08少女小説系新人さんは豊作だったなあと思うので紹介エントリをたててみるなど!
赤き月が廻るころは2009年4月刊ですが刊行スケジュール上の話なので一緒にしてます。

・私が読んだ作品だけです(ので網羅はしてません。
・個人の主観によるものです(ランキングとかは考慮に入れてませんよ
・恋愛成分はあまり重視していません(重要!

いちおうおすすめ順に並んでます。
あと長いです(自分で書いておきながらちょっと引いた

迷走×プラネット 神尾アルミ /一迅社文庫アイリス

迷走×プラネット (一迅社文庫アイリス (か-02-01))

SFです(宇宙人が出ていればSFだと思うぐらいの発想。

宇宙最大規模の組織、銀河連盟から未開の惑星(つまり地球)の調査に訪れた第6調査団一行。
首都圏に辿り着くはずが機械の不具合で着陸したのは田んぼ広がる田舎。
迷子になった調査団員のノモロ(男)を探して団長ルカルタ(主人公・女)は地球に残った。
宇宙船は何者かに壊されており2人は迎えが来るまで学校生活を楽しむ方向に。

ルカルタとノモロは「ぱっと見地球人」。日本語読み書きは問題なし(ただし見るものすべてが珍しい)
運動能力がすごい!ていうだけで宇宙人ぽい感じはないです。
「日本人高校生と日本文化に不慣れで本能に忠実な異国人が友情を育む」のがほとんどで田植えをしてみたりアニメにはまってみたり。煽り文句が「ハイテンションコメディ」なこともありパートタイムナニーと方向的には似てるかも。
主には友情です。「報われない愛を一方的にルカルタに捧げるノモロ」とか「浴衣デート」とかありますが友情がメインです。

「普段少女向けとか手出さないんですけど……」ていう男性にもおすすめです。

鳥は星形の庭におりる 西東行/ホワイトハート

鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫—ホワイトハート)

聡明さゆえに孤立する貴族の少女プルーデンス(13歳)と胡散臭い名無しの吟遊詩人の話。
迷宮ファンタジーとか銘打たれてますが、ダンジョンに潜って財宝探ししたり魔物と戦ったりする方向ではありません。大人の陰謀に巻き込まれたり迷宮の謎に挑んだり、プルーデンスが黄金比の美しさについて語ったりします。

風と歌の島、亡き祖母の故郷アラニビカ島。
祖母の弔いのため訪れたプルーデンスとその家族一行+雇われ吟遊詩人。
島の中心部には「鳥の塔」と呼ばれるところがあり、最上階から水が流れ落ちている。プルーデンスが祖母から聞いた話では「まだ神様がこの世にいたころ、いつも土砂降りのところがあった。祖母の先祖は高い梯子を使い調べてみたところ、空の真ん中に泉が湧いていた。そこに塔を築いたら霊鳥ナサイアが塔の泉を訪れるようになった。先祖は霊鳥を驚かさないように塔の入り口をふさいだ」ということだ。
塔に入るには地下にあるという迷宮を通らなければならない。入り口もどこかに隠されている。

恋愛成分あまりなしですが、可愛げがないと周りから評される少女の心の動き・基本胡散臭いけどたまに真実をつく吟遊詩人・実在する古典名作の知恵の輪がモデルの辺りにときめく人に。

ルチア—クラシカルロマン  華宮らら/ルルル文庫

ルチア—クラシカルロマン (ルルル文庫)

ティエランカ王国は5年前に起きた戦争で打撃を受け今尚戦後の混迷期にある。国内ではリベルト・ミラーノ率いる「軍国派」とエリアス・レイ率いる「民主主義」派が政治的対立を深めていた。そんな中「民主主義」派を支持するティエランカ王国国王一家が乗る船でクーデターが勃発した。
首謀者は軍国主義者のミラーノで、ミラーノ率いる武装親衛隊と軍部が結託して船を襲撃したのだった。王女クエルヴァは父にいわれた黒いオイルの油田の場所を示す暗号を記憶し、万が一の場合はエリアス・レイに頼れと言われる。やがて父と弟は武装親衛隊に囚われ、クエルヴァは銃撃を受け海に落ちる。流れ着いたマナーニャ村でクエルヴァはルチアと名前を改めた。治療と情報を集めるためしばらくマナーニャ村で過ごしたがやがて武装親衛隊の捜索の手が回る。

少女小説の主人公は「元気・明るい・行動的・突っ走る傾向有(本能的にとか性格的にとか)」が多いですがこの作品の主人公は「内気さゆえの不器用・気の利いた喋りは苦手・機械が好き・ついたあだ名はだんまり姫」です。
暴走とは無縁ですが、華やかさにはちょっと欠けると思います。
あと恋愛方面は無縁なのでその辺を期待して読むと地雷踏みます。

舞台は一次世界大戦の後ぐらいがモデルだと思います。(5年前の戦争が起きた理由がとても第1次世界大戦なので)

「世界史好き・硬派ヒロイン・恋愛なしもいいよ」が好きな人に。

赤き月の廻るころ 紅蓮の王子と囚われの花嫁  岐川新/ビーンズ文庫

赤き月の廻るころ  紅蓮の王子と囚われの花嫁 (角川ビーンズ文庫)

ロクソン王国では魔術は異端のものとして嫌われている。
主人公レウリアに母から受け継がれた魔術師としての力が備わっていた。

母ナシュハは隣国ツァーリアの騎士の家系の魔術師だったが、側室として嫁ぐ際に力の媒介となる杖を捨てた。多少肩身は狭いが穏やかに過ごしていけるはずだった。しかし幼きレウリアは極当たり前にその力を使い精霊の声を聞き、不可思議な現象にレウリアの世話役は次々に辞め、レウリアが物心をつくころには「城には魔性の王女がいる」と密かに噂が城下にまで広まってしまった。

歴史を重んずる家臣や王妃や長兄はレウリアのことを嫌い対外行事に出さず、ナシュハは「南の魔女」として受け入れられてない。王は分け隔てなくレウリアも愛するためレウリアは何か父の役に立ちたかったが、政略結婚の道具にもならない自分ができることをするため、最近不穏な動きのある北の大国ブロウへ向かい潜入捜査をすることに。王の異母弟と婚礼を挙げるツァーリア国の姫イリーシャ付の侍女として王宮に上がった。

結婚か処刑かを迫られるのは色々あった後にです。
グランドラブロマンというほどラブでロマンな話ではないです。
王宮内の陰謀とかはあります。名前だけ登場とか登場人物が多いですが、話にがっつり絡んで来るのはレウリア+ブロウ3王子+クラウス・イリーシャ夫妻ぐらいです。
割と突っ込みどころはありますが、「好きだから気にならない」「なんかすごく気になる……!」のどっちかだと……

海のさいはて、天国の扉  相羽鈴/コバルト文庫

海のさいはて、天国の扉—ワケあり海賊と奴隷な幻獣姫の大冒険 (コバルト文庫)
サブタイトルが長いのでこっちに持ってきました。
サブタイトルは「ワケあり海賊と奴隷な幻獣姫の大冒険」
このタイトルで説明してしまってる感じがあります。

ストリートで数人で暮らしていた少女ランは地上げ屋に捕まって気がつけば奴隷市場。
売り出されていたところ海賊船の船長に買われる。
連れて行かれた海賊船ヴィクテ・イム・アロン号の乗組員はランを見て「呼子の海姫」が来たという。
海賊船の目的地は幻獣が住むといわれる「海の裏側」。そこへの道を作れるのは海色の瞳に針のアザをもつ乙女のみ。つまりランのことだった。

がっつり海賊です。海賊ですが、野郎ども戦え! 財宝を奪え! とアクティブに行く方向ではありません。ラブ方面はがっつりあります。海賊船乗組員の家がある島はある事情を抱えた一族が住んでおり「呼子の海姫」を探した理由が語られる。割とシリアスめな展開が続きます。
最後は変化球で来るのでちょっとびっくりしますが、ハッピーエンドです。初読のときはラストで「……」となったけど今ならこれもいい!とおもえる。

アルカトラズの聖夜—妄想少女と無口な少佐 彩本和希/コバルト文庫

アルカトラズの聖夜—妄想少女と無口な少佐 (コバルト文庫)

現代の普通の高校生の話です。
広い湾内に浮かぶ小島まるごとひとつが高校の敷地という海洋大付属高校。
島への交通手段は船のみ。定期連絡船は朝7時から夜9時まで運行されているが、授業がある日に早退して船に乗るには早退届が必要で、泳いで渡ることもできない。1度登校してしまえば脱出は不可能。
歴代の学生は皮肉を込めて学校のことを「アルカトラズ」と読んだ、という。

2編収録されており、表題作「アルカトラズの聖夜—妄想少女と無口な少佐」は短編。本の大部分を占めるのはその続編「アルカトラズの聖夜—妄想少女と美しき来訪者」
宮古(主人公女子・漫研所属・趣味:同じ学校の生徒で理想のカップル作成)はクリスマスイヴの夜に部室で寝過ごし定期連絡船の最終便を乗り逃してしまう。緊急時のホットラインはあるが、学年主任に連絡がいくし部活動にけちをつけられてはたまらないと宮古はそのまま学校で一晩過ごすことを決めた。(無口な少佐)

「美しき来訪者」のほうは多聞(長身×威圧的な雰囲気=あだ名は少佐。無口な少佐にて登場)を尋ねてやってきた美少女と一緒に暗号を解読して宝探し。

佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を 九月文/ビーンズ文庫

佐和山物語  あやかし屋敷で婚礼を (角川ビーンズ文庫)

江戸時代の最初の頃、今の滋賀県の辺りが舞台。ちなみに彦根城は絶賛建築中です。
10万石の大名、鳥居家のあこは藤原家の流れを汲む18万石の井伊家へ嫁ぐことに。
あこが12才のとき婚礼が決まり、話はとんとん拍子で進み翌年輿入れと決まったがふしぎと凶事が重なり3年で3回が中止になりあこは16歳になった。
婚礼が1回延期になるだけでも縁起が悪いのに2度3度続くと誰しもが「祟られているのではないか」と思った。日程に横槍が入るだけであこ自体に危害は及ばないので輿入れをせず、表向きは「京へ上る、その途中で婚家へ寄る」ということで極少数の家人を連れ井伊家へ向かった。

堅実に面白い。かといって長文感想を書いたり積極的に「面白いから読んでください」と他人に薦めるほど突き抜けた面白さはないというか。次に期待。

封印の女王 忠誠は恋の魔法 遠沢志希/ビーンズ文庫

封印の女王  忠誠は恋の魔法 (角川ビーンズ文庫)

アダリア国では代々王が国に魔獣が溢れ出さないように魔の世界に通じる門の封印となって存在している。そのため王が城から遠く離れることは許されないのだが、ある日クーデターが起き若き女王リーゼロッテは宰相の叔父の手引きで王都を追われることになった。

とりあえず1巻はリーゼロッテが自分で思っているより駄目な女王であることを思い知って奮起する話……だと思います。サブタイトルから連想するような恋の話ではないです。
あと登場人物紹介ではリーゼロッテはワガママ女王として紹介されてますが、箱入りの世間(主に庶民の生活)知らずのいい子ですよ。

完結していた受賞作を元に続きものにしたシリーズ第1巻というぐらい、伏線とか色んなものをばらまいて終わっています。長期的に見れば魅力的な作品になるのかもしれませんが、この本だけでは何とも言いがたいです。