サエズリ図書館のワルツさん 1 (星海社FICTIONS)

電子書籍なんて駄目だ本は「本」というかたちだからいい。嵩張ろうが重かろうがこの形を愛している、というひとはもれなく読むといいと思います。

1話を見る限りではちょっとドジなOLカミオさんが失敗したがゆえに知ることのできた「サエズリ図書館」という場所と、本を巡るちょっといい話 という感じなのですが、話が進むにつれてこの世界を取り巻く環境は生易しいものじゃねえぞというのがわかっていきます。

この世界は電子書籍が当たり前になっていて、「本」というものがいかに貴重で高価な嗜好品になっているか、そういう中で貸し出しカードを作れば誰でも無料で一定期間本を借りられる「サエズリ図書館」というのがいかに異様な場所か。本のことならなんでも来いな司書ワルツさんかと思えばこの図書館は全部わたしのものたくさん亡くなったんだからひとりひとりのことはどうでもいいって、もうひとりぐらい死んでもいいって思えますか?っていえるワルツさんまじぱねえとおもった。

「わしは毎日本を読むがね、娘はわしの本好きを、贅沢趣味だと渋い顔をしたし、端末映像やデータのほうが万倍面白いと、何度も言ったよ。それは正しいんだろうと、わしも思う」
続いて落ちた呟きは、悔いのようであったし、諦めのようでもあった。
「行き過ぎた執心は病だ」

(P37)

わたしの周りは病んでる人が多すぎる。