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ぷらいべったーにあった奴を回収。ときぺんとおとぺん。

孤高のときぺんは群れの中にいてもいつもひとり。
魚をとるのがとても上手いと評判で、でも本人はそんなことはお構いなしに氷の上からいつも海を眺めて暮らしていました。泳ぐのは自分が一番上手い、いつか誰も見たことがないこの海の向こうの景色を見てみたいと夢見ていました。
 同じ群れにはときぺんの1年後に生まれたおとぺんがいました。おとぺんは額の中央から生えた赤い飾り羽を揺らしながらあちこちを騒がせながら歩いていることが多く、それはときぺんに対しても同じでよく話しかけにいきました。
「ねえねえいつもここにいるけど何見てんの」
「俺おとぺんっていうんだけど名前なんていうの」
 そんな風にしてじっと答えを待つおとぺんには目もくれずときぺんは沈黙を守っていました。
「この前潜ってるところ見たけどお前の泳ぎ方かっこいいね」
 と言われたときにはさすがのときぺんも気をよくして
「そうですか、ありがとうございます」
とそっけない態度ではあったけどはじめて言葉を交わしました。何度も話しかけてようやく答えてくれた嬉しさにおとぺんは羽根をばたつかせながらときぺんの背中にどんとぶつかり、その勢いのまま2人仲良く海へと転落しました。
「あなたは何をやっているのですか! わたしを突き飛ばして何の得があるのですか!」
とこれまでになくときぺんは大声で叫んで、逃げるおとぺんの後ろを追いかけました。それがこれから長い長い付き合いになる2人のはじめての出会いでした。

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