自分スラムダンク直撃世代、ジャンプ本誌でも読み、コミックスは何度も読んでたしアニメもリアタイ勢。
あまりにも秘密要素が多すぎてどうなるのかと思ったけど見に行ってよかった……としみじみ思った。

スラムダンクミリしら勢はもしかしたらちょっときついかもしれない。
登場人物の自己紹介はテロップレベルでもされないし、物語は試合のシーンと宮城リョータの生い立ちが交互に語られる。でもこの試合が何の試合か、相手の山王はどういう相手なのかとかそもそも湘北とは? というのも語られない。知ってる前提である。それか「友達に連れられて知らない高校のバスケの試合を見に行った」という感じになる。
でもすごい映画なので、スラムダンクミリしら勢にしか摂取できない栄養素の可能性は否定できない。

スラムダンク直撃世代のわたしとしては「井上雄彦の絵が動いてしゃべってる」という感じだ。
だんだん「これしゃべって動く絵本なのでは?」とか「時々VTRが挟まれるタイプの試合なのでは」という気持ちになる。

声優もフルチェンジだったのでどうなるのかと思ったけど、思ったより違和感はなかった。似ているというわけではないし似せてる感もなかったと思う。でもデフォルメ絵は一切なかったので、それが逆に「生きてる」感があったんだよな。具体的にはフリースローで花道が「入れ入れ入れ」って念を送っているシーンとか。

リョータの生い立ちは今回初めて知った。現代ならファンブックとかで公開されてたと思う。沖縄育ちで3きょうだいの真ん中で、お兄ちゃんもバスケをやっていて、でも海難事故で10代半ばで帰らぬ人になった。そういことから始まって神奈川県へ引っ越してきて、湘北に入学して、という感じで。

山王戦なんだけど、初心者向けには何も語られないけどリョータと花道が顔芸で会話するシーンはあるし、深津はちゃんと「ピョン」をつけて会話するし、「俺は今なんだよ」もふらふらになりながらも次々3Pシュートを決めるミッチーもある。

今の自分は年齢を2分の1にしたところで湘北高校バスケ部の年齢を余裕で上回るけど、見れば見るほど自分の年齢が分からなくなっていくんだわ。はらはらしながら読んでいた頃を思い出す。時々は泣き、花道がフェイクを決めるがトラベリングをとられるところは笑った。

公開してもう1か月以上経つというのに劇場はスクリーン前3列を除いてみっちみちに埋まっていた。
それなのに後半の無音のシーンは飲食の音も椅子がきしむ音も聞こえなくて遠くで息をのむ音が聞こえた。贅沢だなあ。
そこからあのハイタッチのシーンが音を伴って、何回も読んだあのシーンが映像として見られたのだ……。
すごいいい体験をした。

帰ってから楽天ブックスで新装再編版を買った。

いい映画だった。ちょっとしたドキュメンタリーを見た気分だった。