風味絶佳な映画は関係なく「パティスリー・ルージュ」で働く3人のパティシエの物語です。
オーナーパティシエの柳原雅也・主人公でパティシエ見習い永井晴香・晴香の1ヶ月後輩で同じく見習いの近藤。パティスリー・ルージュのオーナーにしてスポンサーの坂崎紅子・マシュマロこと森英次。その辺りが主な登場人物です。
パティスリー・ルージュがちょっと変わりものの店で、住宅街とも繁華街とも判断のつかない微妙な街中で、路面店ではなく古いマンションの最上階にある。ちなみに看板らしい看板は出していない。客はインターホンを押しオートロックを解除してもらい上がる。そのケーキの味とその会員制カフェめいた隠れ家感がクチコミで人を呼ぶのだという。
ダイエット女子には少々拷問なのではないかと思うぐらいおいしそうなケーキの描写が続きます。
普段あまりケーキを食べないわたしでもちょっと誰かケーキ買ってきて! と思うぐらいの描写ぷりである。
フレジエは苺のショートケーキと似て非なるものらしい。初めて知った。
恋愛パートもあるにはありますが、メインはケーキです。
(晴香は)純情っていうことなの? みたいな台詞があるけどわたしは晴香は純情キャラだとは思えない。失恋したりバレンタインに呼ばれて魔が差したみたいに同僚にキスしたりその同僚にキスされたりかといってそこと進展するわけでもなく片想いの相手はまた別。晴香は紅子親子よりは劣るとはいえどちらかというなら奔放なほうだと思う。直の続編があるのならともかくこの1冊だけで判断するならば晴香はフラグ立て逃げもいいところだと思う。
調理台の上に置かれたガトー・ショコラは、真夜中の雰囲気を漂わせている。装飾らしい装飾もなく、シックな外観のお菓子だけれど、だからこそ、なおのこと、表面に飾った一摘みの金箔が効果的だ。(略)
小麦粉はほとんど使わず、ベーキングパウダーもいっさい入れず、チョコレートと卵、バターが主な材料なのだが、ちっとも重たくない。濃厚な味わいだけれど舌の上でとろりと軽やかに溶ける。上等なカカオの風味が贅沢で、洋酒の香もほのかにする。ゴージャスでデリケート。フランボワーズの酸味がたまらない。(P114?P115)