9人(うち1人は幽霊)の恋物語。恋の話だけど甘くはないです。ビターです。切ない系です。
ハチクロみたいな片想いスパイラルだ。
謎解き要素もあるけど基本は恋の話だ。
「こいつなんぞ……どうにでもなれと思った。腹が立った。無茶苦茶腹が立ってた!」
仁王立ちをした市助の顔を、涙と鼻水が伝う。拳を握りしめ、震える体を支えるため、足を踏ん張っていた。
「重松は、永田屋を欲しがっちゃあいなかった! 俺がなんとしても手に入れられないものを、こいつ、かけらも欲しいとは望んでいなかったんだ」(P87)
「おまっちゃんが嫁に来てくれるなら、店はいらない。周りからあれこれ言われてもいい。嫌なことは全部俺が背負う」
だが、だが、いずれは己の実力で、きっとおまつには楽をさせてみせる。
「だから紅屋へは行かず、俺の嫁に来て欲しい」
重松は長い間……本当に随分と長く溜め込んでいた思いを吐き出し、おまつを見つめた。落ち着きがあって頼りになって、いつもはとんでもない行いなど、まずしないと思われている男の、一世一代の言葉であった。(P251)
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