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神去なあなあ日常

白いほうの三浦しをん。林業を営む人々とそこで働くことになった勇気の成長の話。
勇気は高校卒業したが進路は決まっていなかった。大学には行かず、かといって就職する気もなかった。
適当にフリーターをやるつもりが、担任と母の陰謀と「緑の雇用」制度によって林業の世界に放り込まれることになった。
行き先は横浜を遠く離れた三重県の山奥、神去村。
住人の多くは60歳以上、携帯の電波は村では基本的に入らない、手紙ひとつ出すのもいちいち面倒な不便を絵に描いたような過疎村だ。
100年サイクルの林業を営む人が多く夜は遊ぶところもなくこの村の住人の気質はおっとりしている人が多い。神去弁でいうところの「なあなあ(ゆっくり行こう・落ち着け・今日はいい天気ですね)」「なっともしゃあない(なんともしかたがない)」を地で行く神去住人はときどきワイルドすぎて冷たい。

冬から始まって冬に終わる1年の物語だ。3章が超好きだー。
「オオヤマヅミさん(山の神さま)」とか「大祭の年」「誰にも見られず深夜ひっそりと行われる祭りの準備」とか白いへび眠る島を思い出したけど、雰囲気はこっちのほうが格段に明るい。

夏祭りで山太(5歳)が勇気のところに走ってくるところの

「なあ、勇気」
「呼び捨てにすんな」
「ゆうちゃん」
「なんだよ」

(P178)

ちゃんづけはありなんかwwwとかおもった。

神去川のプール(岩を集めて作る)がいいなあと思った。私は海と山が近いので川遊びはほとんどしたことがない。祭りで使われるメドが直球でえろすぎてふいた。

山の神さまに対する村人の態度が加門七海の怪のはなしを思い出した。
怪のはなしは実録怪談集なのだけど(うろ覚えなので詳細は違ってるかもしれませんが)「祭りが見たくて役所に紹介して貰って山奥の村へ行った。『この子は神さまの子なんだ』と紹介されたり村人が並んで、声をかけるわけでもなく山のほうをいっせいに向いた。山から走る火の玉が」みたいな話があったので、神去村ももしかしたらそういう村なのかもしれないとか思った。

「静かに」
清一さんがささやいた。「大丈夫だ。じっとして」
俺は地面に立てていた釜の柄を強くつかむ。大丈夫だ。ちゃんとここにいる。霧の中で呼吸を整え、動揺を鎮める。
ドーン、ドーンと、太鼓のような音が低くした。神去村が鳴っている。ついで、かすかな鈴の音が響く。幻聴かと思ったけど、ちがう。シャンシャンと澄んだ音が、西の山の尾根から下りてきて、俺たちのすぐ横を通り抜けた。俺はもう体がすくんでしまって、指一本動かせない。まばたきもせず、立ちすくんでいた。

(P136?137)

気温と湿度の上がる夏の山は、ほんとに危険でいっぱいだ。
だけど、木陰と朝夕は涼しい。斜面に生えた木のねもとに腰を下ろし、青い空と緑に覆われた神去村を眺める。ひぐらしの鳴く声にうながされ、オレンジ色に染まった薄い雲の下を歩いて帰る。そんなとき俺は、「ああ、きれいだなあ。楽しいなあ」と心の底から思うことができた。

(P149)

架空の球を追う

短編集だよーと聞いていたけど実際読んでみたら想像していたのより1話がずっとずっと短くてびっくりした。短編集ていうより掌編集。 表題作で1話目の架空の球を追うは7ページで終わるのである。

好きなのは「銀座か、あるいは新宿か」と「ハチの巣退治」「パパイアと五家宝」
ハチの巣退治は時々脳内でディラン&キャサリンで再生された。本家ビバリーヒルズのほうじゃなくてなだぎ武と友近のほう。銀座新宿のほうは「この人ら会うたびにこういうことをやりあってるんだろうなあ」とか思いながら読んでたらまさに。パパイアはラストのレジですごく笑った。

マギの魔法使い  魔法使いは決断中! (角川ビーンズ文庫)

最終巻。
これから読む方へ:
あとがきから読もうとすると高確率でネタバレパンチを食らうのでページの順に読みましょう。
できたら目次も読まないのが望ましいです。

1巻発売当時はパーツだけみれば逆ハーなので割と地雷覚悟の購入だったけど、まるで甘さがないのが逆に気に入ったという不思議なシリーズでした。途中で糖度がどんとあがりましたが。あのデレはやばかった。

ここからネタバレがどんです。

k.m.p.の 南の島ぐるぐる。

南の島を旅行してみた。行き先はバリ島の隣、ロンボク島。
ロンボク島はバリから飛行機で20分・船で4時間ぐらいのすぐ隣の島で、よく似てそうだけど植生が違ったり宗教が違ったりするところ。主にはロンボク。

チェンマイアパート日記は割と手書き文字とか手書き文字風フォントとかが多かったに比べて、こっちはゴシック系のフォントが多い。というか9割文字のページもたまにある。写真は小さめなのがいっぱいある。
愚痴のターン!とかは少ない。

お湯が出るシャワーがある宿がないとか、塩水のシャワーとか、そもそも水・電気を自由に使える宿がないとかそういうのが多かった。ホットシャワーの顛末は「その発想はなかった(゚д゚)」という感じだった。

海の写真が綺麗だわー。

アザーン(お祈りの呼びかけ/イスラム教)ってでてきて、最近この単語どっかで見た!と思って脳内を検索した。バベルの歌姫だった。そうかあれはこのへんからとってきてるのか……とかおもった。

エバーグリーン (双葉文庫)

文庫化したので3人か4人ぐらいに布教した。思春期の約束、その10年後。
田舎在住のミュージシャン志望男子と漫画家志望女子が中学校卒業式に、「10年後夢を叶えてこのあぜ道で会おう」と約束してその9年10ヵ月後の話。
豊島ミホ作品のなかではこれと檸檬のころが私の中で鉄板です。大好き。
夢叶えた方も挫折したほうもちょーぐるぐるしてるなー。甘酸っぱくて滅びそうになった。

静まり返った部屋は、本当に何ひとつ物音が聞こえなくて、耳鳴りがしそうだった。
あけすけに恋バナのできる友だちも、彼氏も居ない二十四歳の私は、ただ十年かけて腐っていってるだけなのかもしれない。濡れた毛布のような思い出にくるまって、身体じゅうにカビを生やしながら。

(P145)

自分の感想読み返したらなんか今とは思ったこと違うんだけど、初読のときの感想もおいとく。
エバーグリーン/豊島ミホ

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

ハードカバーのほう買ってるけど文庫版も買った。
違いは野性時代に載った乃木坂れなの短編「ゴージャス」とあと古川日出男による解説がついてくる。
ハードカバーの時は七竈と雪風とあと後輩緒方みすずに重点おいてたけど、今回は七竈と優奈、雪風母、ビショップだった。ビショップはあきらかにきゅうり@マイナークラブハウスの影響だな。ビショップも見守ってる系だった。
脳内で時々七竈がドラマ化されたりコミカライズされたりしていた。ちなみに栗山千明と君に届けの爽子(外見だけ拝借)だった。なんか時々篠原一のゴージャスを思い出したりした。この余分なBGMがなんもない昔の映画みたいな古びた世界観は酔うなあ。

一週間ほど経つとむくむくはおれと一緒に縁側でまどろむようになった。ときどきはいっしょに外に散歩にも行くようになった。むくむくはほとんど鳴かなかった。いつも静かだった。おれはこのちいさな幼いものを自分のいもうと分だと判断した。弱く、幼く、物静かなるむくむくよ。

(P58)

少年少女飛行倶楽部

中学生+弱小部活動+青春=もえるよかんしかしない。
これは今中学生の人もかつて中学生だった人も読むといいと思います。

佐田海月(みづき/あだなはくーちゃん)は、幼馴染みの大森樹絵里(じゅえり)に誘われて樹絵里好きな人が兼部しているという「飛行クラブ」に入部することになる。この学校は部活は必修でなにかひとつに入らなくてはならないのだ。
元来の性格が災いし、なしくずしのままに入った海月が一番精力的に働くこととなるのだった。
ちなみに物語は海月一人称単視点である。

「ひこうクラブ」と聞けば大抵の人が「非行クラブ」と脳内で変換する飛行クラブの活動内容は飛ぶことだ。
「自分自身が」「何の力も借りず」「自由に飛行する」ピーターパン型の飛行がベスト。
しかし特別な能力も魔法のほうきも豊富な財布も持っていないので、普通の中学生ができる範囲でクラブ規定の飛行をさぐっていくところからはじめよう、というクラブだ。ちなみにペットボトルロケット・飛行機を飛ばす・飛行機に乗る・遊園地のアトラクション・バンジージャンプなどは規定外である。

ただその飛行クラブはまだ正式な部活ではなかった。部として認められるには部員5人と顧問が必要で、現在の部員は2人。部長は先生にも「一言で言えば変人」と言われる斉藤神(ジン)。そして副部長で樹絵里の好きな人である中村海星(かいせい)。とりあえず正式な部に昇格するため部員を集めた結果、仲居朋(るなるな)、餅田球児が入部する。

部員はとても珍名さんいらっしゃいである。
名前って、親からもらう最初のプレゼントであるけど箱の中に入ってるのは祝いあり呪いありだよね……
あとわたしは海月の母が好き過ぎる。

この「目からビーム」だって元をただせば母のウソ話なのである。小学校低学年の頃、テレビでドラゴンボールの再放送を見ていて、カメハメ波はホントに出せるかという話になった。すると母は真剣な面持ちで言ったのだ。
「うーん、カメハメ波はもともとの才能と大変な修行が必要だけど、目からビーム出すくらいなら、普通の人でも少し頑張ればできるんじゃないかな」と。

(P193)

爆笑した。おかあさんは名案を授けてくれるも、基本的にはボケの人(そして海月がツッコミの人)なのでとても面白い。

「くーちゃんはさ、<二人組>の怖さなんて知らないでしょ」

(P249)

もう見た瞬間にひやっとした。じゃ適当に二人組みになれー。
ふだんつるんでるのが3人とか5人とかだったらもう目も当てられない。

世の中で一番馬鹿な生き物は、中二男子なのだと聞いたことがある。銀魂で銀さんも言ってたし。
幸か不幸か私は中学に入るまで、中二男子と知り合いになる機会はなかった。だから、先の説(?)についても、そんなもんかなー、小学生男子だって充分馬鹿だよなーとか考えていた。
だけど確信した。やっぱり世界で一番馬鹿なのは中二男子だって。

(P110?P111)

七夕ペンタゴンは恋にむかない (ガガガ文庫 い 1-3)

豊かな自然以外の特色が無い田舎町である星無町では七夕にほぼ確実に雨が降る。
7/6がどんないい天気でも、天気予報が晴れを伝えても、7年に1回の晴れの七夕を除けば毎年雨が雨が降る。
七夕生まれは縁起がよいといわれるこの町で生まれた同い年同じ誕生日の幼馴染みの5人。
永遠に続くとおもった友情は、中学の時何も言わず転校していったあかりの帰還で変わり始めた。

本屋で見て衝動買いしてしまった。5人のなかでは橙が好きだヽ(゚д゚)ノ
幼馴染みの恋と友情は大好物です。

これを読んだ後短歌集のどうぞよろしくお願いしますが読みたくなってうごうご図書館へ。この本に収録されている

わけあってわけも言えずに消えました どうぞよろしくお願いします
とりあえずお友達からおわりましょう  どうぞよろしくお願いします

ここ2つの歌がとても七夕ペンタゴンだと連想したのだった。

パリ砂糖漬けの日々—ル・コルドン・ブルーで学んで

新聞社を辞めてパリに製菓留学した人のパリ滞在記。
パリでアパートを買ったりしているので最初はこのままずっとパリで暮らすのかと思ったら最終的には帰国して京都の町家暮らしをはじめる(らしい。賃貸契約を交わしたところでこの本は終わる

製菓留学といってもメインとなるのは日常生活なのでお菓子の写真が載っているとかレシピが載っているとかそういう方向ではない。筆者多田さんはル・コルドン・ブルーという創立110年の料理学校に入学した。

ダイヤモンドという意味の真ん丸いサブレ「ディヤマン」も習った。

(P100)

タラントゥカラットディアマンルゥゥゥジュ(゚д゚)!
レーヌ・ミシェルはピジョンブラッドのイメージが強いんだけど赤いダイヤなんだよなあ。赤色金剛石。
ピジョンブラッドの説明見てたらなおのことそう思う。

フランス人は思ってたより四角四面の上大ざっぱだった。紙命。

アインシュタインは早口で生徒全員に「あなたのフランス語の最終目標は」と聞き始めた。
 カスマンは「上司である医師の指示が理解できるようになること。今は私のフランス語が通じない」と答えた。「通じないのはあなたが弱気だからだろう」と教師が応じた。何気ない一言が緊張の糸を切ったのだろう。「ノン、私は内気なんかじゃない」と震える声が響いた。彼女は両手で口を覆い、涙ぐんだ。
 つられて私も涙ぐんだ。そう三十代。そこそこ経験だってある。でも言葉が足らない異国では半人前でしかない。通じないのは泣くほどせつないことなのだ。

(P83)

バベルの歌姫 ‐悪霊娘と落ちてきた恋人‐ (B’s‐LOG文庫)

ある日の会話 on twitter
わたし:そろそろ少女小説的に空から男の子が降ってくる話があってもいい (※ただしイケメンに限る)
さり  :それビズログにありましたよ
わたし:ナンダッテー!

という話の結果買ってきて読みました。
そんなわけで私の中では「バベルの歌姫」というより「空からイケメン」という名前で呼ばれてました。
親の借金返済のため村はずれで悪霊を育てながら一人暮らしているルシータはある夜、仕事の悪霊退治もせず女遊びにかまけていた空を翔る月騎士を見る。ルシータは届くわけないと思って憂さ晴らしをかねて矢を射掛ける。次の日畑を見てみれば重傷を負ったイケメンが。という。

ひとことでいうと変な話だった。
シンヒルドが苦手方面の自分が一番の俺様キャラだったので話の最初は相当きつかったんですが、後半はよいロマンでした。ホスト部の伽名月ちゃん(黒魔術部の人)をシリアス対応の主役にして、男にしたら多分シンヒルドに近い感じになるのでは……とちょっと思った。

ところで何で雨降らなかったんですか。

2巻が出たと聞くので、どうやって続けるんだろうと思ってAmazonであらすじを読んでみたところどうも「同じ世界観の別の話」のようだ……続刊予定ではこの二人も出てくるようだけど。

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