カテゴリー「 読了 」の記事

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高松で日記の練習を買って年始のAmazonセールでも2冊ほど買って、今ちょっと「くどうれいん」という人を知ってみようキャンペーンが行われている。
岩手出身で割と生活に根差したエッセイを書かれている方だ。瓶ウニがおいしそうだった。

「ひとりでごはんが食べられない」が印象に残ったりした。わたしはひとりでも外食ができるが、ひとりだと食事をおろそかにする(しかもお腹が空いてくるとどの店を見ても「コレジャナイ感」に襲われて結局どこにも入れない)ことがある。
でも誰かとおいしさを共有したさはないので、こういうところで他人の見解が見られるのは良い。
いやライブ終わりに西梅田のファミマでサンドイッチとビール買ってハービス大阪で写真撮って食べながら検索するのいいんですけどね。直近ではよしここだと並んでも「ご案内はできますが、キッチンが混んでいて提供に〇分かかります」と言われて高速バス時間的に無理で泣く泣く後にしたこともあり。思えばあれはインフル的にアウトだったのだろうか。

それをあれかが「丁寧な暮らし」だと嘲笑するかもしれないが、うるさい。わたしは大根を面通ししているだけだ。それ以上でも、以下でもない。わたしはわたしの大根を切る。お前はお前の大根を切れ。

(P102)

兼業少女小説家 - 檸檬の木文庫 - BOOTH

同人誌です!

きのうぐらいから「社会人は新人賞を取っても会社を辞めるな」という話題がよく流れている。わたしは本読みなので、フォローしている作家も多い。そういえばそんな本をこの前買って積んでおいた、という本がこれ。

これは少女小説レーベルからデビューした兼業作家(30代)とコピー取りが仕事の中年女性をいかに丁重に扱っていかに仕事を円滑に進めるか、みたいな話の2本立て。
なお2作とも自分(青木さん)を投影して書いているが具体的なモデルはいないとのこと。
先に言うとスカッとするようなする話ではない。どちらかといえば「そんな男とは早く別れろ!!!!」と読みながら思うような、感情の動きが丁寧に描かれている話である。あとがきに「いつもストレスを溜めている」「負のお仕事小説」と書かれているけどまさにその通りである。あかねちゃんも葉奈ちゃんもどうぞ報われますように、と思いました。

カクヨムネクスト連載作品。

異世界に召喚され勇者となった高校生は魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらしました。めでたしめでたし。
の、あとの物語。

京都の弁当屋で働くひばりはアジフライ弁当ばかり買って帰る伊吹と恋に落ちた。長い遠距離恋愛、1度や2度ではないドタキャンを乗り越えてようやく結婚に至りひばりは東京に引っ越した。
とても忙しいらしい伊吹はちょいちょい同僚を連れて帰ってくる。それもいきなり連絡がきて、慌てて客用の食事を用意する。
そして連れてくるのは異国の名前で、日本人ではありえない容姿の人ばかりだ。

そしてひばりは伊吹が忘れたお弁当を届けにいった先で知った。
夫の勤め先「MKL」の正式名称はランズエンド多国籍騎士団。高校生の時留年したのは異世界で勇者をやっていたから。異世界から帰還して自動で騎士団預かりの身分になり東京で大学を出、今も東銀座から異世界へ出入りし剣を振るっている。
給与明細に出張手当と危険手当がついているのはそういうことだった。

いい感じに現代とファンタジーが入り交ざっていて軽めの読み口。軽めといっても大罪を犯したテロリストも親を殺された魔王の娘も出てくる。伊吹が連れてくる異世界人をひばりがもてなす物語。

時は明治、舞台は金沢。英語を習いたい武良越義信は私塾の門をたたいた。英語の講師は16歳の寄宿生である泉鏡太郎が担当しているという。聞けば受験に備えて数学を習いに来たのに塾長から「英語ができるなら教えてみろ」と言われたからだという。

この泉鏡太郎がのちの泉鏡花である。
泉鏡花は著作はどれも読んでいないが金沢で入った泉鏡花記念館(だったと思う)で見た「俺を選ぶか婦を選ぶか」が忘れられず。もはや誰が誰に向かっていったのかはっきりと覚えていないが、うっかりこの少年がこれを言われる(もしくは言う)ようになるのかと思いながら読んだ。

本作は泉鏡花がのちの著作で手掛ける事件やモデルと遭遇してるかもなあで書かれているので、泉鏡花作品に触れている人ならおっとなるかもしれない。わたしは読んでない側の人間なので、その辺の機微は分からない。
義信は鏡太郎に「私塾の月謝は怪異の噂支払いで結構。噂を教えてもらえれば支払いは待つことにし、本物だったら免除」と言われ仕事柄いろんな話を聞く義信はあれこれ聞かせる。

鏡太郎と義信以外では貸本屋の娘、滝は以前ほどは見なくなった分かりやすいツンデレの子であり、しかしその好意があまり届いていないところもほほえましく読んだ。

2018年から2022年(主には2020年)の日記。古賀さんと2人の子ども(中学生の兄と小学生の妹)
コロナ禍真っ只中の子どもも書かれているが、そんな悲壮なものはなくよく子どもたちと話をし、戯れ、生活をしている。
小学生の娘にきく「どうやって仲の良い友達を作ったのか」はそういえばこの年代は確かにそうだった、と思う。

現代もの国家公務員オカルト(荒ぶる土着の神を鎮める系)ファンタジー。
オカルトというと人によって想像するものが違うので例えると「呪術廻戦の最初5冊ぐらいを想像してもらったら大きくは外さない(学園物ではない)」という感じだろうか。男バディで祖父と孫みたいな、栗原さんのいつもの感じで味が違うやつっていうやつ。

津々良相次(つづらそうじ)は警察官だったがとある事件で心身に不調をきたし、国土交通省へ職場を移ることになった。今日が初出勤である。「国土交通省水管理・保全局」の中にある「鎮守指導係」は地下倉庫にひっそりと存在した。
ようやく見つけたが室内にいたのは倉庫番を名乗る神矢良樹のみ。係長と「君の相棒」天崎志津也は不在だという。出張で1週間不在の係長はともかく都内にいるはずの天崎まで帰り時間不明とはどういうことかと言えば事故や災害と聞くと飛び出して行って帰ってこないのだという。
元警察官津々良は現場を手伝おうと天崎の居場所を聞いた。天崎は定年を過ぎて嘱託として勤務している「可愛いお爺ちゃん」とは神矢評だったが、津々良が出会った天崎はどう見ても10代、酒も煙草も深夜徘徊もご法度の年の少年だった。

この天崎がわたしのなかで時々刀剣乱舞の一文字則宗が通り過ぎるので困った(なおビジュアルは全然違う。表紙手前が天崎、奥が津々良である)あとちょっとツボだったのはトンカツサウナ。面白かった。

高校1年生の茜と小学1年生のすみれの姉妹は京都市上七軒の喫茶店で父と3人暮らしだったが、春に父を亡くした。
葬儀の後一時叔父の家へ預けられまた転居することになった。遠い親戚の久我青藍という、26歳の男性絵師が引き取るということだった。人嫌いで平安神宮北側の「月白邸」という広い屋敷に住んでいるが、外にはめったに出てこないということだった。

月白邸にはもうひとり男性がいた。紀伊陽時という青藍の仕事仲間で、絵具屋をしているという。
すみれはあっという間になじみ「青藍」「陽時くん」と呼び、茜は月白邸は「いずれ、例えば高校卒業すれば出ていく家」「他人様にご迷惑はかけられない」と思っているけどじわじわと「月白邸の子」として馴染んでいく様はええですなあと思う。
かつて月白が青藍にしたように、人嫌いの青藍が幼い姉妹を引き取って、積極的に親代わりをするわけではないけど人間的なコミュニケーションを取っていくのもよい。
じんわり、こう、「ええ話や……」ととなる感じの物語でした。

アンソロ形式の本ではないが、まえがきとあとがきがある。
ちなみに本作は「スペース」以来20年ぶりになる駒子シリーズの続編。まえがきでは「ななつのこから始まる、ストレートな続きではない」と書かれているものの、読んでいるとあーはいはいはいとなる感じだ。ミステリの味は薄く、日常の謎というか日常に存在するちょっとした不思議なことに結末がつく。
基本的には犬が物語の中心にいる。宮部みゆきのパーフェクトブルーぐらい犬と人間の物語である。

ガチガチの現代。令和の池袋が舞台。シェアハウスに住む4人の物語。
この4人が知り合ったのはアニメイト池袋店の原画展のメッセージコーナーの付箋だ。
池袋駅徒歩10分、築10年敷金礼金不要家賃4万。
入居条件は「週刊少年ガッツで絶賛連載中の『超絶テニス燃くん』で同人活動をしており、今年12月29日のコミケに参加できる方」
大家は英博(大手)、大学生の美影(左右固定の腐)社会人の舞(夢女)大学生の直輝(一番ライト層だけど救われ方が半端ない)が最終的にコミケで頒布する話で、とはいえ同人誌制作に悩む話ではなく、シェアハウスの人間関係で悩む話でもない。
オタ活と個人、オタ活とオタクへのあこがれ、文字にすると途端に陳腐になるけど、やっぱりこれが一番しっくりくるので使うけど「絆」の話よ。
個人の掘り下げがガッとあるのと、オタクの描写がリアルっていうか生だった。
序盤に魂をつかまれたのが美影と舞がお互いの属性をオープンにするところで

「私は、二次創作はあくまで作品の延長線上にこちらが勝手に作り出している幻覚であり自分の解釈と食い違ったからといって公式や作者を批判することは未来永劫ありませんが、既出の情報と己の想像に矛盾がない限り純然たるもゆはゆ左右固定厨です」
「うわ、急にすごい喋る」
(略)
「ちょっとね、争いはしたくないから刺されるなら先に刺されようと思って身構えてたけど、思った以上のダメージだ、これは、待ってね、今、抗体を作ってるから」

この多分早口で喋ってるんだろうなあ感と友達の話聞いてるみたいだなあ感すごかった。実際左右固定強火のオタクにここを見せたら「わかりみが深い。この心大事ですよ」って言ってた。
「青い鳥と何年一緒にいたと思ってるの」とかいう舞さんマジ友達になれるわ。

今年の賞ランキング系を片っ端から取っていくすごいやつ。短編集。
高校生射守矢 真兎(いもりや・まと)が戦う5つのゲーム。ゲームはどれも誰もが一度はやったことがあるだろう、じゃんけんが2種類、坊主めくりとポーカーとだるまさんが転んだ。しかし今回はどれも特別ルールが追加され論理的なゲームとなっている。
これはネタバレですけど、射守矢は勝ちます。その勝ち方が鮮やかです。

両親との縁が薄かった女子高生が異世界転生した。織物に魔力を宿す国の王となるべくチルは迎えられた。
初めて読むのになんか懐かしかった。わたしは17歳の冬に初めて図南の翼(小野不由美)を読んだ時のことを思い出した。といっても似てるわけではない。チルは珠晶ほど強い女ではないし幼くもない。チルは一度は生きることもあきらめている。それでも異世界で生きた。
でも運命なんだよなーーーー。

「死なずに生き延びられたのならば、お前は十分に力を尽くしたということだ。お前は戦士だった。小さいながらも、誇りをもって生きたということだ」

(P125)

ここのシーンすごく好きなんだよな。マニージェがどえらい肯定ペンギンだ。
いいファンタジーです。最近は現代ものばっかり読んでいたので心があらわれる。わたしは長らく異世界ファンタジーを読んで育ってきたのだ。

辻村七子作品ガチ勢の方が読むかもしれないエントリで残すのは大変恐縮なんですけど、わたしが好んで読んでいた頃とはたぶん結構別物だと感じてるんですよ。みのるが登場してからは割とそれは顕著だと思ってて。
序盤の頃は普通に連作短編であの頃たくさんあった仕事系ライトミステリ、ちょっとBL的な要素ありって感じだったと思うんだよなあ。今は割とミステリ要素なくて人間の営みとか成長とかが描かれる感じがする。
体感ちょーシリーズのちょー新世界より以降を読んでる感じ。正義の大学時代の友達とかいろいろでてきてて、みのる視点では「リチャードと正義は顔が広い」と思っていても、あと15年ぐらいしたらみのるも真凛と良太に対してそう思われるかもしれんみたいな。
リチャードと正義の関係は、多様性? それ使うかと思われそうだけども「世の中には人生を共にしたいと思える人は異性かもしれないし同性かもしれないし次元がいっこ下かもしれない」みたいな感じ。きのう何食べた? のケンジとシロさんは同性パートナーだけど「BL」って感じではないし、あの感じ。でもあのふたりよりは湿度は高いと思う。

でもジェフリーとヨアキムの関係はどんな感じだったかなあと思いながら読んだ。9割忘れている。
でもいつぞやのあとがきで野梨原花南さんが「角のタバコ屋のおばあちゃんも燃えるような恋があったかもしれないんだよ」みたいななにかなかったっけ。「今はこんな感じだけど昔はいろいろあったふたり」みたいな感じで読んでた。
たぶんずっと好きでずっとこの関係性が好きな人はたまらんわまじでって感じなんだろうなと思う。

元々はAmazonオーディブル用に書き下ろされた作品の書籍化。

都内にある老舗ホテル、三日月ホテルに勤めている続 力(つづき・ちから)は忙しい日々を送っている。
小ぢんまりとしたホテルがゆえに宴会担当専任とはいかず、ある時はフロントを、ある時は荷物を運び、ある時は夜勤もする。その中のひとつとして招待状作成がある。ここぞというときは手書きによる招待状の需要がある。
とあるお別れの会の筆耕として選ばれたのが遠田書道教室の遠田康春氏であったが、氏は亡くなられており、筆耕は遠慮するという連絡があった。それがサンプルと一緒に送られてきたのが今回選ばれた「教室を継いだお子さん」遠田薫氏であった。
康春が跡を継がせた人間なら間違いはないだろうが、万が一のことがあっては困る。薫氏の腕と人物像を見極めてほしいと力は書道教室を訪れた。

書道教室に通う子供からは若先と慕われ、あらゆる筆跡を駆使し代筆を請われる遠田に巻き込まれる形で力も代筆に協力したり食事を共にしたりすることになる。
元々がオーディブルということは耳で聞いて理解できる内容のためか、あっさりした内容で読みやすく、登場人物も限られている。

「宮木あや子が明治ブルガリアヨーグルトをテーマにお仕事小説ともやしもんぽいもの(さらに入れ子としてPixivで細々連載されている乳酸菌擬人化小説)を書いた」というやつ。
岩手県出身で東日本大震災で被災し、今はとある大手食品会社で勤めている朋太子由寿と「悪魔の創造せし国に忍ぶ矜持の器と刃」(乳酸菌擬人化)と仕事の話である。
というと「ハハーン、B面の宮木あや子ね」と思って読むと震災サバイバー、地方も地方出身女子の大学院進学ほか「女性の権利について」、なんかもういろいろ入っているのである。軽そうに見えてそんなに軽くはない。
アフタヌーンティーのところの流れが好きなんだな。

短歌集である。ちょっと前、TVerであった切り抜き配信で、凪良ゆうさんがこの本をおすすめしていた。
短歌集を読んだのは随分と久しぶりである。

好きな短歌は

人間へ まだ1割の力しか出してないけど? 消費税より
春がまた大人に夢を見せながら叶えないままただ過ぎてゆく
怒らせるという手段でしか人は神とつながることができない
ためらわずきみの頭を撃ち抜けるやさしいぼくでありますように

今Twitterでわたしの視界では爆発的に流行ってる祠壊したんかワレェみたいな短歌があったので笑った。でも初見の攻撃力が一番高かったのは人間への宣戦布告。

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