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Tag: 春歌

音也で『新婚ごっこ』

「この前七海と翔と一緒にIKEAに行っててさ、ふたりは家具選んでて俺はソファに座って見てたんだけどなんかもう、このふたり一緒に住むんだなって感じ で、いいなって思ったよ」「羨ましいならあなたは軽率に写真を撮られていないでちゃんと探しなさい」「俺はいつも青い鳥を探してる気分だよ」

嶺二で『ずるい人』

寿先輩はとてもずるい人だと思う。場の雰囲気をよくする天才、人間関係をとりもつ潤滑油みたいな存在。いまだにデビューもできない鈍いわたしにも優しい。 というより誰でも平等に優しい。でもその優しさを壁にして万人を寄せ付けない。後輩ちゃんという呼び名も鎧のひとつだ。誰も特別扱いをされない。

( お題:斬新な雲 制限時間:15分 未完)

早乙女学園は1年限定の芸能専門学校とはいえある程度は普通の授業も存在する。美術のような芸術系科目もまたしかりだ。シャイニング早乙女の思い付きによってとんでもない実技に変貌することはままあるが、そこは早乙女学園の施設は整っているため大抵のことは学内で事がたりる。
「ん? イッチーはどうしたんだい?」
いつもは姿勢よく座って譜面や参考書を開いているトキヤが、背中に何か重たい荷物でも背負っているようにしてしょげかえっている。
そんなトキヤを横目にレンは翔に小声で話しかけた。
「この前美術の時間に写生大会だー! つって外に出ただろ? その時に描いた絵が……」
「ああ、イッチーの絵はシノミーの料理みたいな芸術的センスに溢れてるからね」
「……お前それあいつに言ってやるなよ。ただの追い討ちだから。それでその時描いた学園長の銅像が春歌に見られて」
翔の声はよりいっそう潜められる。2人で肩を寄せ合ってよりいっそう内緒話をしている様相になる。
「『……斬新なかたちな雲ですね』って言われたみたいで」
「ぶっ」
こらえ切れなかったらしいレンは大声を上げて笑い出す。それに気付いたトキヤは一歩一歩重く踏みしめながら2人の所に歩いてくる。
「お2人とも、何の話をされているのですか?」
「ちょっとトキヤ、顔怖いって。おいレンいつまでも爆笑していないでトキヤを止めろって」
その後次の授業がはじまるまで2人は延々と説教されたという。
人の弱点について触ってはいけないと思い知った日のことだ。

指輪、光る、手にする

体をひねってソファの背もたれの部分にあごを乗せて、甘えた声で呼びかけてくる。何ですか、と近寄ると指を突付かれた。
「指輪、つけてくれないの?」
「きらきらしてて見てるだけで、その、圧倒されて……」
「ハニーがつけてくれたらもっと綺麗だと思うよ」
期待に満ちた目がこちらを見つめてくる。

ランプ、テーブル、カトラリー

引越しに当たって家具を買い換えることにした。機能性だけで十分だからと特に選びもしなかった今まで違って何人がけだとか彼女が好きな食器だとかに目が行くようになった。「トキヤくん可愛いランプを見つけました、これの……」「君が好きそうなのはこれかこれではありませんか?」「当たりです!」

宅配、自転車、からあげ

現場で寿弁当が出る日は今日はいいことありそうだなって思う。栄養満点でとても美味しいから自転車で行ける範囲にお店があったら通っちゃいそうですと打ち合わせの時に言ったら寿先輩は嬉しそうにして
「嶺ちゃんプライベートデリバリーでいつでも出来立てを食べさせてあげるよん」
なんて顔を綻ばせた。

くじびき、行列、CD

「CDショップに行ったんです。そうしたらなんか行列が出来ていて……」
春歌の前にはブロマイドが数枚、ポスター数種類並んでいた。そういえばくじの景品になるよと聞いた覚えがある。
「どうせなら揃えたいなって思ったら後に引けなくなって」
「それで帰りの交通費も使ったのかい?ハニーは愉快だね」

焼肉、割り箸、野菜

「どうしたの後輩ちゃん。食べないの?」
春歌は割り箸を持ったまま蘭丸の鮮やかな肉捌きを眺めている。肉を網に乗せる、別の肉を返す、食べごろになった肉を皿に取る。ひたすらその繰り返しだ。
「嶺二のおごりだぞ」
「ちょっとランラン!」
「肉食わねえならせめて野菜食え。てめえの仕事の打ち上げだ」

「酔ってる翔ちゃんで翔春」いただきました-

「七海君そちらへ行っては……」
トキヤの制止も虚しく春歌はいきなり手を引かれ倒れこんだ。背中に手を回される感触がある。顔を上げるとよく見知った青い瞳があった。いつもより潤んでとろんとしているが、抱きしめる力はいつになく強いもので春歌は何が起こっているのかと困惑するばかりだった。
「しょ、しょ、うくんどう」
肩のすぐ近くに翔の顔がある。Tシャツから覗く首筋まで赤く染まっているのがはっきり見えるが春歌の心臓はそれどころではないぐらい早く打ち続けている。そんな至近距離で「俺があげた香水の匂いがする」などと呟かれ春歌はもう抵抗する力も失って翔にもたれかかった。
「今日は随分とおチビちゃんが積極的だねえ。またシノミーの仕業かい? 」
レンは翔の首筋に烏龍茶を突きつけると力が緩んだ隙にトキヤがふたりを離した。
「翔もそろそろ自分が飲めないことを知ればいいんです」
「それをイッチーが言う? 大丈夫かい子羊ちゃん。まだ何も飲んでないのに真っ赤だよ?」

*唐突に終わる

プリン、オムレツ、食卓

「で、卵尽くしとなったわけですか」
食卓にはオムレツをはじめ卵料理が多く並んでおり、冷蔵庫にはプリンもあるということだった。あまりにもしょげ返っている春歌を見てトキヤは思わず笑みをこぼした。
「驚いて卵を落とすなんて君らしいですが、もう少し呼ばれ慣れて欲しいですね? 一ノ瀬春歌さん」

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