山梨県でとある事件が発生した。望月千草が自宅で脇腹を刺され死亡。死因は失血死。
はじめは自殺かと思われたが、家にいたはずの娘がキャッシュカード等とともに失踪しており包丁についた指紋や血液のついた衣服が捨てられていること等から警察は事件性が高いと判断し、重要参考人として望月チエミを指名手配した。チエミは地元企業で契約社員として勤め、職場や友人からは「真面目」と評され、死亡した母との仲は非常に良いものだと思われていた。
東京でライターとして活躍し結婚生活も手に入れた神宮司みずほは、幼馴染みであるチエミの足取りを追うべく学生時代の友人や元恋人や恩師を訪ねた。
なんかすごく2時間ドラマみたいな書き出しになってしまった……
「ラストに断崖絶壁でナイフを持った犯人ともつれあったり説得したり動機を語りあげたり」するような話ではありません。殺人事件をおこしたとされる幼なじみを探す話ですが主に語られるのは「母と娘」の物語。
わたしの周りは望月一家をもっと悪化させたようなおうちに住む女の子がいるのでとても生々しすぎた。読みながら「あああああ」ってなった。今までのあれこれを思い起こす。背筋がぞわっとする。自分に近いのは亜理紗6チエミ4かなあとおもう。恐ろしかったのはみずほの子ども時代だった。コーラ怖い。
赤ちゃんポストは一時期よく見てたのにそういえばとんと聞かなくなったなあと思ってぐぐったりした。
「あかちゃんに なにかのこしてあげて」にすごくせつなくなった。
第2章という扉が見えたところで小休止&コーヒーいれてきてぺらっとひらいてみたら見開きにぎゃっとなった。誰の視点なんだろうと思って読み始めてそのまま忘れてしまった第1章直前の3ページを、最後まで読んでからぺらっとひらいてなんとも言えない気分になった。
手紙を持つ手が震えていた。よく、そのままぐしゃぐしゃに潰してしまわなかったものだと思う。視界がグラグラ、煮え立つように揺れた。頭の位置が何も変わっていないのに、足元から下が震撼したように沈んで、過呼吸のような息が出た。空気を吐けるだけ吐き、だけど吸えなかった。
(P292)
家族だからと何かを許し、あきらめ、呑み込み、耐え、結びついた家。形は違っても、どこかみな共通に抱える病理のような。
どんな風に振舞っても、娘は許されず、母の望む正解は出せないのだと思っていた。だけど、正解を与えないのは私も一緒だ。私は母を許していない。それでも、彼女は一生、私の母だ。逃げられないし、逃げるつもりもない。一生、いい思い出も悪感情も、引きずりながら向き合わせて生きていく。(P298)
あわせてよみたい:「ファミリーポートレイト」と「野良女」かな。
ちなみに野良女は「女の語る下ネタ」に対して寛容な心が必要です。