2010年度新人作品は全体的に豊作だったのでいつかのエントリのように紹介エントリを書いてみる。
→colorful | 2008少女小説系新人作品
前提:
・上にあるものほど面白かったです。ただし下にあるものは駄作というわけではありません。
・判断基準は個人の主観によるものです。ランキング等は考慮に入れていません。網羅もしてません。
・2冊目/2作目が出ているのがとても多いですがデビュー作のみで判断しております。
・「シュガーアップル・フェアリーテイル」は2010年4月発売ですが、第七回組ということで前年度デビューとしてカウントします。
・「恋愛」はあんまり重視してません(重要!)
2011/3/3作成 2011/4/7 追加更新
氷雪王の求婚〜春にとけゆくものの名は〜 湊ようこ
国を改革しようと思い悩みつつも実行に移す皇帝夫妻の物語。
主人公はシュタイン帝国皇帝のエドリックと16歳で皇后になった地方伯の娘アイリス。
語り部はふたりが歴史の一部になった後、史料上からふたりをうかがう350年後の人物。
エドリックとアイリスの現代の話に挟むようにして、未来に残された手記などが記される。
中には先ほどまでの二人の話の少し未来、中には皇帝の死後の話なども登場する。イラスト=内容の雰囲気ではないので1表紙回避するのはちょっともったいない。ただしハッピーエンド至上主義者にはオススメしない。
侍ニーティ みどうちん
基本コメディちょっといい話系。
霊能者占い師手品師というちょっと胡散臭いながらも世界を股にかける家族を持ち、若干霊感がある程度のミツコは引っ越したばかりの古い一軒家の留守番となった。少しでも掃除をしておこうかと家の掃除をはじめ、自室の換気しようと窓を開けると叫び声が聞こえ、ポルターガイストとともに若干体が透けているござる言葉の男が現れた。
どう見ても幽霊です。
記憶がないからわからないけど未練があるからこの世を離れられず、幽霊社会でも適応できずヒキオタのニートと成り果てていた。徹頭徹尾コメディかと思えばほろりとするシーンあり、胸キュンが過ぎるシーンあり。
〈運び屋〉リアン&クリス 天国になんか行かない 清家あきら
「デビュー文庫」とあったので混ぜた。概ね男ばかりですがニアホモとかじゃないよ!
近未来アメリカ、認定キャリヤー通称「運び屋」がもぐりの職業から正規の職業へと認知され職務内容に「身辺警護」が含まれ始めた頃の話。
共同経営者の叔父が亡くなりリアンが1人で切盛りしていたリンツ社に客が現れた。
「クリスチャン・リー博士を再来週開催されるモントリオールの学会まで無事送り届けて欲しい」という。
リー博士の研究成果をこの世から抹殺しようする人物がいる。しかし研究成果をデータ及び紙に残さないためリー博士の命ごと狙われていた。飛行機移動をするべき距離だが、安全のため陸路で3000キロの旅路を行く。
クリスは東洋人のせいか年より相当若く見え、世間知らずでしかも情緒に乏しい。二人の道中はいかに。
風水天戯 望月もらん
「ビーンズ文庫初の大賞!」「フジリューが挿絵するよ!」とよく宣伝されていたあれです。
地位も後ろ盾も持たない8番目の皇子星淑は誰にも関心をもたれず孤独に過ごしていた。
日常茶飯事のように異母兄からいじめられていたところを助けてくれた嬌杏の助けになりたい! ということで星淑は「今宮廷で流行りの風水なるものを利用してみよう。嬌杏の部屋超汚いし」とした。
風水を「片付け」と勘違いしたまま、星淑は風水官に言いくるめられ蔵の掃除を押し付けられた。
蔵からから見つかったのは古い羅盤で、そこからは指ほどのサイズの仙人が現れた。楊老師という仙人に星淑は弟子入りする。
海が愛したボニー・ブランシェ 緑川愛彩
ボニーは王命で「ロランの乙女修道会」のひとりの修道女として監禁同然で過ごしていた。
王命に従ったのは「両親の死の真相」を知るためだったがそれは叶わず外出もままならなかった。
父の遺作の船の進水式のため、久しぶりに故郷に戻ったボニーは「仇敵」とされる海賊ファド・ディアスと遭遇する。
ボニーは抜き身の剣を片手に父を殺したのはお前かとファドに詰め寄るが、ファドは濡れ衣だという。ファドのことを信じたわけではないが、ここで元の場所へ戻るなら自由はさらに狭まり、真実を手に入れることは出来ない。「ボニーのことを探していた」というファドにつき海賊船に乗ることを決めた。
海賊と修道女。はじまって早々にイヤボーンをやった凄い物語だと思います。
華葬伝 Flower Requiem(上)(下) 久遠 訳:根木佳子
「台湾角川ラノベ大賞金賞」ということで日本でも出版されたもの。
神殺しの結果、輪廻転生が失われ神の呪いが遺され異形が這い回ることになった世界。
普段翻訳モノはほとんど読まないので訳の巧拙はわかりませんが、上巻は結構読みにくい部類に入ると思います。
最後までルビが振られているとはいえ人名は基本的にあちらでの読み。あと用語だけぽーんと与えられてとりあえず物語が進む。どういうことなのかは後ほど説明されるけど、それって台湾では基礎知識なのかそれとも漢字にルビが振られる類の設定ばりばりのラノベととるべきなのかが解らない。
でもなんとか上巻を読みきると下巻が面白い。回収が凄い。あと慣れもあるのか、下巻は上巻よりは読みやすかった。なのでできれば「上下巻一気読みできる環境」でおたのしみください。
用語については以下を参照のこと。
colorful | 華葬伝 Flower Requiem(上)/久遠 訳:根木佳子
ふしぎの家のアルバイト 石和 仙衣
ある春の日のこと、災害でたがねの故郷は壊滅した。たまたま村外に出ていた人だけが助かったような状況だった。
天涯孤独の身となったたがねは上京するが、住所不定の未成年がひとりで生きていけるほど都会はそんなに甘くない。嘘をつき日雇いバイトとネットカフェ暮らしを続けていたがそれも限界が来る。
ある日ふと電柱に「助手募集」の張り紙を見つける。応対したのは凛とした雰囲気を持つ老婦人で、面接では散々「あなたは人間なのか?」と散々聞かれることになる。
助手とはつまり「異世界からの侵入者を狩る人々」の助手なのである。
主人公のたがねの価値観は独特というかとにかく食欲である。「平和を守るため」でも「愛する人との未来を守るため」でもなく「わたしのごはんを作ってくれるひとがいなくなるのは困る」という理由で人命救助である。
NOTTE-異端の十字架- /弓束しげる
悪魔が存在し人がとりつかれ時には死者も出す世界。
幼い頃母を助けてくれた人に憧れてエクソシストを志し、はれて候補生となったイリス。
平等に誰でも助けることが夢だったが、現実のエクソシスト協会はエクソシストの力を必要とするなら相応の寄付という対価を求める組織だった。イリスは萎縮して自分の才能を活かしきれず、うまく立ち回ることも出来ない。
奇妙な病が流行っているが悪魔がいるという確証はないという町へイリスが派遣された。
そこで協会非所属のノッテと名乗る凄腕のエクソシストに出会うことになる。
花は桜よりも華のごとく 河合ゆうみ
日輪座の京初興行は成功に終わり、天才的な能の舞い手である白火の評判は駆け巡った。
その噂は名門一座「柚木座」にも届き、次期太夫蒼馬は引き抜きに行くがを白火は断った。白火は性別を偽り女人禁制の舞台に立っているからでもあり、それ以外にも秘密はあった。
男装・能・異能。戦国時代ぐらいの話。
男装といっても「必要にかられてどうしようもなく」という感じで男装なので、ベースは女の子。ただし1人称は「オレ」。
「鎮まれオレの左腕……!」みたいなシーンはあります。1巻から色気が割と放出されてて、着物を剥かれたりもします。あと伝統芸能好きな人はどうでしょうか。能のシーンは結構好きです。
人形草紙 桜下の誓いと散華の絆 紫月恵里
妄執や悲しみを背負った者が鬼に変化する世界。
鬼退治をするため七宝と呼ばれる人形と、彼らを操る七宝士が主な登場人物。
七宝士は自分の命を削って人形に息吹を与えるため短命に終わる。
生まれた当時からの主の記憶を残す人形、先代への思い。そんな感じ。
悪い魔法使いはいりませんか? 矢貫 こよみ
軽く読めてあっさり楽しい系その1。
王宮付きの魔法使いアルグルはある時砂漠へ追放されることとなった。魔法使いは別れ時に呪いの言葉を残していった。「この国の王子が18歳を迎える時呪いをかけてやる」と。
それから10数年、宣言した「王子の18歳の誕生日」は近づいているが追放された魔法使いは既にやる気を失っており、弟子スイハに急かされている。アルグルはスイハに代わりに呪って来いこれは試験だと命じ、スイハは王宮へと忍び込んだ。忍び込んだはいいものの、王子は既に呪われていた。
砂漠の王国で水タバコはロマンです、という。
ドラゴンは姫のキスで目覚める 夜野しずく
軽く読めてあっさり楽しい系その2。
男子跡継ぎ不在のため300年続いたウィルシャー男爵家はシンシアの代で断絶となった。
シンシアは親から引き継いだ多くの借金を抱えており、今住んでいる屋敷の権利は幼馴染みで成り上がり貴族のカイルが持っている。売り言葉に買い言葉の結果「1ヶ月でこの屋敷を買い戻せるか」賭けをすることになった。
負ければ結婚の、到底勝てる要素のない賭けの上領民の中には人を襲う魔物の騒ぎも出ている。
シンシアは苦し紛れに書斎を漁り、すぐ近くの森に暗黒竜が封印され眠っていることを知る。
そしてシンシアはクロウ=クルーウァッハと名乗る暗黒竜と契約を果たす。
- こんなにふわふわしたところとかない [↩]
コメントは受け付けていません。