北九州連続死体遺棄事件をめぐる、「あの時ああしておけば」の連続の物語。
途中からノンフィクションドキュメントを読んでいるような気分になった。序盤は男女が死体を埋めるシーンで幕を開ける。
飯塚みちるはその山中に遺棄された死体の件で取材をはじめた。飯塚みちるは一時は東京で記者として働いていた。今は彼女は出身地北九州でタウン誌のライターとして働いている。彼女を変えたのはかつて取材したいじめと称される凄惨な性暴力だった。それが元職場から今回の死体遺棄事件からの誘いで埋められていた死体は誰だったのか、を調べ始めた。
Twitterでは時々目に入る単語がある。身体的、精神的に障害をもった子どもが支援学校ではなく公立校へ進学し、「お世話係」として近くの席の子や「面倒見がいいと思われた子」が任命される件。支え合って生きていくことを学ぶことは間違いではないが、大人の都合を押し付けられて自分の意思とは反して「お世話係」としての役目を果たす子どもは「ヤングケアラー」であるというシーンにため息をついた。
町田そのこ作品ではしばしば生きづらい人たちが語られてきたが、「あの時こうしておけば」もっといえば「選択を誤った」「見殺しにしてしまった」「取り返しのつかないことをしてしまった」とどうしようもないところまできて悔やむ人たちをたくさん見ることになる物語だ。
九州は男尊女卑がなかなか……と聞かれることだけど、「早く結婚して子供を産まないと後悔する」と親に言われるシーンもあって、令和ァ! と思ったけど、数年前に某女子アナがご結婚された時に「はよ子ども産まなあかんねえ」とごく当たり前のこととして言うのも聞いたので、そういう価値観はある……。しかし、崇周囲の人間の生育環境ほんまきっつと思う。
ヘビーなので、休憩を入れながら読んだ。
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