「女による女のためのR-18文学賞」大賞作品。
全5話の連作短編で、斉藤卓巳君が中核なんだろうか。
この子のガールフレンド、一時期関係を持った主婦、友人、母などの視点で語られる。
1話が冒頭からちょっと引くレベルでえろい。なんたっていきなりどんである。
主婦がコミケでナンパした男子高校生に札つかませて脚本書いてそれにそってコスプレでピーなのである。
とりあえず本を閉じて1週間ぐらい寝かせて再度読み始める。性的な意味で結構えげつないのは最初の1話だけである。あと基本的には結構悲惨な話が多いです。無惨な事態さ。
「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はなんというか、気持ち悪い話だ。
ストーリーセラー2収録の有川浩のヒトモドキのような気持ち悪さ。こっちのほうがさらにえぐいとは思った。
1話で出た主婦視点の話。「あなたがもっとがんばらないからよ」って怖い。妊娠こえー。
こえーとおもってたらさらにこえー展開。なにこれやばい。
「セイタカアワダチソウの空」はうってかわって黒い。2035年が比較的あれだったのでとても黒い。
ハチクロのはぐとおばあちゃんの二人だけのおうちを思い出す。田岡さんが花丸つけてるシーンになぜかじーんときた。なんでもないワンシーンだけど、JR内だったのでこれはやばいと思ってそこで中断した。
この話はすごかった。この子が一番心配だ。
花粉・受粉は命が生まれてくる現場は凄い話だった。でもあの壷はだめだ。よくない。
学校の授業や、テレビでは絶対味わえない、いのちの出来事に、心を奪われてしまったのだ。初めてお産に立ち会ったとき、産婦さんの体から流れ出てくる羊水の温かさに感動した。こんなに温かくてやわらかな水の中でいのちが育ち、この世界に生まれ出てくる。その現場にいつもいたかった。
眠れなくても、食事が出来なくても、儲からなくても、お産の場所にいたかった。(P226)