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出版社小説。
週刊誌から文芸へ行きたかった佳孝の異動先はローティーン向けファッション誌「ピピン」編集部だった。
苗字が「新見」ということで南吉と呼ばれ、ピピンは同系列他紙と比べてダントツの売り上げを誇るが、佳孝はなにがいいのかまったくわからないままの船出となった。
最初は企画とか対象年齢とかがわからないゆえの壁にぶち当たる話とかあったけど段々ティーンズモデルの話になったような。広告会社とかモデルになるための壁とかオーディションとか。
これはなんかリンクしてたやつがあったと思うのでそっちも読んでみたい。
「その特別って、幸せなんでしょうか。数年間の特殊な経験のために、支払う代償は大きいってことですよね。延々とかなわぬ望みを持ち続けてしまう」
(P273)
電子書籍なんて駄目だ本は「本」というかたちだからいい。嵩張ろうが重かろうがこの形を愛している、というひとはもれなく読むといいと思います。
1話を見る限りではちょっとドジなOLカミオさんが失敗したがゆえに知ることのできた「サエズリ図書館」という場所と、本を巡るちょっといい話 という感じなのですが、話が進むにつれてこの世界を取り巻く環境は生易しいものじゃねえぞというのがわかっていきます。
この世界は電子書籍が当たり前になっていて、「本」というものがいかに貴重で高価な嗜好品になっているか、そういう中で貸し出しカードを作れば誰でも無料で一定期間本を借りられる「サエズリ図書館」というのがいかに異様な場所か。本のことならなんでも来いな司書ワルツさんかと思えばこの図書館は全部わたしのものたくさん亡くなったんだからひとりひとりのことはどうでもいいって、もうひとりぐらい死んでもいいって思えますか?っていえるワルツさんまじぱねえとおもった。
「わしは毎日本を読むがね、娘はわしの本好きを、贅沢趣味だと渋い顔をしたし、端末映像やデータのほうが万倍面白いと、何度も言ったよ。それは正しいんだろうと、わしも思う」
続いて落ちた呟きは、悔いのようであったし、諦めのようでもあった。
「行き過ぎた執心は病だ」(P37)
わたしの周りは病んでる人が多すぎる。
神島桐子編完結っていつからのことだと思ったらそういうことかと思ったクダン下巻。
家のこととか喧嘩を売られたからとかそういうのじゃなくて「妙子を助ける」ということで動いてるから桐子マジヒーローな感じ。「友情」を理解する桐子まじ女の子していてかわいい。
時代はこれから暗闇に突入するしキャンバス文庫のあれ的に二人の未来もあれなんですが、いい話だった。
しみじみと幸せなんやなっていってる聖もなんかじーんとするし、お前が誰よりも幸せになればいいと思ったっていってる逸人もいい。
今回から「王女のたまご」編。大丈夫だろうか1
帝国の皇子アルシェイドとおなじ顔をしているということで密偵容疑で拘束されるスメラギ。
シリスの手によるもので、スメラギの出自はいずれ明らかにしなければならないことでこの手を打ったということだ。
アルシェイドは王女シエラを自国の正妻的扱いをするということで婚礼を求めてきた。
最初に戻るんですが、私的にこれはシリスが幸せになって、スメラギがもうちょっと幸せになったらそれでいいという点である。
- わたしビーンズの○○編というものにあまりいい印象を持っていなくて、いつぞやのシュガーアップルの時も書いたけどあまりにも脱落しているので最後まで見届けられるかなあというのを考えるのです。終わるのは終わるので嫌だけど脱落するのもするのでねえなかなかねえ。 [↩]
鮎川さんの新作。なかなかカオスです。
最初20ページぐらい読んで「突っ込んだら負け」という雰囲気がありありと。
「雪ノ下家に生まれたからにはひとつの分野を極めよ」というのが家訓である。遥が極めようとしているのはゲーム。引きこもって日々ゲームをして暮らしている。人は彼女のことを「優雅な引きこもり」と呼ぶ。
各方面に名前を馳せているゲームプレイヤーに送られた1通のメール。
島を一つ買い取ってゲーム用にあつらえた環境で行われる「ヴィエルジュ・ヘルツ」に参加した8人のゆくえは!
少女向けで楽園島からの脱出です。
各界のゲーム廃ですが社交性溢れる美少年美少女です。序盤は突飛の塊ですが割とベタなところもあります。
もっとがつっと死んでもよかったんじゃと思う辺り私が黒い。
軍事国家ウェスハバートで大学へ進学し初の女医を目指しているケイトの前から親友のイライザが消えた。
イライザをもう一度探してみようと街中を歩いている時謎の集団に襲われ、「イライザ・オースティンはどこだ」と詰問される。それより少し前の時間、南部基地司令室には「ケイト・エドモンドに危険が迫っている」というイライザからの電話がかかっていた。
イライザの恋人が握っていた軍の不祥事がびっしりと書き込まれた「棺の手帳」を巡る物語。
恋人亡き今手帳はイライザが持っていると目され、革命派は彼女の行方を追っている。イライザに最後に会ったケイトはこれからも巻き込まれることを知らされ、ケイトはイライザを探したいこともあり軍と協力することになった。
ケイトと協力することになったのは先の大戦での「英雄」イーノット率いる部隊で、「人の手助けをしよう」と言う方針のため、「ゆるい」というとちょっと違うんですがケイトに対して友好的。
雰囲気はなんか懐かしい感じで、光炎のウィザードとか割とおなじ箱に入ってる。
読み終わった後帯裏を見たら「もどかしい恋模様」ってあって、え、そんなのあった……? とおもう。
いやあとがきにも恋は外せないってあったからなあ。その辺は「ある程度の好感度は最初からもたれていることが多い」という認識なので。いやでも軍服と銃は萌えです。
内容はライトで読みやすい感じ。綺麗にまとまっているんじゃないかと思います。
2011年3月11日、一人旅の最中にJR常盤線新地駅で被災。
被災時の5日間とその後2回にわたる福島訪問のルポ。
仙台からいわきに移動する最中に地震は起きた。被災した駅の500m向こうはもう海。
津波が町を飲み込んでいくのもみている。16時過ぎに福島原発で爆発の報が防災無線で流れ、一度は誤報とされるもニュース速報で福島原発で爆発のニュースが流れる。「情報は制御されている」の一文に震える。
散策路を上って町を見渡せる広場へ辿りつくと、五キロほど先だろうか、青い林の切れ目から甘い色をした穏やかな海が見えた。海面に特に異常は見つけられない。高台の足元からのどかな町並みが広がり、海の近くは平野になっている。
はじめはなにも気がつかなかった。景色を見ながら、弟さんが言った。
「本当は、ここから海は見えなかったんだ。防風林に完全に隠れていた。それに林の手前には、住宅地があった。もう、なにもないな」(P26)
3月13日の話である。
水が怖い、土が怖い、子どもの将来が心配だ。引っ越しても、子供がいじめを受けるのではないか。うちのお米も、野菜も、美味しかったんだ! なのにもう、今までのようには贈っても喜んで貰えない。自分でも、今までとおなじ気持ちでは食べられない。こんな、雪のように降り積もる悲しみを、どう購えるというのだろう。
(P104)
1年半ほど前に現実にあって今も続いている話。120ページほどの本で淡々としていてすごく身近に感じられる。西日本で地震もたいしてない地域の住人ながら立地的に「明日は我が身」と寝つきの悪かった夜を思い出す。
国に恩恵をもたらす竜が消えて7年。
栄華を誇るクラウス国を陥落しユークス大陸をふたたびユド神国の、ひいては竜の支配下におけば竜は蘇りこの国は再び豊かになると信じられていた。そうして戦争が始まったが敗色は濃い。また一段と冬が早くなり、休戦となった。リュシアは戦いに勝てば竜が蘇ると信じ18歳にしては幼く、しかも死なない体で傭兵として戦場にいた。
リュシアはこれでよく狂わないなっていう。強いことは強い、でも痛覚はちゃんとあるし手酷い死に方をする。
でも死なない。死ねない。自分の意思とは無関係に理不尽な道を行く冬の旅路。
そういう話です。
楽園までが好きならあるいは、という感じ。
色々詰まっています。