悪魔のような花婿 (コバルト文庫)

スプリング男爵家の末娘ジュリエットは「不吉な13番目」の子どもで長身で、生家は貧乏ではないが9人の娘すべてに支度金を出せるほど裕福な家庭でもなかった。農業に精を出して品種改良をしてみたりで生涯を終えるのかと思っていたところ降ってきた結婚の話。相手は名門だが悪魔伯爵と怖れられるバジル家のウィリアム。

こう書くと非常にシリアスな話のような気がしますが一言で言うと「甘」に尽きる物語です。
新婚夫婦がひたすらいちゃいちゃしたり痴話喧嘩をするだけの話です。
血と肉の代わりに「お砂糖やスパイスそれから素敵ななにもかも」でできています。
なにひとつとして障害のないしあわせ結婚生活です。

あえていうならうなぎパイ的には1問題ありなんですが、まあそれはコバルトコード的に問題ありだろうと思うので、朝チュンと子どもができますのよ!対応なんでしょう。ていうか「床上手」「むらむら」はコバルト的にありなんだなあ、とおもった。いや床上手はせいぜい「あやして寝かすのが上手い」程度で使われてますが「むらむら伯爵」は笑った。

あとオールドローズ! サンホラー的にはオルドローズ! 魔女! ラフレンツェ! 忘れてはいけないよ!

続編は既に8月発売のコバルトに掲載予定らしい。この本はすごく面白かったけど童話的な予定調和の物語なので続きは読まなくてもいいかなっていう感じです。予定調和が悪いっていうんじゃないけど、要するに「キノの旅」なんだよね。シリーズとして続いたとしても、私の中では「2人はいつまでも仲むつまじく幸せに暮らしました」でいいと思います。

すごくどうでもいいことなのですが折込チラシの作者からの一言欄にあった「糖度高めのラブファンタジー」という表現にちょっと驚く。
いや「糖度」って少女小説読者界隈では珍しくもなんともない単語ですが、有川浩さんの講演会か公開収録かそんなので「読者さんは(自分の本を指して)糖度高いとかいう表現をされるそうで……(新鮮だとか驚きとかそんなニュアンスで)」て言っていたのをおぼえていたこともあり、いつの間にかまあまあ一般的な表現に? とかいうことを思ったりした。

  1. 婉曲的表現 []