やみくも—翻訳家、穴に落ちる

翻訳家の人によるエッセイ。
何で読もうと思ったのか忘れたので必死に記憶を探ってみると、どっかの感想系で見かける→図書館で検索する→ある方を予約する→忘れる→到着の流れだったと思う。
翻訳ものは年1桁しか読まないのですがこれはなかなか面白い。翻訳家の仕事についても垣間見れる。あとは日常系のエッセイ。

例えば、いま訳しているヴァージニア・ウルフなどになると、徹底して人の意識の流れを映そうとするので、これでもか、これでもか!というほど構文が入り組んでくる。とっかかりの岩をひとつ見つけては、ぐっとつかんでしがみつくように登り、またとっかかりの岩を探すという調子で苦しいことこの上ない。一文が平気で十行ぐらいあるのだが、その一字一句を、
「いま、つかみにいきます」
「もうすぐつかめそうです」
「つかめつつあります」
「つかめました」
と、実況中継ができそうなほどスローな翻訳過程である。(P119)