この場合の「金星特急」が指すものは小説ウィングスで絶賛連載中のほうの「続・金星特急 竜血の娘」第5話。
小説Wings 2021年 06 月号 [雑誌] 雑誌 ? 2021/5/10
文庫本換算で3巻の1話目? 季刊ペースの雑誌連載で文庫本1冊当たり2話で、まとまるのが待てないので本誌派なんですけど、最近読めるコンディションじゃなかったのでずっと積んでたのをようやく読めました。いや最近攻撃力まじ高なんですよ。第4話、拝んだしこの展開死ぬって思ったわ。
腕と脚を組み、窓にもたれて目を閉じた彼女の髪が、ガラス越しの鈍い光で淡く浮かび上がっている。静かに目を閉じた表情はどこかあどけなく、いつもの凛とした表情ではない。(略)
----ああ、この人は彼女が目の前にいるだけでいいんだな。
そう思った。
早く思い出してもらえないと可哀想、なんて焦っていた自分が恥ずかしい。
彼女が存在する。それが彼を生かしている。他に何もいらないのだ。(P38)
なんてことないこのシーンがすごく美しくて、そこにあるのは愛だけだなと思った。正座して読んだ。
文字を読んでいるのにビジュアルが想起される文章が毎回すごい。その場合の想起されるビジュアルは人じゃなくて背景画、自然の風景が圧倒的に多い。
そういうビジュアルがあるのかというと特にそうでもない。掲載される挿絵はキャラクターが中心で、それも数えられるぐらいしかないし、世界を旅する物語とはいえ金星特急(錆丸が主人公の方、かろうじて現代に近い)と竜血の娘では旅をする世界がまるで違う。知らない世界のはずなのだ。
鉄馬号が走るシーン、知らないはずなのになんか見えたな。本物のロシアさえフィギュア関連(YOI含む)でしか知らないのに。お前は人を殺せるかっていうあいつもやばいしね。温泉の桜もすごくいい。
気軽に旅行に出かけられなくなった現在、写真がたくさん載っている旅行エッセイよりも旅に出ているような気にさせる小説だ。
地平に沈みゆく太陽。
湖からの夕霧。狂ったように鳴く鳥たち。倒れた馬たちが手綱に絡まってあがいている。(P56)
ここから始まる戦いよ(感嘆)
8月10日が楽しみだ。
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