何も持たず存在するということ

エッセイ。
新聞とかあっちこっちから収録されている。最古のものは5年前。
直木賞受賞の言葉とかも載っている。

食べたことのないものを口にして、おいしい、とびっくりするときと、うへえ、慣れなさ故に顔をしかめるときとある。本も全くおんなじで、思えば二十代の私は、なんでも口に入れ、合うものと合わないものを捜していたような気がする。それはつまり自分自身を知ることでもあった。みんながおいしいと口をそろえるものでも、私にはおいしくないことがある。誰も好んでは食べないゲテの域のものでも、食べずにはいられないものがある。ひどく個人的その嗜好を知っていくことは、自分自身と出会うことと同義なのだ。

(P157)