伝・テストプレイの算段をつけはじめたがピエロという謎の横槍が入り始めたり、内人のもとに謎の美少女ユラが忽然と現れたり。
卓也さんの保育士にかける情熱とそれゆえのひっかかりやすさすげえ。

しかし「謎の美少女」というポジションへの胸の高鳴りがやばい。
続きが楽しみだ。続刊は(実践編)ということで「怪人は夢に舞う」のテストプレイ。

本格ミステリの王国

エッセイ。
以前のエッセイは割と日常寄りのものや阪神のエッセイなども収録されたりしていましたが、この本はミステリ特化です。選評なんかも多く載っているのですが、トリックの創り方と探偵視点の迷惑な犯人ベスト9にときめいた。

火村英生は女性読者に人気があるらしい、キャラ萌えとかなんとか、という話あり。
わたしも火村助教授すきーです。准教授という呼び名にはいまだ馴染まないので助教授です。いいじゃないですか助教授でも。助教授の過去はまだないらしい。でっちあげるのは可能だけどしっくりくるのはまだないらしい。

安楽椅子探偵の話もちらっとあった。主に番組制作の側面から。
ゴールデン枠に移して視聴率アップを狙ってみませんかっていう話もあったようだけど、マニアックなものは受け入れられない・どの時点から見ても楽しめるようにとかクリアすべきハードルが多くてプロデューサー側からやっぱり無理ですよねということになったらしい。いつかまた続編が放送されることを期待しておく……

29歳

8人の作家による「29歳女性」を主人公に置いたアンソロジー
最近30前女子がメインの小説を読むことが多いのでこれを読んでみた。
1人ぐらい満ち足りてる人がいてもよかったのではと思うぐらい仕事に悩んでる人と不倫してる人の話が多かった。仕事はともかく29歳なんでそんなに不倫するのか……

好きなのは宮木あや子「憧憬☆カトマンズ」と栗田有起「クーデター、やってみないか?」
あと書店員補正で山崎ナオコーラ「私の人生は56億7000万年」

お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)

読書日記3冊目。
カバーの印刷の関係で刷り直し→入荷が年内には間に合わない本屋も多いという記述を見てAmazonで予約扱いでぽちっとした。うちは絶対年明けになるなと思ったので。

持ったときの感触からして既刊より分厚いと思ってたけど書店はタイムマシーンより50ページ程厚い。
あと注釈が全体的に多い。ページをまたがるのでこれはどこに注釈があるのか・これはどこに対する注釈なのかと探した。注釈の存在はありがたいんですがせめて同じ見開きにあってもらえるのが嬉しい……

ネットで一通り見ているはずなのに、「あれ、ここ読んだっけ?」というところが結構あってびっくりする。特に序盤。横書きマジックか記憶が悪いのか……
この巻でファミリーポートレイトとか製鉄天使とかを書いている。製鉄天使は余裕でまだ積んでいる。
発売日付近に買ったのに自分で買ったハードカバーの本は後回しオブ後回しにされる傾向がある。
一読永劫でアイルランドへ行ったときの記述を読んで懐かしくなる。これは本放送と再放送とあわせて2回見た。この年末も再放送やってたけどガキ使→紅白コンボを優先させたので見なかった。

この巻の終わりで結婚式をしていた。結婚の報を聞いたのは日記が先だったか読書日記が先だったかとにかくすごく驚いた。まえに桜庭一樹日記とか桃井かおり(だったと思う)と対談してたときとかに「結婚しないと思う」とか言ってたので余計にだった。いつぞやのメールマガジンでユヤタンの結婚が伝えられた時以来の衝撃だった。

リテイク・シックスティーン

星星峡で連載してたやつ。1冊にまとまるのを待ってた。
キリのいいところまで読もうと思っていたら気がついたら読み終わっていたという。
あれだな。豊島ミホの長編を読むのは久しぶりだな。

放課後の教室で孝子がいかにも秘密を打ち明けますといった感じで話し始めた。
「あたし2009年から来たの。本当は27歳で無職の引きこもりだった。今度こそ青春らしい青春を送るんだ」というはじまり。
といってもSFSFした展開はなく、あくまで未来から来たと言い張る痛々しい人の話ではなくガチの青春。
語り手は孝子ではなく沙織。見た目はお嬢だけど実際はそうではない。

舞台は97年の地方1で高校1年生。携帯はまだない。
調理実習・球技大会・席替え・「教科書忘れたから見せて」・部活・彼氏が出来てはじめての海・進路・スキー研修
要素を並べるだけでも王道だなということが分かると思います……

序盤の大海君が可愛い。

笑点の話の時も、即座「小峰さんは誰が好きですか!」とこっちに接近してきたし、バドミントンにいたっては、私に向かって羽根を打つたびに「愛のサンダースマッシュ!」とか変な技名を叫ぶ。

(P68)

男の子って馬鹿だ。

自分は27歳だったという女子高生の口から語られる「かつての自分」はわたしの心のやらかいところを締め付けるわけですよ。私もうすぐ29歳を読もうと思っているけど大丈夫か。

働いていないから、一年前と今日の違いがよくわからない。気力がなくて家事もあまりしない。どうしてこんなことになったのか、ひとりで部屋に篭って考えてばかりいる。(略)
「沙織には……や、若い子は皆、わかんないかもしんない。人生が止まっちゃうって感覚。大学出ても就職できなくて、どこにも行き場なくて、でもひとりでやりたいようなこともなくて……まさに手詰まりって感じ」

(P198?200)

わたしはてっきりもう休業しているもんだと思っていたのですが、これが休業前最後の小説2なんだそうです。どおりで豊島ミホ休業エントリへのアクセスが多いはずである。

papyrus (パピルス) 2010年 02月号 [雑誌]

papyrusに休業前最後の特集が組まれています。

きっと、今この瞬間だけの幸福の重さを、みんながわかっている。

(P382)
  1. 「鶴賀」っていう地名が出てくるのでもしかしたら長野県。 []
  2. 書いたのは、という意味。まだ週刊アスキーで連載していた「廃墟の女王」が単行本化されていない。ちなみに今年は文庫が出るそうだ。 []

妖怪アパートの幽雅な食卓—るり子さんのお料理日記 (YA!ENTERTAINMENT)

妖怪アパートスピンオフその1、るり子さんがメイン。
といっても別にるり子さんの生前が読めるわけではなく日記風です。
既刊のあらすじ(巻によって数回に分かれる)+今日のごはん(日々ごはんっぽい感じ) +1Pレシピを10冊分やります。あと登場人物紹介や間取りや掌編や用語集が載ってます。冒頭には少しカラーページもあります。
なのでスピンオフはスピンオフでもファンブック的位置づけではないかと思います。
衝撃的に薄い1ですしお値段も結構張ります。

  1. 単純にページ数の話 []

イチゴミルク ビターデイズ

再読なんだけどなんかやたらと面白かったので書く。
「やたらと面白い」っていうか再読なので「あれこんなに面白かったっけ」っていうのが多分正しい。
書影見るたびに思うけどこれは帯までコミで装丁だねとおもう。帯はチョコレート色をしています。

壁井ユカコ作品の中では一番普通。面白さが普通っていうんじゃなくて書かれてる人々が普通。
現代が舞台で20代のOLが主人公で、特に異能力は持ってないしサムシング1も生えない。過去から電話もかかってこない。誰も死なない。誰も歪んでない。鞠子がエキセントリックではあるけどそんなに妙でもない。17歳と24歳のわたしの話がいったりきたりする。

以下はさくっとネタバレが含まれています。

  1. 鴨川ホルモー的表現 []

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

去年辺りに周囲ではまっていくひとが多かったネット小説の書籍版です。異世界トリップものです。
ディーカルアという国があった。流行り病で王は逝去、王位継承権をめぐって兄派と弟派に分かれて一触即発・外部では隣国ザカリアが領土を奪ってやろうと虎視眈々と準備をしている。そんな中異世界からやってきた10代のひなた、すったもんだの結果戴冠式が執り行われる。

以上を前提にした戴冠式の少し後の世界、ひなたの姉ちゃんこかげ(28)を主人公にした物語です。
ひなたはディーカルアに行っている間のアリバイ作り1をこかげに頼んでいてこかげはある日ひなたが向こうで病気している夢を見て、いてもたってもいられずディーカルアにすっ飛んでいった。これでひなたが主人公じゃないのすげー! とおもいました。

上巻は勝手のよく分からない世界でこかげが傍観者として旅行者としてディーカルアの1庶民として暮らしたりする話で、下巻は積極的に世界に関わっていくこかげの話。下巻のほうが面白かった。
こかげの自問自答っぷりと落ちた瞬間と3割増にときめいた。
夢で見た病床のひなたのために未知の世界へすっ飛んでいく無謀さと膨れ上がる怒りを早々に鎮める程度の感情コントロールと自活能力と世界に慣れていく過程がわたしとしては前半の山だった。
下巻は花祭りのあれこれがすごく好きだ。6章のはじめぐらいまでが私の中ではクライマックスだった。

全体的にこかげの内面描写がかなり多くて、そこにわたしが感情移入する余地がないのでどちらかというと人の思考ルートを読んだりディーカルア見学カメラを特等席で見ている感じだった。

  1. お姉ちゃんのところに泊まっているということにしてくれ []
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