Entry

ミュージカル、チケット、ファイル

「公演もあと半分だねー」
「そんなことはいいからあたしの翔ちゃんコレクションを見てほしい」
「またファイルが違う」
「4冊目」
「えっ」
「4冊目。この前隣の席の赤い子と写真いっぱい交換してもらった。そっちも半券入れ凄いことになってんね」
「なっちゃん日によってダンスのステップが違うんだよ」

封筒、万年筆、文庫本

必需品、ですか。文庫本は必ず数冊入れています。仕事が一段落したときに読みます。今持っているのはカミュさんオススメのサスペンスです。あとはそうですね、いつでも手紙が書けるように便箋と封筒、万年筆を入れています。温故知新ロケでいただいたもので聖川さんとお揃いで気に入っています。

セール、カード、さいふ

「今日は僕がおごりますっていったのにごめんね」
「別にいいよ。セールで服色々買わせたしな。つかああいう小さい店じゃカード使えないから気をつけろよ」
「はーい。でも今日は翔ちゃんが音也くんとかと食べてるラーメンが食べられて嬉しかったです。美味しそうだなっていつも思ってたんですよ」

はなづまり、はちみつ、もうふ

鼻が詰まってすっかり声が変わってしまった。予防にあれほど飴を配って自分が風邪を引いてしまっては意味がない。毛布から手を伸ばして枕元のポカリを取って、ぼんやりと加湿器から上がっている蒸気を眺める。加湿器の音しかしない部屋は静かだ。先程まで音也と真斗がいた分余計に心細くなる。

料亭一ノ瀬

「昨日はビストロ一ノ瀬だったんだって?」
「なんですか藪から棒に」
「おとやんから聞いたよ〜? 昨日はカレーパーティだって?おとやんぶーぶー言ってたよ。翔たんとレンレンだけずるいって」
「音也なら今日来るそうですよ。それにカレーなのは翔が食べたいと言ったからです」 #料亭一ノ瀬

腹痛、ふとん、ゆたんぽ

「レンて湯たんぽなんか使うんだ」
音也は脱衣所の片隅に放置されたオレンジの湯たんぽを見つけて手に取った。
「聖川からだよ」
「マサから? 何でまた」
「全裸で寝ると腹を壊すから冬場だけでも布団を暖めて寝ろって」
「使ってるの?あったかい?」
「使ってるのは当の聖川本人とかおチビちゃんだよ」

小料理屋聖川

最近新しい店ができたと聞くな。料理人は一ノ瀬と似ているそうだぞ。健康志向の店だと聞くがそちらに行ったりしないのか。……なんだその顔は。別に来るなと言っているわけではない。 #小料理屋聖川

料亭一ノ瀬

「トッキー肉入るの肉入るの」「そんなに入れませんよ。そもそもうちにはササミしかありません」「そんな! 料亭一ノ瀬いい肉入れてんじゃないの〜?」「勝手に人の冷蔵庫開けないでください」「トキヤ何これ」「オリーブオイルです。劣化しますから出さないでください」

1/19のトキヤがすごい勢いで鈍器振りかざして殴りにきたので。

 今日も無事に幕が下りた。雪が降りそうなぐらい寒い日だったのにお客さんがいっぱい来てくれてて嬉しい。それよりも気になったのは今日はマサの声がいつもより通ってる気がしたことだ。幕が上がるまでは帰ってくるなんて行って、資料を持ってトキヤのところに行ってなかなか帰ってこなかったし。帰る準備を整えて鞄をもって出ようとしたらノックする音がして続いてれいちゃんが顔を出した。
「おとや~ん、今晩ヒマ?」
「え、うん。もう帰ってテレビでも見て寝るだけだけどどうしたの?」
「それがさあ、聞いて驚くことなかれ! トッキーがご飯に誘ってくれたんだよ!」
「えっ」
 思わず時計を見たけと間違いなく21時を過ぎていた。トキヤがこの時間にごはんを食べに行こうなんていうなんて。クリスマスの時だって一部は俺のお皿に帰って来たのに。
「おとやんも空いてたら一緒に言ってたから先にぼくちんが誘いに来たんだー」
「トキヤは? ていうかれいちゃん何食べてんの」
「休憩スペースで誰か知り合いと話し込んでてね、前通りかかったら呼び止められてさ。あ、その話してた人なんだけど目元がトッキーに似てたからもしかしたらお父さんだったりするのかな。翔たんとこもこの前お父さん来てたみたいだし?」
 言いながられいちゃんは青いラベルのついた透明なパッケージを差し出してきた。5cmぐらいの入れ物に飴がいっぱい入っている。
「おとやんはまだ舌がお子様だからな~この飴の美味しさが分かるかな~」
「あっこれ最近トキヤが流行らせてるってやつ?」
にやにや見てくるれいちゃんを見ながらひとつ口に入れてみる。すごい独特の味がする。ミントのガムよりもっと口の中がひんやりする。
「うえっ薬みたい。口の中がすーすーする」
「あーおとやんはやっぱりおとやんだなー。ハチミツ入ってるからそのうち甘くなるよ」
「トキヤってこんなのいつもなめてるの。でもトキヤの愛用品だし喉にはよさそう」
 楽屋の電気を消して歩きながらtwitterのアプリを開いて感想を書く。ついでに今日のみんなのツイートをさかのぼる。マサは7並べをしてて遅かったみたいだ。マサもこの飴食べたのかな。美味しかったのかなと思いながら遠くのほうで「おじさん」というぐらいの年齢の人と別れるトキヤを見かけた。
 こちらへ向かってくる「おじさん」とすれ違い様に顔を見たけどれいちゃんの言うとおり確かにトキヤと顔が似ていた。これがあの夜トキヤが喋っていたトキヤのお父さんなんだな。
「れいちゃんはここで待ってて。俺トキヤのとこ行ってくる」
トキヤが角を曲がったのを見てから俺は廊下をダッシュした。
「トーキヤ!」
後ろから走っていってトキヤの背中に勢いよくどんとぶつかる。トキヤは2,3歩ふらついてからこちらを振り返ってくる。
「何をするんですか危ない人ですね」
口では文句を言いながらいつになく嬉しそうで満足げな顔をしている。肩越しにトキヤの手に持った博多の住所が書かれた紙袋の中を覗き見る。中には本とか包装された袋とか色々入っていた。
「なんですかへらへらして気持ち悪い」
「トキヤがごはんなんて珍しいなって思って」
「外食はしませんよ……父が来ていまして、鍋のセットをもらいました。ひとりでは食べられませんから。父からも先輩の方やお友達と食べなさいと言ってまして」
「お友達」
「そこあえて復唱するところですか?」
口が滑ったのか妙に早口で言い返してくるトキヤが面白くて笑ってしまった。
「トキヤのごはん久しぶりだなー。駐車場のれいちゃんの車で待ってるから早くして!」
「わかりました」
 トキヤの声すごいはずんでる。嬉しかったんだろうな。今日の日記はこのトキヤとごはんのことについて書こう。

えさ、なげる、帽子

クリスマスの時に観劇に来ていた四ノ宮は餌を目の前にした犬みたいだったぞ。それかフリスビーを投げられた犬だな。あんなに喜ばれればこちらも甲斐があるというものだ。来栖は来栖で四ノ宮の劇を力を入れて見ていてな、よく助言していたダンスシーンが終わると帽子を握る手が緩んでほっとしていたぞ。

Pagination