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夏コミのお知らせ通販やってます。

そういやこっちしか見てない人いるのかなあ(まあそんな人いないだろうなあ)と思いつつ思い出したように更新。

 

毎度おなじみのsoundeseaさんに表紙とか本文組むのとかやってもらったんですが、今回は自家通販もお願いしています。
夏コミ新刊だけじゃなく既刊もまるごと扱っていただいてます。地方在住だからコミケとかいけないけどほしいよっていう方はこちらをご利用ください。当日は 8ページのうたプリ(プリサマ)とスタバス(玲ちゃんと峻介先生)のペーパーも配布してましたが通販でもペーパー在庫限りはこちらもつけますとのこと。通 販ページはこちら→屋根裏の住人たち

音也で『新婚ごっこ』

「この前七海と翔と一緒にIKEAに行っててさ、ふたりは家具選んでて俺はソファに座って見てたんだけどなんかもう、このふたり一緒に住むんだなって感じ で、いいなって思ったよ」「羨ましいならあなたは軽率に写真を撮られていないでちゃんと探しなさい」「俺はいつも青い鳥を探してる気分だよ」

トキヤで『世界で一つだけの願い事』

「もう短冊に願い事を書く季節でもないと思いますが」「願い事は口にしたほうが叶うっていうでしょ」「私の願いならもう叶っていますから後は自力でなんと かします」「え」「私の願いは一ノ瀬トキヤとしてデビューすることでした。やりたいことはたくさんありますから一個ずつ達成していきますよ」

嶺二で『ずるい人』

寿先輩はとてもずるい人だと思う。場の雰囲気をよくする天才、人間関係をとりもつ潤滑油みたいな存在。いまだにデビューもできない鈍いわたしにも優しい。 というより誰でも平等に優しい。でもその優しさを壁にして万人を寄せ付けない。後輩ちゃんという呼び名も鎧のひとつだ。誰も特別扱いをされない。

嶺二で『神様なんていない』

ぼく初詣とかは行くけど神様の存在自体はあんまり信じてないかな。神が与えたもうた試練だとかはみんな自分が蒔いた種を収穫せざるを得ないわけなんです よっと。次の質問、一番一緒に仕事したい人は?名前は秘密だけどオファー来たら全力OKするのにまだ電話来ないんだよ待ってるよ。今度こそ出るから

メイキンブオブ鳩の巣

タイムラインに「小説のメイキング」っていうのが流れてきたので鳩もしてみんとす。こういうのはノリが大事だ。

日本戦は6月15日AM10時キックオフです。

 今日は音也とシャニスタの撮影だ。入り時間は午前の早い時間だったが、特に変わりなくトキヤはいつも通りの少し早めの時間で楽屋に到着した。ドアを開けると音也が既にメイクも済ませた状態でスタンバイしていた。トキヤは思わず腕時計とスマートフォンの両方で時計を確認した。間違いなく時計は合っている。
「あ、トキヤおはよー」
 最近買い換えたスマートフォンから顔を上げて音也は伸びをした。また画面に熱中していたのだろうか。音也はワールドカップが近づいてきた頃画面の大きなスマートフォンに買い換えた。ST☆RISHが揃う仕事などでは翔と2人でひとつのスマートフォンを持って体を寄せ合ってサッカー関連の動画をみているところをよく見る。
「どうしたんですか。まだ入りの時間にもなっていませんよ。いつもぎりぎりの音也にしては珍しい」
鞄をおいて撮影に向けて用意をしていると音也の鞄から青いユニフォームから飛び出した。
「じゃーーん」
「ああ、そういえば日本は今日でしたね」
「日本は今日でしたね、じゃないよトキヤ!! 何そのテンションの低さ! ワールドカップなんだよ4年に1度しかないんだよ」
「……あなたオリンピックもろくに見てなかったじゃないですか」
 いちいちトキヤの口まねまでするところがまた憎らしい。トキヤは思わず不機嫌そうな声色が口にでてしまった。
「見ていたのと言えば翔が見たいからって言ってたフィギュアを一緒に見ていたぐらいでしょう? そんな人が4年に1回の希少性を説いても説得力がありませんね」
「過ぎたことより未来を見ないとだめだよ。それでさあ、この撮影巻いて終わったら俺後半丸まるか前半の終わりぐらいから見られると思うんだよね。だからトキヤも早く準備してきてよ。今日はみんなで巻いていこうよ」
「……別に巻き進行に異論はありませんが、前半終わりからってどこでワールドカップ見るつもりなんですか。タクシーで移動するにしても音也の自宅はここからだと結構離れているのでは?」
降って沸いた疑問をそのまま音也にぶつけると1枚のチケットを見せた。
「渋谷のスポーツバー、今回は行列できるだろうから入場も整理券対応するって言ってたんだけど店長がいい人でさ、いっちゃんにならくれてやるぜってくれたんだよ~もう1枚あるからトキヤもいっしょに」
「あなた馬鹿ですか何度言ったらわかるんですか学習能力ないんですか」
音也が喋っているのを遮って思わず語気を荒くしてしまったが音也はどこ吹く風か意に介していない。
「大丈夫だよ俺変装していくし何回も行ったことあるけど意外とバレないんだよ? 皆サッカー見て応援するのに必死だしね。せっかくだから誰かと試合をみる喜びを分かち合いたいんだよー」
「あんな人ゴミの中に行ってバレないとでも思ってるんですか。ただでさえ試合終わりの興奮している人たちばかりの中で混乱を呼ぶのはやめなさい」
「そこまでいうんだったらトキヤんちで見せてくれる? トキヤんち近いしこの後時間あるでしょ?」
「私はサッカーのルールなんて詳しくないんですし……翔のほうがいいんじゃないですか?」
「それ行っていいってことだよね!? やった!」
 音也は立ち上がって両手を振り上げると快哉を叫んだ。
「トキヤ俺が遊ぼっていってもなかなかうんっていってくれないし珍しい! あ、翔はまた今度約束してるからいいよ。それにルールわからなくても大丈夫だよ俺が解説するし! 楽しみにしてていいよ!」
「私は場所を提供するだけですよ。別に解説なんていりません」
 早く行っておいでよと追い出されるようにしてトキヤは楽屋を出た。背中越しにワールドカップのテーマソングを歌い始める音也の声を聞いた。

那月と翔と万年筆

 誕生日がやってきた。
 0時ともに翔のスマートフォンは次々にメールを受信している。さっきまで薫と電話していたがその間もメールの着信を知らせる振動が多かった。薫は今電話しても大丈夫かという伺いのLINEが届いて大丈夫だと返事をするとものの5秒もしないうちにかかってきた。今年は大学が多忙で一緒に誕生日パーティができないからせめて1番にお祝いがしたいと言っていた。いつもなら那月を交えて3人で祝うが今年は久しぶりに那月と2人でパーティだ。カレンダーの6/9のところには大きく赤い丸がついてその下には「なつき 20時」という文字がピヨちゃんとともに躍っている。以前那月が来たときに自分で書いていった。
 翔はカレンダーを見ながら昔を思い出す。10年ぐらい前の、成人することは難しいかもしれないと聞かされていた自分はどれだけこの日を迎えられると信じていただろうか。いくら見ても今日は6月9日で20歳になってしまった。成人だ。
「もうちょっと嬉しいもんだと思ってたけど実感沸かねえもんだなあ……」
 いろんな人が誕生日を祝ってくれて嬉しい。でもそれはいわば毎年のことだ。今年はなんか劇的な変化があるのではないかと思っていたがどこにもそんな要素はなかった。とりあえず明日も仕事だ。今日よりはゆっくりめに出られるから助かる。届いたメールに返信をしてベッドに入った。

 今日のパーティの店は翔が選んだ。那月は普段から「いい匂いがしたから」とか「軒先にいた猫が可愛かった」とかで店を選ぶことが多くて、しかもその立ち寄る店のほとんどはスイーツ系ばかりだ。元々ジャンクフードが嫌いということもあるがふつうにごはんが食べられる所となると那月の手札は少ない。そこで店のセレクトは翔が担当することになった。「翔ちゃんが選んだ店ならたぶん美味しいと思う!」と全幅の信頼を寄せられ、そこまで期待されれば応えなくてはいけないと念入りにリサーチしたが結局よく行く半個室の洋食屋になった。誕生日プランはホールケーキを用意してくれるとのことでこれなら那月も喜ぶはずだ。翔は先に店にやってきて、 スマートフォンを触りながらぼんやりしていたら席を区切るロールカーテンがあげられ待ち人が到着した。
「翔ちゃんお待たせしました!」
「おお、お疲れー。撮影どうだった?」
「スムーズに進みましたよぉ。久しぶりだったからはじまるまではちょっと緊張したけどカメラマンの方はいつもの方だったのでリラックスして臨めました。公開していい時期になったら翔ちゃんには一番に見せるね。翔ちゃんは」
「俺はいつものラジオ番組の収録だけ。収録終わりでケーキが出てきてさ。聖川がわざわざ作って持ってきたんだってよ」
「ええ~僕も真斗くんのケーキ食べたかったです」
「すんげえ美味かったぞ。スタッフの皆で全部食べた。俺が一番苺が乗ってるところ切り分けてくれてさ。聖川のやつケーキまで作り始めて将来は店でも開くつもりか? って言われててさ」
 那月との話は大体いつも最近の仕事の話から始まる。だからお互いの仕事と今後についてはやたらとよく知っている状態になるがこれが音也に言わせると「那月と翔はいつでも仲がいいね」ということになるらしい。
 コース料理は進んで行きケーキまでたどりついたところでプレゼント交換となった。今年はいつもよりもいいものを選んだという自負があるのかリボン付の袋を手に那月は目を輝かせている。
「翔ちゃん、誕生日おめでとうございます!」
「誕生日おめでとう、那月」
 お互いの祝いの言葉とともにプレゼントが渡される。那月からのプレゼントは袋の割に思ったより軽い。中に入っている箱もスマートフォンより少し大きい程度だ。那月は時々手元を見ながら翔の動向を伺っている。餌を目の前にした犬のようで翔は思わず噴き出した。
「開けていいぞ」
 許可されて那月は包装紙を破らずテープのひとつひとつをそっと取った。包装紙はもっとびりびりに破いたっていいのにと言ったことがあったがそのときの那月は「この包装紙だって翔ちゃんからもらったものだから綺麗に置いておきたいんです」と言っていた。実際歴代の包装紙も那月の部屋で丁寧に保管されている。大きめの包装紙の中から出てきたのは那月が大好きな黄色いひよこだ。
「わぁ! この前出たピヨちゃんだ! 嬉しいな、まだお店に見にいけてなかったんですよ。思ってたよりしっかりしててお膝の上でぎゅうってするのにちょうどいいサイズですねえ翔ちゃんありがとう」
 新しいピヨちゃんぬいぐるみが出るというのは随分前に那月から聞かされていた。写真も幾度となく見せられていたが、スケジュール的には誕生日より前に那月が買いに行くことは出来ないだろうと分かっていたから今年のプレゼントは随分前に決まっていた。ぎゅうぎゅうと抱きしめながら笑顔でお礼を言われるとこちらまで心が暖かくなる。
「おう、じゃ今度は俺があけるぞ」
「今年は何にしようかなって悩んだんですけど、トキヤくんにも協力してもらいました」
「へぇ、いつも自分で決めてるのにトキヤって珍し……うお、すっげえ……」
 リボンを解いて箱を開けると中には柔らかそうな布が敷かれておりその上に筆記用具が置かれている。深い緑色をしている。ふつうのボールペンのようなものをかと思えば中が多少透けて見えるところから察するとこれはペンではなく万年筆だ。
「俺万年筆とかそういや持ったことねえな。トキヤのやつが使ってるところはよく見たよ」
 よく見ると軸の部分にはSHO KURUSUと書かれている。翔は万年筆を持つのは初めてだが、実際に持ってみると大きさと重さが手にしっくりとなじむことがわかった。ペン先を眺めたりくるりと手の中で回してみたりして思わずため息をついた。
「すっげえ……大人って感じするわ……。那月サンキューな。お前ってプレゼントのセンスは毎年すっげえいいよな」
「喜んでくれてよかった。20歳だからうんと特別なものがよくって、翔ちゃんはかわいくてかっこよくておしゃれさんだからそういうのがいいなって思って、何本かはトキヤくんに選んでもらってあとは僕が決めました。この子はパリの森の奥で職人さんが1本1本手作りしたんだって。子どもの頃を思い出したらこの子にしよう!って思ったんです」
 那月は腕の中のぬいぐるみを脇において翔の目をまっすぐに見つめて、とろけるような笑顔を浮かべた。
「20歳の誕生日おめでとう。生まれてくれて、僕と出会ってくれてありがとう翔ちゃん」
 今とても幸せだとばかりに目がきらきら光っている。好意を全身で伝えてくる那月を直視するには照れが勝って目を逸らす。
「なんだよ大げさなやつだな」
「大げさなんかじゃないですよぉ。生まれて来た時は元気じゃなかったかもしれないけど今の翔ちゃんは元気いっぱいで誰よりもキラキラしたアイドルさんで、僕の親友ですから。翔ちゃんと仲良くなれてよかったなあって僕は事あるたびに思ってますよぉ」
 翔は目の奥がじんわりと熱くなっていることが分かった。それでも顔を隠すための帽子は脱いで椅子の縁にかかっているし感情のままに流してしまうのもプライドが赦さず変に天井を見たまま話し始める。
「……俺さ、20歳になったらもっと嬉しいもんだと思ってたけどそんなこともなくって、変わんねえんだなって思ったけど、そうやって喜んでくれるやつがいてようやく実感わいたわ」
「翔ちゃんは自分が思ってるよりずっとずっと周りの人に愛されてるから明日もいっぱいおめでとうって言われるよ。今日もいっぱいメール来たでしょ?」
「おい那月、その辺で勘弁しろ俺もうすげえ泣きそうだから」
「ケーキが美味しくて泣いちゃったって言えばいいんですよ」
「その言い訳だれが信じるんだよ」
 翔が食べたそのショートケーキは甘かったはずなのに少し塩辛かった。


前日譚トキヤと那月と万年筆

6/2は裏切りの日です。

「TOKIには色々悪い事をしたね。あそこで警察に密告したのはオレだよ」
かつての仲間はまるで知らない表情をして銃をつきつけられても平然としている。
「一息に楽にしちゃってよ。今更抵抗なんてしないよ。できるでしょ? 」
喉から獣のような唸り声がひねり出される。震えた手が引き金にかかった。

-

「まさかあなたが気付くとは思いませんでしたよ」
シャツを赤く染めて荒い呼吸をしながらもパーフェクトダイヤは変わらず綺麗な顔をしていた。「妙に聡いくせに人を信じすぎる。一度懐に入ってしまえば偽装は用意でした。裏切り者は私、トリッキーハートを死の淵に追いやったのも私です。憎いですか」

-

「よかったよ。うちの姫様の情報何も知られてなくて。もうちょっとで殺さないといけないところだったかも」
はしゃいだ声の赤毛の忍者は地面に伏した黒服の傍でしゃがんで髪を掴んで無理やり顔を上げさせる。突然の痛みに男は顔を歪ませ呻いた。
「せっかく仲良くなったんだしね。またどっかで会おうね」

小料理屋聖川

 駅前から少し奥に入ったところにその店はあった。ここが料理屋だという主張は控えめなもので気付かなければそのまま素通りしてしまうかもしれない程度だった。夜になるとその提灯には自動で明かりが灯る。提灯には達筆な筆文字で「聖川」と書かれている。夕方からほんの数時間だけ開店する小料理屋だ。
 暖簾をくぐり障子のような木枠の引き戸を開けるとこじんまりとした店内が見渡せる。カウンター席と奥には座敷があるのだろうか。脱ぎ捨てられた靴と赤い座布団が見える。カウンターの内側には常連客のものと思しき札付きの一升瓶やボトルが並べられている。
「いらっしゃいませ」
 凛とした声が聞こえた。
 芸能界から退いても年老いても張りのある良い声だとトキヤは思った。かつては同じ学園に通い同じ時期にデビューをした同期だったが真斗は家業の都合である時期から少しずつ仕事を減らしていき最後に主演舞台とコンサートを行って芸能界を引退した。数十年前のことだ。去年真斗から一通の手紙が届いた。
「ご招待いただいていたのに伺うのが遅くなってすみません」
「来てくれるだけで十分嬉しいぞ。まあ座れ、いや今日はもう仕舞おう」
カウンターを抜けて真斗は暖簾を下げ表の提灯も消灯した。
「すみません」
「構わん。道楽でやっている店だ」
「でもあちらにはどなたかいらっしゃるのでは?」
「黒崎さんだ。ありがたいことにうちを贔屓にしてくださっている。今日は神宮寺も来ているのだ」
 黒崎と聞いてトキヤは思わず立ち上がって座敷のほうへ向いた。
「黒崎さんならご挨拶をしておかなければ」
「行かないでおいてくれ。黒崎さんは今ご息女の結婚が決まったから傷心なのだ。今神宮寺が絡まれ……慰……お相手をしている」
 制止されてトキヤはまた席に座りなおす。そういえば時々座敷のほうからは地を這ううめき声のような何かが聞こえてくる。あれは蘭丸の声なのか。
「レンは頼られると嬉しい人だからどんな目に遭ってもきっと本望でしょう」
「違いない。何か食べるか。いや料理屋でその質問は妙だな。品書きはそこにある。まあここに書いていないものでも作れるものはあるが」
 真斗が差した先には達筆な筆文字で書かれた「今日のおすすめ」がある。文字のかすれ具合からすると印刷ではなく頻繁なペースで書き直されているものではないかと思われる。一点に目がいってトキヤは思わず噴出した。
「なんだ。笑う所などないだろう?」
「すみません、この『今日の味噌汁』が懐かしくて」
「そうだろう? 俺が店をやるならば味噌汁は必ず毎日提供したいと思ってな」
「今日の味噌汁は何ですか?」
「今日は油揚げとわかめだな。油揚げから出る旨みが味噌と合わさっていい味を出している」
「若い頃に戻ったような気分です。ではお味噌汁と魚料理を何かお願いします」
こぼれる様な笑顔を落としてトキヤは注文を告げた。
「一ノ瀬は相変わらず小食なのだな。この前一十木が来た時は何でもいいから美味い肉! と言っていたぞ」
「あれと一緒にするのはやめてください」
「仲が良いのはよいことだ。準備するから少し待て」
「はい」
 カウンター越しに包丁が動く音がする。インスト曲も流れていない店内にはよくその音が響いた。

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