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2014年03月

音也 『何を今更、』

「今更そこの確認からされるの!? 俺はトキヤが一番だって思ってたのに!」
 青天の霹靂だった。
あの写真を撮られ放題で来た音也が授かり婚ではなく穏やかに秘密裏に愛を育んで結婚するのだという。親友のトキヤにお願いがあるというから思わず私でいいのですかと聞き返してしまった。

那月で『若いときには無茶をしとけ』をお題にして140文字SSを書いてください。

直接の恩師ではありませんが日向せんせぇに「若いときの苦労は買ってでもしろ」と言われていました。幸い音楽の才能には恵まれていたのでそれを分かってもらう努力を頑張りました。僕は音楽を作るのが大好きなんですけど、それに色んな人の生活とか思いが乗るので純粋ではいられないこともありました。

貴方は那月で『なんて身勝手な願い』をお題にして140文字SSを書いてください。

「僕はもう触れることはできないけど幸せになってほしいなんて身勝手な願いだと思いませんか?」
美味しい紅茶が手に入ったからと呼ばれた先でそんな話をされた。
「いきなりなんだよ」
「今度好きな人とお別れする役をするんです」
「お前役柄にのめりこむタイプだもんな」
「難しいです。でも頑張ります」

貴方はトキヤで『幸せにはできないけれど』をお題にして140文字SSを書いてください。

思わぬ一言に絶句するトキヤなどお構いなしに音也は台本をめくっていく。徐々に表情が曇っていく様が見えた。
「トキヤんとこはなんか難しいね」
「私はあなたを幸せにすることはできませんでしたが行く先が光に溢れていますように、そんな未来が待っている話だと思いますよ」
「そうかな」
「そうですよ」

貴方は音也とトキヤで『甘えてよ』をお題にして140文字SSを書いてください

たまにはいいでしょいつものお礼だよ、と音也はドラマの台本を手に取った。
「トキヤは那月と共演なんだよね。俺はれいちゃんとだからすげー楽しみ」
「四ノ宮さんとはあまり一緒の現場になったことがありませんから少し緊張しています」
「トキヤって案外人見知りなところあるよね」
「なっ……!」

askより:Twitter企画が終わって、一十木と一ノ瀬はどんな感じだと思いますか

 楽屋入りしてからというもの、音也は学生時代のようにペンケースを机の上において一生懸命何かを書いている。何か書き物の仕事にしてはペンが動いている先は何か厚いノート状のものだ。
「さっきから何を書いているのですか」
「俺の日記!できるまでは見ちゃ駄目だよ」
「別に見たいとは言っていません」
「えー」
 最後に赤いペンに持ち替えていつものおんぷくんを書いているところはトキヤの目にも見えた。それを最後にペンを置いて閉じた。表紙は真っ赤でペンホルダーはピンクだから配色的には女性をターゲットにしたカバーに見えたが、不思議と音也のために作られたもののように見えた。
「というかあなたのことだから3日坊主で終わるだろうと思っていたのにまだ続いてたんですね」
「へっへーん。これお正月に翔と買い物に行ったとき見かけてさ」
 透明なカバーの裏表紙側にはひまわりのポストカードが収められていた。いつかのロケで音也と一緒にいったひまわり畑での写真だ。
「マサの誕生日パーティがすごい印象的で、俺いっこしか違わないのに、誕生日で言ったら何ヶ月しか変わらないのに。俺もあんな風になれんのかなって」
音也の誕生日はもうすぐそこまで迫っている。12月の真斗と同じように節目の年を迎えるのだ。
「あなたは聖川さんとは全然違いますから別にそのままでもいいんじゃないですか」
「そうかな?で、さっきの話に戻るんだけど翔が今年は久しぶりに日記書こうかっていうから俺も俺もっていって、せっかくだからファンの皆の前で宣言したんだ。来年の1月の俺がこれ読んだらどんな気分かなあって思ったらちょっと楽しみかも」
「気の早い話ですね。というかあなたシャニスタの原稿早く提出しなさい。月宮さんがそろそろ怒りますよ」
「あっ」

Twitter企画終わって那月くんはどう思ってるでしょうか

 3月1日、21:00。
 昨日まではこのぐらいの時間はまだ劇場の楽屋にいたのに不思議な気分だ。今日はもう帰りの車の中で1日オフだった。今夜の藍は行く所があるというから昼間に翔と3人で打ち上げをかねてお茶会を開くことにした。マスターコース初期の懇親会をしたあのカフェでだ。藍はあの時みたいにシュークリームの皮を剥くことはなかったけど飲んだことのない紅茶を頼んでいた。
「ナツキが淹れた紅茶の味との差異が興味深い。大部分は同じ味がしているけどボクとしてはナツキが淹れていたほうが若干好ましいかな」
 藍はいつも一番に劇場に到着してよく外を眺めていた。それから那月が来て、大体嶺二が最後だった。準備が整って開演までの少しの時間は那月が紅茶を入れて、藍が「窓から見える景色」のうちいつもと違う箇所の話をして、それを聞いた嶺二が推理小説の探偵のようなことをするのがマスカレイドミラージュの楽屋の日常だった。
 外を眺めるのをやめてポケットから携帯を取り出した。迷わないようにと翔が待ち受け画面に作ってくれたショートカットを押すとこの4ヶ月間何度も眺めたtwitterの画面が開かれた。一番最新の呟きは昨日の日付のままだがリプライはこの瞬間にも届いていた。那月に向けられたことばはどれも暖かさに溢れていた。
「お前また携帯見てんの」
隣から眠気交じりの声がした。大あくびをして目を擦りながら那月のほうを見ている。
「翔ちゃん、まだ着かないし寝ててもいいよ」
「いやもう寝る気しねえな。まさか藍がスケートやりたいなんて言うなんてな。でもさすがに疲れた。まさかアイスダンスの飛ばされるほうまでやらされるとは思わなかった」
「翔ちゃん上手でしたよぉ。あいちゃんもちょっと手を繋いですべったらすぐに上達したしやっぱりあいちゃんは凄いですね」
「俺昔薫と一緒にスケートしてたことあったからちょっと自信あったけど、そういやお前北海道育ちだったよな……できるはずだった。んで、企画終わったししばらくこのアカウントを使うことは出来ねえけど、寂しいか?」
 那月の手の内を覗き込んでくる。携帯の小さな画面は昨日のパーティを遡って表示していた。
「そうだね、とっても楽しかったから。いろんなことがあったね。いろんなおはなしをしたよね。本当なら今日翔ちゃんとあいちゃんと3人でスケートしたこともみんなに言いたいけど」
しゅんと那月の眉が下がる。それを見た翔が那月の背中を優しく叩いた。
「ファンと話すっていう意味では俺より那月のほうがよく使ってたもんな」
「翔ちゃんはよく音也くんとそのまま話し込んでましたね。あとよく那月那月って呼んでくれてました」
「そんなに呼んでたつもりねえんだけど、ラーメンの時はレンとトキヤには突っ込まれた」
「忍者さんチームはいつもラーメン食べてましたもんね。僕も食べたいです」
「トキヤにはすんげ引かれたけどこの時間に食うラーメンすげえ美味いんだって」
「今度皆誘っていきましょうね」
「そうだな」
ふふ、と笑いあって名残惜しそうに画面を見つめると那月はtwitterの画面を閉じた。

askから。

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