雨の塔

かつくらでみた時紹介に「大人のための少女小説」ってあったせいか「中高一貫教育の女子校からあがった」 という描写を見ているのに高校生ぐらいに脳内で設定して読んでいた。読んだ後読書メーターでみてはじめて気がついた。
登場人物は女ばかりですが、女子高的などろどろ感はないです。でもマリみてみたいなキャッキャウフフした話でもないです。あと百合百合で呼び方が基本苗字呼び捨て(珍しい)

岬にあるその全寮制の学校に入るには資産家なら簡単だ。
提携高校からの入学で戸籍上の性別が女ならあとはお金を積めば入試の必要なく入学でき、寄付を惜しまなければ4年後には好きな大学の卒業証書が手に入る。欲しい服やバッグや雑貨や食べ物はなんでも最新のものが手に入る。しかし情報と自由は規制されている。テレビや新聞や雑誌はなく携帯電話の電波は届かない。寮生のもとへ届く荷物は事務局に中身を確認されてから渡される。本州と陸続きのその島は普通の島より何倍も世間から遠い。

主な舞台となるのは3つある寮のうちもっとも海に近い塔。ランクは一番低いらしくしょぼい内装で2人部屋。そこに放り込まれ同室になった2組4人、矢咲・小津・三島・都岡の話。

頭から暑いお湯を浴びながら、矢咲は記憶の中に断片的に湧いてくる夢の続きを消そうとした。こんな遠くに来ているのに、思いの呪縛からは逃げられない。距離が離れることによって、その人の記憶も薄れれば良いのに。いくら忘れようとしても、どれだけ消そうとしても、思いは色濃く記憶に刻み込まれているため、ふとしたときにいきなりそれは現れる。

(P45)

なんで。腿の上でずっしり感じる重みに三島は思う。なんでお勉強なんかするの。どうせここに住む子たちはこれまでもこれからも同じ運命。勉強なんかしなくたって今までの学校にいることはできたし、この先も生きてゆけるし、生きていたくなくても、他人の手によって生かされる。

(P86)