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2/8の東京は大雪でした。

 雪はまだ降り続いている。夜公演は中止にはならなかったものの交通機関は乱れたままだ。近隣のタクシー乗り場は行列ができておりタクシーを呼んだところで到底来そうにないと劇場スタッフに聞いた。しばらく待ってみたが状況は変わらなそうだ。トキヤの自宅はここから歩いて帰れない距離でもない。ジムに行ったと思うことにしようと帰り支度をはじめたところノックもなく楽屋のドアが開かれた。
「トキヤ! 今日泊めて!」
 赤い男が現れた。ダウンジャケットこそは黒いがヒップバッグや首筋にかかっているマフラーは赤で、これでもかとばかりに存在感を主張している。昼夜公演の上にあれだけ全力で雪合戦をしていたのにも関わらず疲労感を微塵も感じさせず音也はどかどかと楽屋の中に入り込んでトキヤの向かいの椅子に座った。
「……ノックぐらいしたらどうですか。他の方々は帰られましたが先輩しかいなかったらどうするつもりだったんです」
「あっごめんね。でも小道具さんがトキヤまだいるよって言ってたから。俺今日帰れそうにないんだよ。だからトキヤんちに泊めてよ」
 顔の前でぱんと手を合わせて殊勝な態度を見せている。音也ならこのまま楽屋に泊まるよ~とでも言うかと思っていたのに意外だった。
「寿さんに送ってもらうとか翔の家はどうなんですか」
「れいちゃんは次の仕事に行ったよ。まいらすの突発ロケなんだって。翔は今日那月んちに行く用があるからって言ってた。ねえトキヤ~」
「嫌です。この前の鍋の時もあなたはひとり深夜まで騒々しかったですし、私は今日は早く寝たいのです」
「むう」
 マフラーを巻きながら拒否の意を伝えると音也は机の上に肘をついて頬を膨らませた。じろりとトキヤを見上げてくる。
「そんな顔をしたって駄目なものは駄目です。あなたももうすぐ成人なのですからそんな子供っぽいことはやめなさい」
「だって俺まだみせいねーん。大体トキヤずるいし俺に厳しくない? 俺蘭丸先輩と仲良くなりたいのに昨日のトキヤ蘭丸先輩に超褒められてたしごはん誘っても断るのにマサとは4時間もってどういうことー。たまには俺のわがままも聞いてよー」
「黒崎さんは同じチームですから必然的に音也より過ごす時間は長いわけですし、音也が行こうという店はいつも焼肉かラーメンか、そんなのばかりじゃないですか」
 唇を尖らせてぶーぶー言う音也を見て、しばらくしてからトキヤはため息をつくと音也の隣に立ってその赤いマフラーを引っ張った。
「それに音也のわがままを何から何まで聞いていたら調子に乗るのでお断りします。ところで、……あなたこの前のうちに来た時忘れ物をしていたので取りに来なさい」
「じゃ行っていいんだね!? ありがとうトキヤ!」
「うちまでは歩きですから。それと着いたら軽く食べてすぐ寝ますから。話は聞きませんよ」
 先に楽屋のドアまでいくトキヤの背中に音也の声が飛び掛る。ついで慌てて椅子から立ち上がる音がした。
「じゃこれからしゃべる! いっぱい聞いてほしいことがあるんだ!」
 音也の退室を待ってトキヤは電気を消して楽屋を出た。


ここから考えました→https://twitter.com/jjiroooo/status/428947728970690560

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