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User: minami_hato

お題:愛すべきわずらい 制限時間:15分

 じゃあオレの愛するハニーの話をしようか。
 ハニーはオレの2つ年下で作曲家だ。知ってるって? デビューしたてのころはずっとオレだけに曲を書いてよなんて言ってたけど、数年も経てばそうも言ってられなくなった。オファーが舞い込んできたのだ。愛する人が認められるっていうのは嬉しいことだ。オレがいうのもなんだけどハニーは才能にあふれてる。早乙女学園に入学したものの毎日レディたちと遊んで暮らしていたオレに食らいついて音楽の道に連れ込んだだけのことはある。だからこそ責任とってほしいじゃない? もうハニーの音楽なしには生きていられないんだって。
 もう1回言うけどオレのハニーは才能にあふれている。
 オレのことだけを見ていて欲しいって時も「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」って真っ赤になりながらも五線譜を手に取る。ひと段落つくまではオレのほうなんて見てもくれない。まあそういうところを含めて愛しているんだけど。
 ……ちょっとちゃんと聞いてるの聖川。え、もう飽きたって? まだ話したいことは山ほどあるんだよ。聞いてよ。

( お題:ナウい門 制限時間:15分 未完)

「オトヤ、これはどういう意味ですか」
セシルが指差した先には「ナウい門」と書かれた謎のメモが置かれていた。何かの走り書きのようだ。
「……? な、なう……よく分かんないけど昔っぽいことばだかられいちゃんのかなあ」
「ちょっとおとやんそれどういう意味!? 僕の語彙が古いっていうこと? やめてよね僕おとやんと7つしか変わらないんだから!」
パソコンに向かっていた嶺二は首だけを音也にむけてがあっと噛み付いた。
「だって考えてもみてよ。ここマスターコース寮だよ関係者以外立ち入らないんだよ。れいちゃんしか考えられないよ」
「ナウいとはどういう意味ですか」
「ざくざく酷っ。れいちゃん悲しい。あとセッシーはこれは覚えなくてもいいよ」
「れいちゃんのその言葉ってなんでそんななの? アイドルでしょ?」
「久しぶりに聞いたよそんな言葉って笑ってくれる人がいるからね。アイドルは人を笑顔にするのが仕事だからね」

( お題:斬新な雲 制限時間:15分 未完)

早乙女学園は1年限定の芸能専門学校とはいえある程度は普通の授業も存在する。美術のような芸術系科目もまたしかりだ。シャイニング早乙女の思い付きによってとんでもない実技に変貌することはままあるが、そこは早乙女学園の施設は整っているため大抵のことは学内で事がたりる。
「ん? イッチーはどうしたんだい?」
いつもは姿勢よく座って譜面や参考書を開いているトキヤが、背中に何か重たい荷物でも背負っているようにしてしょげかえっている。
そんなトキヤを横目にレンは翔に小声で話しかけた。
「この前美術の時間に写生大会だー! つって外に出ただろ? その時に描いた絵が……」
「ああ、イッチーの絵はシノミーの料理みたいな芸術的センスに溢れてるからね」
「……お前それあいつに言ってやるなよ。ただの追い討ちだから。それでその時描いた学園長の銅像が春歌に見られて」
翔の声はよりいっそう潜められる。2人で肩を寄せ合ってよりいっそう内緒話をしている様相になる。
「『……斬新なかたちな雲ですね』って言われたみたいで」
「ぶっ」
こらえ切れなかったらしいレンは大声を上げて笑い出す。それに気付いたトキヤは一歩一歩重く踏みしめながら2人の所に歩いてくる。
「お2人とも、何の話をされているのですか?」
「ちょっとトキヤ、顔怖いって。おいレンいつまでも爆笑していないでトキヤを止めろって」
その後次の授業がはじまるまで2人は延々と説教されたという。
人の弱点について触ってはいけないと思い知った日のことだ。

( お題:可愛い結婚 制限時間:15分 未完)

「結婚式、ですか」
「今度久しぶりに7人一緒にって仕事が結婚式で撮影なんですよぉ」
 ST☆RISHとしてデビューして数年経って、単独の仕事も増えた。7人一緒の仕事といえば今みたいに新曲関連の仕事か、月数回のテレビ収録のみとなった。那月は撮影に使うラフ画を春歌へ渡した。雑誌とCM同時に展開することになっており、CM版の音楽は春歌が作ることになっている。
「俺たち結婚とかまだ遠い話だけどなんだか予行演習みたいでどきどきするね」
「イッチーはこの前略奪愛のドラマをやってたね。花嫁を式場から攫うってどんな気分?」
「私に聞かなくてもあなたはいくらでも経験しているでしょう」
「酷いなあ。さすがにこっちから仕掛けたことはないんだよ?」

(お題:純白の魚 制限時間:15分 未完)

 白魚のような指、というのは果たして男に使う形容詞として正しいものかどうか分からないが真斗は綺麗な手をしているとよく評されている。色白で細いがピアノを弾くに適した大きめの男らしい手だ。去年は紺色の浴衣で子供の手を引いて花火大会へ行くCMが好評を博した。思えばこのCMも子供と繋いだ手がテレビに大写しになったのだ。その年の印象的なCMとして賞を受賞し真斗もまた授賞式に赴いた。
 神宮寺レンあたりに言わせれば「苦労を全く知らない手だね」とでも言い放ってそのまま喧嘩に流れ込む所だろう。普段は仲裁役として間に入りがちのレンは真斗相手となると急に大人気なくなる。トキヤは真斗の肩を持ちたがるしとなればこの2人の喧嘩を中立の立場で止められるのは最近では翔ぐらいとなった。

( お題:俺の村 制限時間:15分)

 俺の村には誰も住んでいない。何人か住んでいたこともあった。裏切ってどこかに行ってしまった。
 この人にはずっと住んでいてほしいと思ったこともあった。今はもう誰もいなくなった。
 ベース1本だけかついで宮城から出てきた。まったく芽が出なくて食うものにも困ってじいさんとばあさんが切り盛りしてる洋食屋ではかなり長い間世話になった。騙されそうになっていた所を俺が止めたことが何回かあるぐらい人を疑うことを知らない善人だった。
 シャイニング事務所に移籍してなんとか安定してきた所でバイトはやめた。しばらくしてくそめんどくさい後輩を2人ばかし押し付けられた。俺に因縁のある財閥の関係者だった。それが終われば今度は1年半もたって芽も出ない作曲家の卵、しかも女。
 指導なんか今度こそするつもりはなかった。俺が歌うのに相応しいロックを女が書けると思っていなかったからだ。なのにあいつはパセリのじいさんばあさんどもの上を行くバカだった。首輪でも付けて見える場所に置いておかないとこっちが不安になるレベルのだ。
 あんなふにゃふにゃしたなりであんな熱い音楽が流れてくるなんて本当に底が知れないやつだと思った。
  俺の村にはひとりの音楽家が住みついた。子犬か子猫みたいにじゃれ付いてくる。不思議と不快ではなく、誰かがいる生活というのは悪くない。そう思ったのは故郷を出て以来久しぶりのことだった。

(お題:寒いプレゼント 制限時間:15分 未完)

 雪でも降らねえかなあ、などと呟く程度には暑い日だった。今日は先輩が野外フェスに出演すると聞いて関係者パスを使って現地にやってきたのだった。当たり前だが野外フェスは暑い。フードタオルをかぶっていたがそれでもタオル越しに容赦なく肌を焼くほど太陽は猛威を振るっていた。
「それにしても暑いねえ! マイガール達元気~!?」
嶺二の声に女性ファンが歓声を上げる。
「負けてんじゃねえぞ男ども腹から声を出しやがれ!」
 対する蘭丸の声に野太い雄たけびがあがる。今はカルテットナイトでもなくシャイニング歌謡祭のコンビタイムだ。普段はあまり登場しない組み合わせに会場はさらに熱気を帯びている。
「ランラン暑いよね!? 僕がちょっと寒くなる話してあげよっか。この前タクシーに乗ったときに運ちゃんか聞いた話なんだけどね」
「そういうのは楽屋でやれ! くっだらねえ話してんじゃねえぞ」
「納涼プレゼントだよ~。ランランもしかして怖いのあとで肝試ししない?」
「この馬鹿はほっといて新曲だ」

(お題:愛と欲望の風邪 制限時間:15分)

 目の前がくらくらするなと思ったからためしに熱を測ったら38.5度って表示された。嫌だなあ、今日は翔ちゃんと春ちゃんと新曲の打ち合わせがあるんだけど。声を聞かせたほうが心配しそうだから翔ちゃんに今日は僕都合でごめんなさいってメールした。お薬飲んでお布団に入って寝てれば治るはず。ああ、冷蔵庫食べるものなにかあったかなあって思ってたらすっと意識が飛んでしまった。
 何かが触れた感じがして目が覚めると目の前に翔ちゃんがいてびっくりした。額に手を当てて熱を測っている。
「気分はどうだー?」
 そう尋ねてくる翔ちゃんに何も返せないでいると翔ちゃんは僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でていった。こういうところは翔ちゃん「お兄さん」なんだなって思った。僕より年下なのに。病気慣れしてる感じがする。
「俺が心配するとでも思ったんだろ。もっとさーいつもみたいに言ってこいよ調子狂うだろ」
へへって笑う翔ちゃんがなんだか眩しかった。
「僕、りんごが食べたいです」
「分かった。待ってろ」
「ピヨちゃんの形に切ってください」
「どうやれっていうんだよ! 小さく切るからそれで妥協しろ」

アルパカに乗ってやってきた。

 音也におんぷくん、那月にピヨちゃん、トキヤにペンギン。
 そして最近寿嶺二とセットにされる動物が増えた。アルパカだ。
 CMで脚光を浴びたことで日本ではようやく認知された動物で、どれが正解の顔なのか分からなくなるほど個体によって顔つきがまるで違う南米が原産の家畜だ。
「れいちゃんサンタできて嬉しいけど、なんでトナカイじゃなくてアルパカなの」
顔の下半分を覆い隠す白いひげをつけながら嶺二は何度目かの当然の疑問を呟いた。嶺二のブーイングはさておきアルパカは平和そうな表情を浮かべて時々「フェエエエ」と鳴いた。
「間抜けそうな顔がお前らしくていいじゃねえか」
「ランラン酷! そんなことを言う子のところにはサンタクロースは来ないんだからね! 後悔しても謝ってももう遅いんだから!」
 今日の収録はサンタクロースの格好をしてこのアルパカを連れてちびっこに夢と希望とプレゼントを渡すらしい。ちなみにこのアルパカもシャイニング事務所の動物タレントだ。元々はシャイング早乙女のペットだったという。
「ではアル君今日はよろしくお願いします」
 動物といえど共演者。嶺二はアルパカの背中を触って挨拶をして収録へと挑んだ。

放浪レン様

今日の封筒は一段とぶ厚い。あの男はこの調子で他のメンバーに送っているのかと思えば私以外には翔だけのようだった。とはいえ聖川さんには現地の写真つきポストカードと走り書きのメッセージが送られてくるというから差異が分からない。今日の消印はナポリ。まだイタリアにいるようだ。

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