詩羽のいる街

優しい物語だなー。連作短編。これよかったよ!
お金を持たず家も持たず暮らしている女の子がいる街がある。
詩羽は友達を作ってその人脈を生かして誰かと誰かを結びつけて誰かを幸せにしたり利益を生み出したりして、その対価としてごはんと宿を手に入れる。町猫みたいな子だなーと思った。いい善意の連鎖。

「明日美はね」詩羽は僕に向き直った。「その人にぴったり合った本を選ぶ名人なの。どんなリクエストにも的確に応えるのよ。あたしもずいぶんいろんな本を選んでもらったけど、はずれはほとんどない。いつもリクエストした本一冊、明日美のおすすめ本一冊、それに自分で選んだ本を一冊、借りることにしてるの」

(P52)

本のソムリエホシイヨー。

1章はとてもラノベのターンだった。
"先輩が長いうんちくを喋りだす。1巻は太宰治、4巻はオペラ座の怪人、5巻は宮沢賢治"
"フィギュアスケート" "タイトルに撲殺が入ってる" "学校の中を走り回るクラブの話"
あとレインツリーの国ネタもあったなあ。この辺は巻末の参考文献一覧にのってた。
ハルヒとからきすた(主にOPで踊りまくる方面で)とかニコ動を彷彿とさせる1シーンも。

「お前らみんな、ポトフになっちゃえーっ!!」のあたりの狂気さは異常だな。だがそれがいい!

作中に出てきた板ゲーがちょっと気になるんです面白そうなんです。
もし実在してて、持ってたら今度遊びに行ったときやらせてください>MAXI家
ちなみに↓こんなのだった。

ゲーム盤には、くねくねと曲がったコースと、観客席の絵が描かれている。コマはローマ時代の馬車だ。(略)スゴロクみたいにコースを三周する。ただし、サイコロじゃなく、数字を書いたカードを3枚持ち、そこから一枚出して進む。進めるのは前か斜め前だけで、横に動いたりバックはできない。他の人が止まっているマスは通過できない。カードは一枚使うたびに補充。一番大きいのは六のカードだけど、先頭を走っている時は六を出せない……

(P151)

ドイツ製らしいよ。

どれもよかったけどあえて選ぶなら「それ自身は変化することなく」「今、燃えている炎」がよかったー。