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うたうひと

短編集。
タイトルの通り「うたうひと」つまりミュージシャンが主人公。
日本が舞台だったり外国が舞台だったりドリフターズがモデルだよねこれという話とか。
豊島ミホのカウントダウンノベルズをちょっと思い出した。
好きなのは「その夜に歌う」「笑うライオン」。というか「その夜に歌う」はよい!

ジョーはピアノバーのオーナーだ。しかしピアノは埃をかぶっている。誰かを雇えるほど金に余裕はなかった。
ある日いつもと同じように開店準備をしているとエリックがバーを見ていることに気がついた。
貧乏学生か浮浪者一歩手前の風貌のエリックに上等な客ではないと思いつつジョーは声をかける。返事はない。
きらきらしているエリックの目はジョーを見ておらず見ているのは店のずっと奥のピアノ。
ピアノを弾かせてほしいというエリックにジョーは「その服は臭い、着替えるなら弾いてもいい」と条件を出した。
いざ弾かせてみればクラシック・ジャズ・ロック、ほか弾けないものはないとばかりに弾く。
ピアノがうまくて歌もうまい。その日からエリックはジョーのバーのピアニスト兼皿洗いとなった。
エリックとミンディにときめいた。

残される者たちへ

ある日方野葉小学校同窓会の知らせが届いた。
もう既に廃校になっているが、方野葉小生の多くは方野葉団地の住人だった。
川方準一(37)は同じ小学校卒の人間が一同に会するその会に出席することにしたが、幹事「押田明人」という名前にまったく聞き覚えがなかった。別の学年の人物だと思っていたが実際に行ってみて、同級生の話を総合すると自分と押田は(途中で転校したとはいえ)1年半のあいだ一緒のクラスで過ごした、しかも昔の住んでいた家の向かいの住人だという。生まれたときからのお向かいさんだっただろう押田のことをまったく覚えていない。
準一は同じ団地の2階下の住人だった未香(35・精神科医)と一緒になくした記憶を探しに方野葉団地へ向かった。方野葉団地には現在未香の患者である芳野みつきがいるのだ。団地に呼ばれるかのように2人は団地へと向かった。

あらすじは未読でしたが、辻村深月が帯文を書いていた覚えもあったので最初のほうを読んで「冷たい校舎の時は止まる」みたいなミステリなのかなーと思ったらそうじゃなかった。中盤までは不吉な雰囲気がとても好きだったのでえーってなった。
終盤に触れてるので一応隠しします。

なんかこう、超不可能な密室殺人! 犯人はドラえもんのようなものがどこでもドアのようなもので乱入して射殺!これはこういうものなのでこれ以上の説明はしない! みたいな。

もうちょっと不思議な話なりの説明がなされるんだと思ってました。

思い出した。同じ棟の二つ下の階に住んでいた下級生の女の子。僕のことをそう呼んで慕ってくれた女の子。
お世辞抜きできれいになったその顔に、確かに当時の面影を見つけることができた。それなのに。
会場でみんなと談笑している押田明人の顔が浮かんできた。
どうしてあいつが思い出せないんだ。

(P28)

わたしとトムおじさん

小学生の私、帆奈(ハーフ)と20代後半の斗六(トム)おじさんの日常。
明治大正昭和の古い建物が移築されてそれぞれ明治大正エリア・昭和エリアと分かれて、その時代に合わせた店や旅館か理髪店なんかも入って村として実際に運営している<明治たてもの村>が舞台。
ちょっと児童文学的。

トムおじさんは元引きこもりで、今は修復がメインの(具体的な名前は知らないんだけどもハチクロで竹本くんが自分探しの旅の途中でバイトしたお寺とか直すあの)仕事をやっている。今もあんまり人と話すのは得意ではない。

対する帆奈は両親が別居することになり、両親とも忙しく親の務めを果たしたいけど無理。悩む親を見て日本の祖母の家で暮らすことを決めた。そうしたらトムおじさんと会えるからだ。
ずっとニューヨーク暮らしで、日本の小学校の暮らしになじめず「ハーフ×背が高い×目立つ×転校生」といういじめにあう典型で、それなら学校になんか行かないでいいわと小学校自主休業中。

トムおじさんと交流を深めるうちに帆奈は学校に行ってみようかなと思うようになる、とかそういう話ではありません。割とホームドラマっぽい。本当に日常の話だった。
最初の展開だけ見ると最後に紗絵があらわれて帆奈がトムの背中を押して幸せになるオチだと思ったのであれーーーとおもった。
坂木司の引きこもり探偵をちょっと思い出した。あれとは違ってちゃんと男と女の組み合わせですが。

東京バンドワゴン (集英社文庫 し 46-1)

単行本版が平台でよく見かけていたのですが、何の根拠もなく何の疑いもなく「ギターかき鳴らしながら空色ヒッチハイカーみたいに若者が東から西へ車で旅をする話」だと思ってた私が通ります。正しくは「東京下町にある老舗古本屋『東京バンドワゴン』を舞台とする大家族モノ」でした。ミステリ風連作短編。

帯が「早くドラマにしてくださいっ!」だったけどこれは確かにNHKの土曜9時枠でやってそうだ……
マードックさんの喋りが長いと全部ひらがなだからちょっと読みにくいな。でもこの語り口は好きだ。

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