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女神と棺の手帳 (角川ビーンズ文庫)

軍事国家ウェスハバートで大学へ進学し初の女医を目指しているケイトの前から親友のイライザが消えた。
イライザをもう一度探してみようと街中を歩いている時謎の集団に襲われ、「イライザ・オースティンはどこだ」と詰問される。それより少し前の時間、南部基地司令室には「ケイト・エドモンドに危険が迫っている」というイライザからの電話がかかっていた。
イライザの恋人が握っていた軍の不祥事がびっしりと書き込まれた「棺の手帳」を巡る物語。
恋人亡き今手帳はイライザが持っていると目され、革命派は彼女の行方を追っている。イライザに最後に会ったケイトはこれからも巻き込まれることを知らされ、ケイトはイライザを探したいこともあり軍と協力することになった。

ケイトと協力することになったのは先の大戦での「英雄」イーノット率いる部隊で、「人の手助けをしよう」と言う方針のため、「ゆるい」というとちょっと違うんですがケイトに対して友好的。
雰囲気はなんか懐かしい感じで、光炎のウィザードとか割とおなじ箱に入ってる。

読み終わった後帯裏を見たら「もどかしい恋模様」ってあって、え、そんなのあった……? とおもう。
いやあとがきにも恋は外せないってあったからなあ。その辺は「ある程度の好感度は最初からもたれていることが多い」という認識なので。いやでも軍服と銃は萌えです。
内容はライトで読みやすい感じ。綺麗にまとまっているんじゃないかと思います。

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出

2011年3月11日、一人旅の最中にJR常盤線新地駅で被災。
被災時の5日間とその後2回にわたる福島訪問のルポ。

仙台からいわきに移動する最中に地震は起きた。被災した駅の500m向こうはもう海。
津波が町を飲み込んでいくのもみている。16時過ぎに福島原発で爆発の報が防災無線で流れ、一度は誤報とされるもニュース速報で福島原発で爆発のニュースが流れる。「情報は制御されている」の一文に震える。

散策路を上って町を見渡せる広場へ辿りつくと、五キロほど先だろうか、青い林の切れ目から甘い色をした穏やかな海が見えた。海面に特に異常は見つけられない。高台の足元からのどかな町並みが広がり、海の近くは平野になっている。
はじめはなにも気がつかなかった。景色を見ながら、弟さんが言った。
「本当は、ここから海は見えなかったんだ。防風林に完全に隠れていた。それに林の手前には、住宅地があった。もう、なにもないな」

(P26)

3月13日の話である。

水が怖い、土が怖い、子どもの将来が心配だ。引っ越しても、子供がいじめを受けるのではないか。うちのお米も、野菜も、美味しかったんだ! なのにもう、今までのようには贈っても喜んで貰えない。自分でも、今までとおなじ気持ちでは食べられない。こんな、雪のように降り積もる悲しみを、どう購えるというのだろう。

(P104)

1年半ほど前に現実にあって今も続いている話。120ページほどの本で淡々としていてすごく身近に感じられる。西日本で地震もたいしてない地域の住人ながら立地的に「明日は我が身」と寝つきの悪かった夜を思い出す。

神殺しのリュシア (f-Clan文庫)

国に恩恵をもたらす竜が消えて7年。
栄華を誇るクラウス国を陥落しユークス大陸をふたたびユド神国の、ひいては竜の支配下におけば竜は蘇りこの国は再び豊かになると信じられていた。そうして戦争が始まったが敗色は濃い。また一段と冬が早くなり、休戦となった。リュシアは戦いに勝てば竜が蘇ると信じ18歳にしては幼く、しかも死なない体で傭兵として戦場にいた。

リュシアはこれでよく狂わないなっていう。強いことは強い、でも痛覚はちゃんとあるし手酷い死に方をする。
でも死なない。死ねない。自分の意思とは無関係に理不尽な道を行く冬の旅路。
そういう話です。
楽園までが好きならあるいは、という感じ。
色々詰まっています。

シャイターンの花嫁 魔眼の王子と囚われの巫女姫 (一迅社文庫アイリス)

続きでたねえシャイターンの花嫁2巻。表紙見てアイシャ巨乳だなあと思ったのが第1印象です。
結婚が間近に迫ったアイシャとカファスと平和を取り戻したカダル王国。
栗原作品内では結構かなり甘めでいちゃいちゃしているんですがそう簡単には事は進ませないぜ、的な。
カファスは小学生男子。
ナーギは不憫可愛い。ナーギみたいな子最近読んだな思ったらようこそ、古城ホテルへのヘンリーちゃん。不憫な犬。

なんとなく、撫でろ、と言われているような気がして、アイシャは片手で少女の体を抱き、もう片方の手で狼の眉間辺りを撫でてやる。

(P162)

この犬っぷり(好き

記憶を奪われてからのそれとしらずの再会はもえる。よいもえのかたまりでした。

そういえば最近は挿絵に言及することがめっきり減ったんですが、この本は最初の挿絵がかなり引いてて、主人公以外の全身っていうのは珍しい気がする。漫画内の1ページみたいだなと思いました。あと183ページのアイシャはハイプリ カファスはアサシン。1ここはモロクか。

  1. わたしの結川カズノさんの出会いはROアンソロでした。 []

うたう鳥のよる〜千夜一夜に巫女は舞う〜 (一迅社文庫アイリス)

合法ロリとArk握ってる人1と女装男子がハーレムでアルトネリコ。この間違ってないけど合ってない感。
成長が止まった少女がヤンデレで美形で変態と出会う話です。常識人で不憫な人も出てきます。
もうちょっとまともになった。

詩が力を持つ世界。シエラは18歳になったが8歳の時に成長が止まったままどこかへ嫁入りもできず、売れもしない活版印刷の本を作り続ける父の代わりに古書修復業で家計を支えていた。せめて本を材料ぐらいは潤沢に使いたいとぼやいていたら知らぬ詩が聞こえてきた。シエラは数万にわたる全界詩を記憶しているがこんなのは聞いたことがない。やがて現れたのは無駄に綺麗な男だった。触って欲しい名前をつけて欲しいと、いまいち人の話が聞けない男はシエラにランプを渡し「また逢おう」と言い残し消えた。

嫁いですぐ帰らぬ人となった従妹を追うためランプの精の力でシエラはハレムに潜入する。
ハーレムですが、寵愛を奪い合う展開ではありません(2つに別れたハレムのうち王のいない旧ハレムのため)
シエラはめぐりあわせ2と全界詩のおかげでハレムの主イアマールの袖下として働くことになった。

知ってるけど私詩とか詠唱とかすごい好きだからドツボなわけですよ。物語合わせとか好きなんですよ。

「さあさあ皆様この物語は奇跡の話、信じられない天変地異と奇々怪々の夢噺。ですが続きはまた明日。紡ぎ紡がれ永久に終わらぬ夜ごと夜ごとの語り草< <千と一夜の物語>>」

(P164)

こういうの好きなんですよ。なのでシェヘラザードはようやく来るべきものがきたとおもった。語る人であり触る人。

詩が綺麗で元はハーフィズ詩集ということな野でこれは触れてみるべきだと思った。

ハーフィズ詩集 (東洋文庫 299)

割とこう、オープンで、あとフェチいですね。ぼーぼーでめりっ。あと蒸し風呂と柘榴と膝裏の汗と内腿。
オブラードはまじ万能。
珍しく残念キャラのアランじゃなくてリヤーフが好きなんだけどシャーザマンとリヤーフのシーン。
あそこからの数ページが好きで。あとP143はもっと踏まれるべき。

  1. Ark握ってる人は1:ヤンデレ 2:ナイフ握ってる人 3:狂信者の意です。元ネタはArk Sound Horizon - 歌詞タイム []
  2. 「ここで働かせてください」で千と千尋を連想した []

14f症候群

14歳の女子中学生は無敵だという短編集。
既読のふりして3年ぐらい本棚に刺さっていたのをようやく読んだ。1話とかはリアルタイムで野性時代で読んでたなあ。

病気の話だ。微熱が出たり関節が痛んだりする日々が続くけど病院にいっても異常はない成長期でしょうと告げられる。彼女らは効能がよくわからない紅白のカプセルを内服していた。それから9日間、不思議な症状が起きる。
昨日までは女だったのに男になっていたりする。ささやかながらあった胸もまったいらになり声変わりもしてナニもついている。そういう感じの短編を含んだある女子グループの話である。

4話の「独占」がすごい好きなのだ。簡単に言うと停滞百合である。女王様と従者。

けれどあたしたちの均衡は崩れた。あたしと七美がこれまで互いを等しく必要としていたのは間違いないが、あたしたちは自分たちで思っていたよりもずっと危うい、ぎりぎりのバランスでもって左右の端に乗っていたのだ。それぞれの持ち物ががちょっと変わったらそのバランスはあっけなく片方に傾いた。

(P209)

ほかの短編は男女間で、これだけちょっと色が違う。少女同士はなんか妖しくて綺麗でどろっとしている。

マグダラで眠れ (電撃文庫)

眠らない錬金術師クースラと白い修道女フェネシスの物語。

錬金術師は身分は不安定でいつも生死の綱渡りをしているようなもので、多くは職人として立派にやっていけるものが多い。それでも茨の道を行くのは夢と好奇心が抑えられないからだ。人は錬金術師が見ている「その先の世界」をマグダラの地と呼んだ。

何度目かの死罪を言い渡されて助かってきたクースラはおなじ錬金術師のウェランドとともに前戦の街グルベッティの工房へ送られた。戦場近くの工房はクースラ達のような素行不良の錬金術師が配置される場所ではない。前任者のトーマスは不可解な死を遂げており後任者をほいほい連れてこられない。しかし鉄の生産量を上げる必要はある。というわけで捨て駒状態の2人の配置で、監視役としてフェネシスが配置された。

途中で失地回復運動とか出てきて、わたしの脳内では \ 父祖の地をとりもーどせー /とか侵略する者される者が流れてきおった。ああいう感じの時代で1読めばいいのかと思いつつ読む。マグダラの地は約束の地で再生される。
錬金術ですが、地味っていうとあれですがなんか胡散臭さよりも地面に足がついている感じがして、「異教徒」にときめいているあたり本当にSH脳。SH脳スイッチ入ってるから登場時のフェネシスのBGMはあきらかにArkだった。この職務に忠実さ。外見からインデックスだと思ったらホロだった
おもしろかった。

  1. レコンキスタは好きさがあまって資料をあたったりもした。 []

サマーサイダー

幼い頃は三浦誉と倉田ミズは恵悠の子分だった。
3人の関係は緊張感をもったものになったり子分ではなくなったり形を変えつつも高校になった今も続いている。
廃校になった中学校に残った備品の整理に最後の世代がかりだされ、最終的に残ったのは誉と悠とミズの3人。
3人が過ごした教室は卒業式の雰囲気をまだ残していた。2次会の出席や落書きが残された黒板を見ているとクラスメイトの声が聞こえてきそうなものの、室内は蝉時雨で満たされている。
干からびて花瓶に貼り付いた花が教壇に置かれていた。夏の日に教員宿舎で変死体として発見された担任に手向けられた花だ。3人の中学校の時の担任は「僕は蝉の幼虫なんだ」と蝉に傾倒した佐野青春という変わり者だった。

夏が来るまで寝かせてた。夏の福井が舞台の青春ホラー。
2人の少年と1人の少女(幼馴染み) 廃校になった母校 秘密 異形
といういつもの壁井さんです。ホラーはホラーなんですが、日常が侵食される系の?
鳥篭荘よりもうちょっと現実味がある感じ。いや鳥篭荘も大概ホラー要素があると思うんですが。

章扉がイラスト表紙なんですが、象徴っていうか暗喩っていうか。4章……! っていう。
あの時奥にあったのが「変死体」として処理されたアオハルの抜け殻なんだろうなあ

ラストシーンは脳内で再生するぐらいでちょうどいい。これが忠実に映像化されようものならガチホラーすぎて夏は外に出れなくなる。「ぱー……ぱ?」はやばい。あのながれであれはやばい。ゾクッとするなあ。

「いかにきれいな抜け殻を見つけるか」に重点を置いていた頃はあっても蝉爆弾に出くわしたことはないんだよなあ。フィクションあれだけ鳴いてるのに。隣の人の声が聞こえないぐらい鳴いてるのに。タイミングの問題か「ミンミンゼミは関西には生息してない」みたいなものか。

双界幻幽伝 初恋は永遠不滅! (ビーズログ文庫)

「双界の瞳」の真髄が知りたければ昏星に来よという張宝の誘いにいつものごとく蒼刻に連れ出された朧月。
最近の蒼刻による躾の結果「引きこもり」から「出不精」に進化したというがまあ「帰りたい」は変わらない。
昏星はただでさえ閉鎖的な町であるためふたりは新婚夫婦のふりをして「子宝祈願」のため訪れたという設定である。表紙のドヤ顔もそうですが恋に自覚的に動いている蒼刻はもう本当に爆発するといい。周りの温かい目もそろそろやばい。「さわりたい」という欲がやばい。ばくはつしろ。
ここ見せ場ですよっていうシーンじゃなくても何気なく触れているシーンに私は転がる一方です。

花宵の人形師  あるじ様は今日も不機嫌 (角川ビーンズ文庫)

姉の人形を直してもらおうと訪れた人形工房であかねは貴重なアンティークドールをなぎ倒し負った負債実に3000万。
家を離れて仕送りをもらいつつバイトもしての生活で、借金返済に充てられるのは実に5000円が限界である。
少しでも返済に充てるために人形工房に引越しとなる。

ビーンズでは珍しいガチ現代ものである。
全体的にダウナーなキャラが多くて、スロースターターな気配があちこちにある1
たとえば「ひとつ屋根の下の恋物語」という煽りですがいずれそうなるのかな? という感じです2

あとあかねの兄がシスコンポジションで出てくるんですが、何かこの人が気味が悪い。
正気ぶってるヤンデレみたいな。危ないラインは超えてるけどそれを認識していないのが気持ち悪い。
もうちょっとおさえめにするかもっと歪むか突き抜ければいいのに! とおもった。

  1. 好意的な解釈である。話の種を巻いてる感があちらこちらにあるので []
  2. 正味1巻だけではそのアオリはないわと思う []
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