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askより:Twitter企画が終わって、一十木と一ノ瀬はどんな感じだと思いますか

 楽屋入りしてからというもの、音也は学生時代のようにペンケースを机の上において一生懸命何かを書いている。何か書き物の仕事にしてはペンが動いている先は何か厚いノート状のものだ。
「さっきから何を書いているのですか」
「俺の日記!できるまでは見ちゃ駄目だよ」
「別に見たいとは言っていません」
「えー」
 最後に赤いペンに持ち替えていつものおんぷくんを書いているところはトキヤの目にも見えた。それを最後にペンを置いて閉じた。表紙は真っ赤でペンホルダーはピンクだから配色的には女性をターゲットにしたカバーに見えたが、不思議と音也のために作られたもののように見えた。
「というかあなたのことだから3日坊主で終わるだろうと思っていたのにまだ続いてたんですね」
「へっへーん。これお正月に翔と買い物に行ったとき見かけてさ」
 透明なカバーの裏表紙側にはひまわりのポストカードが収められていた。いつかのロケで音也と一緒にいったひまわり畑での写真だ。
「マサの誕生日パーティがすごい印象的で、俺いっこしか違わないのに、誕生日で言ったら何ヶ月しか変わらないのに。俺もあんな風になれんのかなって」
音也の誕生日はもうすぐそこまで迫っている。12月の真斗と同じように節目の年を迎えるのだ。
「あなたは聖川さんとは全然違いますから別にそのままでもいいんじゃないですか」
「そうかな?で、さっきの話に戻るんだけど翔が今年は久しぶりに日記書こうかっていうから俺も俺もっていって、せっかくだからファンの皆の前で宣言したんだ。来年の1月の俺がこれ読んだらどんな気分かなあって思ったらちょっと楽しみかも」
「気の早い話ですね。というかあなたシャニスタの原稿早く提出しなさい。月宮さんがそろそろ怒りますよ」
「あっ」

Twitter企画終わって那月くんはどう思ってるでしょうか

 3月1日、21:00。
 昨日まではこのぐらいの時間はまだ劇場の楽屋にいたのに不思議な気分だ。今日はもう帰りの車の中で1日オフだった。今夜の藍は行く所があるというから昼間に翔と3人で打ち上げをかねてお茶会を開くことにした。マスターコース初期の懇親会をしたあのカフェでだ。藍はあの時みたいにシュークリームの皮を剥くことはなかったけど飲んだことのない紅茶を頼んでいた。
「ナツキが淹れた紅茶の味との差異が興味深い。大部分は同じ味がしているけどボクとしてはナツキが淹れていたほうが若干好ましいかな」
 藍はいつも一番に劇場に到着してよく外を眺めていた。それから那月が来て、大体嶺二が最後だった。準備が整って開演までの少しの時間は那月が紅茶を入れて、藍が「窓から見える景色」のうちいつもと違う箇所の話をして、それを聞いた嶺二が推理小説の探偵のようなことをするのがマスカレイドミラージュの楽屋の日常だった。
 外を眺めるのをやめてポケットから携帯を取り出した。迷わないようにと翔が待ち受け画面に作ってくれたショートカットを押すとこの4ヶ月間何度も眺めたtwitterの画面が開かれた。一番最新の呟きは昨日の日付のままだがリプライはこの瞬間にも届いていた。那月に向けられたことばはどれも暖かさに溢れていた。
「お前また携帯見てんの」
隣から眠気交じりの声がした。大あくびをして目を擦りながら那月のほうを見ている。
「翔ちゃん、まだ着かないし寝ててもいいよ」
「いやもう寝る気しねえな。まさか藍がスケートやりたいなんて言うなんてな。でもさすがに疲れた。まさかアイスダンスの飛ばされるほうまでやらされるとは思わなかった」
「翔ちゃん上手でしたよぉ。あいちゃんもちょっと手を繋いですべったらすぐに上達したしやっぱりあいちゃんは凄いですね」
「俺昔薫と一緒にスケートしてたことあったからちょっと自信あったけど、そういやお前北海道育ちだったよな……できるはずだった。んで、企画終わったししばらくこのアカウントを使うことは出来ねえけど、寂しいか?」
 那月の手の内を覗き込んでくる。携帯の小さな画面は昨日のパーティを遡って表示していた。
「そうだね、とっても楽しかったから。いろんなことがあったね。いろんなおはなしをしたよね。本当なら今日翔ちゃんとあいちゃんと3人でスケートしたこともみんなに言いたいけど」
しゅんと那月の眉が下がる。それを見た翔が那月の背中を優しく叩いた。
「ファンと話すっていう意味では俺より那月のほうがよく使ってたもんな」
「翔ちゃんはよく音也くんとそのまま話し込んでましたね。あとよく那月那月って呼んでくれてました」
「そんなに呼んでたつもりねえんだけど、ラーメンの時はレンとトキヤには突っ込まれた」
「忍者さんチームはいつもラーメン食べてましたもんね。僕も食べたいです」
「トキヤにはすんげ引かれたけどこの時間に食うラーメンすげえ美味いんだって」
「今度皆誘っていきましょうね」
「そうだな」
ふふ、と笑いあって名残惜しそうに画面を見つめると那月はtwitterの画面を閉じた。

askから。

これでも食べて大人しくしていろとか言われてチキン持たされてカミュ先輩に完全に犬扱いされつつ可愛がられる音也くんください

「カミュ先輩!」
「なんだ寿の所の愚民ではないか何の用だ」
「JOKER TRAPすげえかっこよかったです!」
「ふん。そのように演じているのだから当然だな」
「トキヤから時々楽屋でのことも聞きました! マイペースだけどとても尊敬できる先輩だって」
「指導者に似て騒々しいな。これでも食え」
「わあありがとう!」

最終日のジロウさんの呟きから
https://twitter.com/jjiroooo/status/439385139206819840

溶けかけた雪、チェーン、ストール

「イッチーって本当に運悪いよね」
強引に巻かれたストールで暖を取っている内に眠ってしまったトキヤを傍目に蜜柑を剥いてレンはカミュにも薦めた。那月が持ってくる物は甘くて美味しいと評判だ。
「雪との付き合い方を知らぬからそうなるのだ。滑って転ぶなど笑止千万」
「足にもチェーン巻ければね」

見積もり、くつ、お茶

「スタンド花このぐらいかかるって」
「へぇ思ってたより安いんだな」
「名前どうする?」
「おんぷくんとピヨちゃんから?」
「俺ピヨちゃんじゃねえし!」
「イッキとおチビちゃん、ここ一応土足と飲食禁止……へぇマスカレイドに花贈るの」
「俺たち2人とも先輩いるしね」
「那月も喜ぶだろうし」

2/8の東京は大雪でした。

 雪はまだ降り続いている。夜公演は中止にはならなかったものの交通機関は乱れたままだ。近隣のタクシー乗り場は行列ができておりタクシーを呼んだところで到底来そうにないと劇場スタッフに聞いた。しばらく待ってみたが状況は変わらなそうだ。トキヤの自宅はここから歩いて帰れない距離でもない。ジムに行ったと思うことにしようと帰り支度をはじめたところノックもなく楽屋のドアが開かれた。
「トキヤ! 今日泊めて!」
 赤い男が現れた。ダウンジャケットこそは黒いがヒップバッグや首筋にかかっているマフラーは赤で、これでもかとばかりに存在感を主張している。昼夜公演の上にあれだけ全力で雪合戦をしていたのにも関わらず疲労感を微塵も感じさせず音也はどかどかと楽屋の中に入り込んでトキヤの向かいの椅子に座った。
「……ノックぐらいしたらどうですか。他の方々は帰られましたが先輩しかいなかったらどうするつもりだったんです」
「あっごめんね。でも小道具さんがトキヤまだいるよって言ってたから。俺今日帰れそうにないんだよ。だからトキヤんちに泊めてよ」
 顔の前でぱんと手を合わせて殊勝な態度を見せている。音也ならこのまま楽屋に泊まるよ~とでも言うかと思っていたのに意外だった。
「寿さんに送ってもらうとか翔の家はどうなんですか」
「れいちゃんは次の仕事に行ったよ。まいらすの突発ロケなんだって。翔は今日那月んちに行く用があるからって言ってた。ねえトキヤ~」
「嫌です。この前の鍋の時もあなたはひとり深夜まで騒々しかったですし、私は今日は早く寝たいのです」
「むう」
 マフラーを巻きながら拒否の意を伝えると音也は机の上に肘をついて頬を膨らませた。じろりとトキヤを見上げてくる。
「そんな顔をしたって駄目なものは駄目です。あなたももうすぐ成人なのですからそんな子供っぽいことはやめなさい」
「だって俺まだみせいねーん。大体トキヤずるいし俺に厳しくない? 俺蘭丸先輩と仲良くなりたいのに昨日のトキヤ蘭丸先輩に超褒められてたしごはん誘っても断るのにマサとは4時間もってどういうことー。たまには俺のわがままも聞いてよー」
「黒崎さんは同じチームですから必然的に音也より過ごす時間は長いわけですし、音也が行こうという店はいつも焼肉かラーメンか、そんなのばかりじゃないですか」
 唇を尖らせてぶーぶー言う音也を見て、しばらくしてからトキヤはため息をつくと音也の隣に立ってその赤いマフラーを引っ張った。
「それに音也のわがままを何から何まで聞いていたら調子に乗るのでお断りします。ところで、……あなたこの前のうちに来た時忘れ物をしていたので取りに来なさい」
「じゃ行っていいんだね!? ありがとうトキヤ!」
「うちまでは歩きですから。それと着いたら軽く食べてすぐ寝ますから。話は聞きませんよ」
 先に楽屋のドアまでいくトキヤの背中に音也の声が飛び掛る。ついで慌てて椅子から立ち上がる音がした。
「じゃこれからしゃべる! いっぱい聞いてほしいことがあるんだ!」
 音也の退室を待ってトキヤは電気を消して楽屋を出た。


ここから考えました→https://twitter.com/jjiroooo/status/428947728970690560

ジムと音也と肉まん

「あなた最近目立ってますよ」「何が?」「翔と2人で腹筋勝負しているとか。今日ジムで少し噂を聞きました」「トキヤが教えてくれたとこ設備すごくて色々やってみたかったんだ。おかげで殺陣のシーンがちょっと楽に動けるようになったよ」「でもあんな時間に肉まんを食べては意味がありませんよ!」


――最近体力づくりのためジムに加入されたということで
俺は翔ほどじゃないけどやっぱりアクション多いしね。トキヤおすすめのところで週に何回か、時々翔も一緒に行ってるよ。でも翔ったら酷いんだよ。俺ほどほどのスピードでランニングマシーンで走ってたら速度3倍増しにして逃げるんだ。

お題:人妻の愛 制限時間:15分

 はじめはそう、ドラマでの出会いだった。それを見た翌日ふらりとCDショップへ行ったら握手会つきCDが一枚だけ残っていたのだ。あれが全部いけないんだ。
 
 イベントスペースで行われた「寿嶺二握手会」はずらりと長い行列を作った。ファンの年齢層はST☆RISHに比べれば少々高いのだろうか、でもところどころに制服を着た女子高生がいるから「幅広い年代に支持されている」というあれなのだろう。目の前の女子高生は両手で握手されたあと頭も撫でられていた。お兄さんキャラを通している。そして私の番がやってきた。
「こんにちは~」
至近距離で見る嶺二はテレビで見るよりずっとかっこいい。これで3枚目で売っているというのだからおかしい。でもあの芸人根性は間違いなくシャイニング事務所で培われたものだと思う。
「あの、この前のドラマみました! ホスト役って意外だなと思ったけど格好よかったです!」
「これからもれいちゃんの新境地をバンバン開拓していくから楽しみにしててねー。今日は来てくれてありがとうマイガール」
 音がするような見事なウィンクを決められた。旦那より年上なのになんて可愛い人だろう。
夢見がちなまま会場の外に出た。なんだか泣きそうだ。アイドル、やばい。開けてはいけない扉を開けたかもしれないと思った1日だった

お題:小説の中の14歳 制限時間:15分 未完

 今度遠距離恋愛のドラマに主演することになったというとトキヤはあなたにもそういうオファーが来るようになったのですか、と驚いたように言った。そんなわけで俺も久しぶりに学生服を着た。早乙女学園はブレザーだったから中学生の時以来だ。
 19歳、学生服を着るのはそろそろ許されないんじゃないかという年齢になったけどなんか変にしっくりくる。物語の舞台は名古屋で翔に名古屋の話を聞いたりして役作りをした。原作の小説は14歳だけどもうすこし年齢を上げて16歳っていうことになった。
 携帯電話がない時代、無敵なようでなにもかもが不自由な年齢の恋の物語。携帯電話がないってことは誰かに連絡するにも少し不自由があるっていうことだ。そういうのは14歳だったころの俺を思い出せばいい。俺が携帯を持ったのは早乙女学園に入学してからだ。14歳の俺は携帯をもっていなかった。施設には事務所には電話はあったけど自由に使える電話は公衆電話のみ。当然長電話なんてできないしする相手もいなかった。
 14歳だった俺が夢見たアイドルになって数年、少し前にようやくメンバーの皆に施設出身であることを話することができた。七海の迷子ぷりは本当にいつ見ても不思議で目が離せなくなるほどのものだけど、あの時は迷子になってくれてよかったと思う。いいきっかけになった。

お題:悔しい車 制限時間:15分

 免許所持の比率というのはさほど高くない。身の回りで言えばアイアイは未成年だしランランはガソリン代がもったいねーっていうし(でもランラン免許持ってるよね。車がないだけだよねぼくちん知ってんだからね。この前一通逆走したの忘れないからね)ミューちゃんにいたっては馬に乗る。まあ馬だって軽車両だしいいけど観光用に間違われるからやめてほしいよねー。
 車っていうのは1人になれる絶好の場所だ。信号待ちの間にさっきまでいた場所のことを思い出す。舌打ちして隠していた煙草を取り出して咥える。火をつければもう用済みだとぞんざいにライターを放り投げた。
「残念だけど」
 何が残念なものか。
 はじめから出来レースのオーディションだったくせに。僕を持ち上げといて選ぶつもりなんてこれっぽっちもなかったんだ。
 海へ向かうまっすぐな一本道でアクセルを踏み込む。事務所の力だけでヘタクソが仕事とりやがって面白くもない。

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