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ST☆RISHが口紅のCMに出ました。

「口紅……ですか」
 珍しく7人揃って事務所に呼び出されたかと思えばST☆RISHはそれぞれに企画書を渡された。化粧品関連の仕事はこれまでも香水のプロデュースなどをしたが7人揃ってCMに出るというのは久しぶりだ。
「那月は前にもこういうのやってたよね」
 音也がジュースを飲みながら向かいに座る那月に話しかける。
「うたプリアワードの前のことですか? あれは翔ちゃんも褒めてくれたからとてもよく覚えてますよぉ」
「まだ覚えてんのかよ早く忘れろよ。つかこれすげえな。実際塗るのか」
翔は自分の唇を触りながら撮影日や当日の流れを確認する。「今までにないセクシーなST☆RISHを」というのがメインテーマのようだった。
「別に唇じゃなくてもどこに塗るかはそれぞれで決めてもいいようだから、格言にあわせたいよね」
この手のことはレンが詳しいのだろう。鞄からタブレット端末を出してきたレンは笑顔で「キスの格言」と書かれたwebページを検索して皆が見やすいように置いた。
「ワタシ頬がいいです。満足感。おなかがいっぱいということです。とても素晴らしい」
「トキヤは首でしょ?」
仲良くタブレットを覗き込んでいた音也とセシルは、企画書とは別に1枚の紙に書かれた、キスマークを置く場所を示した人体図を指差した。音也の声を聞いてトキヤの頬が引きつった。
「何故あなたが私のことを言うんですか自分のことだけ言っておけばいいでしょう」
「だってトキヤこの前出てたCMえっろかったじゃない? 今度はセクシー路線でって言われてるからトキヤ今度はもっとやっても大丈夫だしたぶん皆喜ぶよ」
 音也の言うエロいCMとは何ということのない普通のワインのCMのことだ。ただ、唇と喉元がアップになるカットがあったのだがそのシーンが「色気がやばい」とキャプチャー画像が出回ったのだ。
「それは名案だ」
「レン」
「パブリックイメージって大事だよ。生かさない手はないよ? それで行くならおチビちゃんは額だね。オレはこの格言にはないけど胸がいいなあ。選択肢としてはあるようだし」
 諌めるような口調のトキヤに対してレンはウィンクひとつ飛ばして話を進める。
「那月は背が高いせいもあるんだけど、『ピヨちゃんといっしょ』でちっちゃい女の子相手だとよくしゃがんでるじゃない? この前見たとき目の前にちゅってされてるところ見ちゃって、那月はこういうのが似合っていいなって思ったよ」
 「ピヨちゃんといっしょ」は那月がついに勝ち得たピヨちゃんとの共演番組だ。幼児向け番組だが体操のコーナーやお遊戯のコーナーや歌のコーナーもあってこの上なく那月にマッチした番組になっている。
「朝早い番組なのに音也くん見てくれてるんですね。ありがとうございます! じゃ僕は目の上にしますね」
「ていうか聖川、さっきから全然喋ってないけど大丈夫か?」
 翔が心配して声をかけたのは企画書を見たままぴくりとも動かない真斗だ。ただでさえ白い顔が若干青白い気さえする。そういえば共演した女優を抱きしめることさえままならなかった真斗だ。あれから場数を踏んだとはいえ今回のようなCMはまったく縁がないから、ラジオで共演経験の長い翔には心中が透けて見えるようだった。
「俺と変わるか? 頬だけど」
「いやしかしそれでは来栖が困るのではないか? しかし他には……唇は……」
「根性のない奴だねえ」
 いつもなら反論するレンからの言葉にも返すことはなく手の内で企画書に寄る皺が徐々に増えていく。
「じゃあ、真斗くんはそのほくろにっていうのはどうですか? 真斗くんのチャームポイントですしとっても可愛いと思います」
「ああ、それならば……」
「じゃ俺が唇ね! 俺が一番目立つよこれ!」
音也は赤いペンを手にとって図の口の部分に丸をつけておんぷくんを書く。分担を決めた用紙は事務所スタッフに渡し後は撮影日を待つばかりだ。

グレイテスト元ネタ:https://twitter.com/jjiroooo/status/467328675113750528

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