日曜日のアイスが溶けるまで (小学館文庫)

なんかすごいものを読んだ感はある。
現実と幻想の境界を認識できていない類の言動を繰り返し言動にも以下略である。
26歳OL、彼氏とは3年目、自分のことは後回しにしがちであるという性格の京子が主人公です。

テレビでふと見た競馬中継で「10歳の時初恋の人と出会ったこと」を思い出す。訪れた競馬場にある児童公園で、京子は「思い出のままの10歳の初恋の人」と出会う。

「日々の雑事の疲れの中(主人公)はふと初恋の人を思いだす。色々あった末、思い出は思い出として私はここで頑張ろう」みたいな癒しと再生の物語では一切ありません。
あらすじほどロマンチックでもないです。現実離れはしていますが幻想的というには痛々しい感じがする。
どこか別の世界に引きずり込まれそうで、現実に戻ってこられておめでとうっていう風の。

思い出と虚構が徐々に現実を呑み込んでいくというか。
悲惨な過去があるわけではないのに過去を思い出したことにより緩やかに狂っていく過程というか。
ここ4行が断定形じゃなくてふわっとしてますが、作品がふわっとしているのでこうだ! とは言いにくい。

うっかり私まで呑まれそうになった。吸引力がすごい。