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Category: 即興小説/ワンライ

(お題:寒いプレゼント 制限時間:15分 未完)

 雪でも降らねえかなあ、などと呟く程度には暑い日だった。今日は先輩が野外フェスに出演すると聞いて関係者パスを使って現地にやってきたのだった。当たり前だが野外フェスは暑い。フードタオルをかぶっていたがそれでもタオル越しに容赦なく肌を焼くほど太陽は猛威を振るっていた。
「それにしても暑いねえ! マイガール達元気~!?」
嶺二の声に女性ファンが歓声を上げる。
「負けてんじゃねえぞ男ども腹から声を出しやがれ!」
 対する蘭丸の声に野太い雄たけびがあがる。今はカルテットナイトでもなくシャイニング歌謡祭のコンビタイムだ。普段はあまり登場しない組み合わせに会場はさらに熱気を帯びている。
「ランラン暑いよね!? 僕がちょっと寒くなる話してあげよっか。この前タクシーに乗ったときに運ちゃんか聞いた話なんだけどね」
「そういうのは楽屋でやれ! くっだらねえ話してんじゃねえぞ」
「納涼プレゼントだよ~。ランランもしかして怖いのあとで肝試ししない?」
「この馬鹿はほっといて新曲だ」

(お題:愛と欲望の風邪 制限時間:15分)

 目の前がくらくらするなと思ったからためしに熱を測ったら38.5度って表示された。嫌だなあ、今日は翔ちゃんと春ちゃんと新曲の打ち合わせがあるんだけど。声を聞かせたほうが心配しそうだから翔ちゃんに今日は僕都合でごめんなさいってメールした。お薬飲んでお布団に入って寝てれば治るはず。ああ、冷蔵庫食べるものなにかあったかなあって思ってたらすっと意識が飛んでしまった。
 何かが触れた感じがして目が覚めると目の前に翔ちゃんがいてびっくりした。額に手を当てて熱を測っている。
「気分はどうだー?」
 そう尋ねてくる翔ちゃんに何も返せないでいると翔ちゃんは僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でていった。こういうところは翔ちゃん「お兄さん」なんだなって思った。僕より年下なのに。病気慣れしてる感じがする。
「俺が心配するとでも思ったんだろ。もっとさーいつもみたいに言ってこいよ調子狂うだろ」
へへって笑う翔ちゃんがなんだか眩しかった。
「僕、りんごが食べたいです」
「分かった。待ってろ」
「ピヨちゃんの形に切ってください」
「どうやれっていうんだよ! 小さく切るからそれで妥協しろ」

アルパカに乗ってやってきた。

 音也におんぷくん、那月にピヨちゃん、トキヤにペンギン。
 そして最近寿嶺二とセットにされる動物が増えた。アルパカだ。
 CMで脚光を浴びたことで日本ではようやく認知された動物で、どれが正解の顔なのか分からなくなるほど個体によって顔つきがまるで違う南米が原産の家畜だ。
「れいちゃんサンタできて嬉しいけど、なんでトナカイじゃなくてアルパカなの」
顔の下半分を覆い隠す白いひげをつけながら嶺二は何度目かの当然の疑問を呟いた。嶺二のブーイングはさておきアルパカは平和そうな表情を浮かべて時々「フェエエエ」と鳴いた。
「間抜けそうな顔がお前らしくていいじゃねえか」
「ランラン酷! そんなことを言う子のところにはサンタクロースは来ないんだからね! 後悔しても謝ってももう遅いんだから!」
 今日の収録はサンタクロースの格好をしてこのアルパカを連れてちびっこに夢と希望とプレゼントを渡すらしい。ちなみにこのアルパカもシャイニング事務所の動物タレントだ。元々はシャイング早乙女のペットだったという。
「ではアル君今日はよろしくお願いします」
 動物といえど共演者。嶺二はアルパカの背中を触って挨拶をして収録へと挑んだ。

24日が待てません。  お題:弱い冬 制限時間:15分 未完

毎年のクリスマスイヴのシャイニング事務所恒例行事といえばST★RISHコンサートに決まっている。まだメンバーに18歳未満が多いことからカウントダウンコンサートは開催できないためイヴに前倒されている。この日のために集まるST★RISHファンの気合といえば尋常ではない。比較的大きな会場が選ばれるものの24日限り、映像化なしの幻の一夜のために屍はあとを絶たない。
 この日のためにアカウントを貸してくださいと方々に頭を下げ各種プレオーダーに申し込んで祈るばかり。行けない者は妄想を具現化してtwitter上でエアコンサート会場を作り出す。
 去年は那月と翔は自分の楽器を持ち出してクリスマスソングを演奏してレンと真斗が仲良く赤鼻のトナカイを歌うという通常ではまず見られないような曲ばかりである。

適切な距離を保ちましょう:番外 お題:大人のにおい 制限時間:15分

子どものときに分からなかったものがある。うちは親が世界中飛び回っていたし俺は入退院を繰り返すことも多かったから見た回数はそんなに多いものではなかったけど。
 酔っ払っている親、それから酒臭いというあれだ。

 祝・酒合法となってから俺は音也と飲む機会が増えた。音也は新しいおもちゃを使う権利を得たこどものようにメニューに書いてある酒(といってもまだまだ初心者の俺らは日本酒とかハードルが高そうなものは飲まない)をあれこれ注文している。時々はレンとか那月とかもやってきてああだこうだと美味い酒を飲ませてくれるのはありがたいけど那月のやつは限度というものを知らない。そもそも俺は20歳になる前に1度那月にそうと知らされずワインを盛られた。うちの両親どもはヨーロッパでの生活が長いせいかワインの瓶がよく転がっていたのを覚えていたけど、飲まされたのは甘いものだったから余計に気がつくのが遅れたんだった。

24日が待てません。  お題:弱い冬 制限時間:15分 未完

今年は3ヶ月前の予想とはうって変わって暖冬なのだという。屋外に出ても頬が切れるような寒さを感じることは今年は例年より少ない気がする。
「冬なのになんだか暖かくて変な感じがします」
 目の前にいる那月はセーターにマフラーを巻いただけでそこら辺にいる高校生みたいだ。北海道育ちというだけでこんなにも体感温度に差がつくものだろうか。俺は買ったばかりのマフラーに顔を埋めて那月を目だけでちらりと見上げる。
「お前そんな薄着で寒くねえのかよ」
「僕? 僕はいつもこんな感じだけど。翔ちゃんはもこもこしていて羊さんみたいですねえ。可愛い!」
 帽子の上から撫でてくる手を振り払ってスマートフォンを取り出す。表示された先はtwitterだ。まだアカウントはできていないが、もうすぐしたらシャイニング事務所所属アイドル公式アカウントが作成されるはずだ。クリスマス限定の1日の夢を提供しようというものらしい。
社長から言われたのは適宜呟くこととフォローは各自のタイミングでやること、ファンとのふれあいは構わないが節度は守ること、写真を公開する場合は映りこんではいけないものが移らないように気をつけることなどがあげられていた。
「おい那月、お前事務所企画どうすんの」

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