カテゴリー「 単行本 」の記事

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原稿零枚日記

小川洋子の対談とかエッセイは読んでたけど小説を読むのはこれがはじめてかも。
タイトルは日記だけど中身は小説です。日記調の小説です。
乙一の小生物語よりはもうちょっと小説寄りで、紺野キリフキのキリハラキリコよりはもうちょっと現実寄り。
日記の書き手は小説家で「小説を読んであらすじを語る」のが上手で、長編の執筆に悩んでいる。
ようやく3枚ほど書いたかと思えば次の日にはそれを棄てる。毎回の日記の締めは(原稿零枚)
母の見舞いへ行き、運動会に侵入し、パーティに参加し、取材に出向き、毎回締めは(原稿零枚)なのである。

「どうもありがとうございました」
形だけお辞儀をして、編集者は部屋を出て行った。
いいか、お前の話を聞きたがっている人間などこの世に一人もいないのだ。付け上がるんじゃない。
取材の後必ず自分に言い聞かせる戒めを、今日も高らかに唱える。

(P33)

あなたに贈るキス (ミステリーYA!)

この世界にはソムノスフォビアという病気が存在する。
発病すると異常に眠ることを恐れ、脳炎高熱嘔吐その他様々な症状を起こし遅くても2ヶ月以内に死に至る。
致死率100%のその病は世界をパニックに陥れた。やがて直接唾液の触れ合うキスで感染することが判明し、現在はほとんどの国で唇をあわせるキスは違法行為として禁じられている。

全寮制の学園、純潔を尊ぶリセ・アルピュスではひとりの女生徒の死が波紋を呼んでいる。
彼女の死はあの病によるものだと。織絵が死んだ謎をめぐり美詩は学園を走ることになる。

織絵と美詩の関係がやばい。あの死の真相・ラストシーンはすげえ! と思いました。
美詩は恩田陸「麦の海に沈む果実」の理瀬っぽいよな。色んな意味で。

唇と唇が触れあえば、どんな気持ちになるのか知りたくなる。目を見交わすよりも情熱的で、手を繋ぐよりもきっとぞくぞくして、セックスほど即物的ではない感覚。

(P98)

やっちゃれ、やっちゃれ!—独立・土佐黒潮共和国

京都よりも遠いお隣、高知県を舞台にした小説。
住民投票の結果、高知県は日本から独立して黒潮共和国になった。
混乱の世の中老人達は意気揚々と林業や農業を再開し、若者は生活の急激な不便さに戸惑っている。
あれはどうするのかこれはどうするのかと悩みながら決めていく前半が好きだな。
ところでわたしはよっちょれよっちょれ派です。

高知が独立するまでに至ったのは、この沸きあがるような土佐人の力だ。
問題は、この力を維持しつづけていくことだ。智彦がいった通り、祭りはいつか終わる。人々は日々の暮らしに戻っていく。いってみれば、日々の地道な暮らしがあるからこそ、祭りの日のエネルギーとして発散される。祭りの力で独立を果たした後には、地道な暮らしが待っている。それをどのくらいの人々が認めることができるか。きっと、それがこれからの黒潮共和国の課題だ。

(P213)

ついてくる怪談 黒い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)

より怖いのは赤い本のほうなんだけど、怪奇現象がありありと起こっているのはこちらのほうだ。
テケテケさんは恒川光太郎の神家没落みたいだな。しかしP48はいいヤンデレ面をしている。

終わらない怪談 赤い本  (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)

装丁を語る。

右側に本のカバー、左側にデザインする時はこういうところをこのようにしましたというコメントだったり、こういう紙を使っています・こういう加工をしていますというデータが載っていました。

この前のダヴィンチとあわせて読みたい、という感じ。

ダ・ヴィンチ 2010年 08月号 [雑誌]

絶叫委員会

印象にのこったことばたちに書いてみようと思いますというエッセイ。
最初はちょっと短歌評みたいな硬めなのかなあとおもったらすごく笑える系だった。
身もふたもなくまとめると「穂村さん可愛いなあ」っていうかんじの。
私が好きなのは「OS」と「電車内の会話」である。好きだ。

書痴迷宮

倉庫で古本屋を営む北村古書店の客観察記録(※小説)

愛読積読印読猟読、本に魂を奪われている様々な人が出てきている。
3桁程度の積読を発生させたり定期的に本を買って趣味として月15冊以上読む辺りで結構少なくなる気はするのですが、twitter辺りでは珍しくもなんともない。ということで実在の人物が思い浮かぶ。
ちょーでるたんっぽいとかななきさんが怒り狂うとか。本読み的に自戒しつつ読み進めていくのが楽しい。

玄関から廊下へと壁の両側が天井まで本でいっぱいだ。三つある部屋も本が溢れている。どの本棚も二重に本が並べられている。ダイニングルームも本で埋められ、その隙間にテレビや冷蔵庫が隠れていた。テレビもあるが、ほとんど見ることはない。食卓の上も下も本でいっぱいなのだ。トイレの中も、風呂場の中にも本棚があり、本が並べられていた。これでは人間の住む空間はないといってよい。当然、所帯も持てない。嫁さんひとりでも、居場所はないのだった。

(P19)

終わらない怪談 赤い本  (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)

小学生のわたし(ゆかり)は引越ししたての家の屋根裏で「赤い本」という階段の本を見つけた。
1話から「なんか自分みたいだなあ」と思う女の子が描かれている。本を読むうちにだんだん本の中に描かれてるみたいな怪奇現象が身の回りで起こり始める……。

怪談が普通に怖い。なにこれこわい。
あとマヨナカテレビライクな七不思議があってときめいた。しかし4話は何重にもぞっとする。

「見たね」

(P206)

夢の中の少女—ひとり百物語怪談実話集 (幽BOOKS)

夏なので怪談が読みたい……そんな感じに借りてくる。
怪談と言ってもガチの恐怖話から虫の知らせ的スピリチュアル体験とかちょっと不思議な話とかいろいろ。
淡々とした語り口調でひとつの話はすごく短いけど、「さっきの話のひとの続き」があったりする。
五稜郭の話怖い。ていうか"みえるひと"というのは結構いるもんだな。
わたしは邪気眼的な「わたしって霊感あるの」みたいな人レベルでも会ったことがない。

夜行観覧車

前作よりもうちょっとライトに身近に。高級住宅地で起きたある殺人事件。
2つの家と1人の老婦人の話が交互に語られる。ラメポこと小島さと子のターンはすごい短いのになんであんなに強烈なのか。すごく生々しすぎる。身近すぎる。

とりあえず親が子どもをかばっているパターンじゃなくてよかった。坂道を転がり落ちるのはまさに刹那である。紙一重である。

彩花より明里のほうがウザく思える辺りが年があがってきた……ということなのだろうか。
高木俊介出演番組はヘキサゴンかな。どうなっとんねんがすごく島田紳助で再生された。

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