真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)

眠らない町の片隅にそのパン屋はある。夜中から明け方にかけて開店しているブランジェリー・クレバヤシはオーナーと修行中のパン職人のふたりで営業している。まだ開店して間もない新しい店だ。
このパン屋を巡る物語。連作短編。

希実は生まれてからというもの放蕩者の母によってあちこちに預けられて育った。
祖母・母の勤め先のママ、ボーイ・飲み屋で同席したの店主、コンビニで同じ雑誌を手に取ったOL。カッコウのような母の最後の托卵先として選んだ場所は「腹違いの姉」の元だ。希実はそれが嘘だと分かっている。でも住んでいたアパートは解約され母は学費が入った通帳を残し旅に出た。父は随分前に会うことさえ拒否された。
希実はもうひとりだ。
覚悟を決めて転がり込んだ先が「ブランジェリー・クレバヤシ」だったが、母のいう「義姉」は事故死した後だった。希実はその後パン屋の手伝いをしながら、ある日小学生の万引き事件からはじまる、母失踪騒動に関わっていくことになる。

自分だけではもうどうにもならない状況になった擬似家族を作っていく物語。
こだまのもとには母が戻ってきてこれからも色々あるんだろうけど、それはもう物語の外だと思う。でも希実はどうなるんだろう。お互いは知っててだまってるような「本当はまったくの他人」であることをいう日や母と再会する日は来るんだろうか。まあ年齢が年齢だしこのまま独立する/せざるを得ない感じはする。これはもう少し続きが読みたい本だと思う。