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日常の謎といえなくもない感じの、恋愛とかも含まれる仲良し4人組の女性の話。
ピアノ講師の咲子、雄雄しい編集者の薫子、平凡なようで鋭い味覚を持つ専業主婦の由香子、美人でやや高飛車な美容部員の満里子。それぞれが主人公の話と群像劇が1篇。
相変わらず食べているものがおいしそうでやばい。由香子の話の中で出てきた甘食は、以前旅行のときに関東の友人が「これ食べたことないだろうと思って!」って持ってきてくれました。「甘食」というのははじめてみました。ああいう形状のものはこちらでは「帽子パン」と呼ばれているのだ。
食べるラー油も1回も食べたことないので、味が想像できない。
「グルーポンのスカスカおせち」にふいた。
耶居子は新卒入社した会社もアルバイトも続かずヒキニート生活をしていた。生活のお供はジャンクフード/ヲチ板/ブログの荒らしと粘着/写真から個人情報を特定/通報・炎上・ブログ閉鎖に追い込むことという、すごく駄目人間だった。
今の玩具は「嘆きの美女」というお悩み相談コミュニティだった。耶居子はあれこれと駆使するがここの住人は煽り耐性が高すぎる。ならば「自称美女」の写真を晒し上げてやろうではないかとオフ会会場(ケーキ屋前)でカメラ片手に潜んだが、驚いたことに本当に美女ばかりのオフ会だった。
そしてオフ会参加者のひとり、ユリエのストーカーともみ合いになり乗用車にはねられ入院した。
退院後の耶居子は「嘆きの美女」オフ会参加者が同居している家で療養していた。あのコミュニティの管理人は小学校のときの友達で、休職中の看護師もいるこの家で是非とも療養をかねて御礼がしたい、と耶居子の母親に頼み込んだ。この家の住人は早寝早起き・健康な食事・適度な運動という健康的な生活をしており、外見も中身もブスだった耶居子は多少美人になる。攻撃的過ぎた生活も多少マシになった。
やっぱり陰険でひがみっぽいところもあるが魅力的な女性にはなる。
「終点のあの子」の奥沢エイジも登場する。
朱里はもう大学生になっていて、エイジの話の中に登場するけど本人は出てこない。
耶居子はこのあとフードコーディネーターの道へ進む。ジャンクフードを再現していくのだがでっかいコアラのマーチとかまじ美味そうで死ぬ。これに限らず食べ物の描写の「美味そうな感じ」がもう本当に半端ない。
「耶居子のごはん日記」は深夜に読むのはお腹と体重へのテロでしかなかった。
上等な土鍋の中には澄んだおつゆと、つやつやの白いうどん。とろんとした卵、かまぼこ、椎茸、ほうれんそう、焼き目のついた餅、ネギ、そしえぶっとい海老天が沈んでいて、いまにもほかほかと湯気が上がってきそう。
(P245)
音大を出たものの借り物のバイオリンを抱えてニート一直線だった響介は、叔父の伝手で竜ヶ坂商店街にある公民館の臨時職員兼アマチュアオケのコンマスとして勤めることになる。よくある「町おこし」としてのオケとは違い指揮者も含めやたらと個性的でしかも実力のあるオケだ。少々人数は少ないがそれはアマオケの宿命というもの。
これはニュルンベルクのマイスタージンガーがずっと流れているような商店街での、音楽を愛する人々の物語である。
音楽ものはやばい。とにかくすばらしい。
音楽は比較的メジャーなものが多くて、葦笛の踊りは「ソフトバンクのCMのあれ」といわれれば脳内再生余裕である。マイスタージンガーはブギーポップの口笛で、展覧会の絵は宵闇の唄のあれ。
響介が車椅子の指揮者七緒に言われてオケメンバーの悩みとか謎とかを解決していく話でそれを通して絆が深まったり腕に磨きがかかったりしてひとつにまとまっていくのである。アスキーメディアワークスの人はビブリアよりこっちを実写化した方がいいよぜったいおもしろいよ。
「いいか……この世で最も残酷なのは、音楽だ。けどな、この世で最も愛に溢れたものもまた、音楽なんだよ」
(P103)
和美は小学校5年生のときに「あたし共学は向いてない」と思った。
夢はマリア像の前で素敵なお姉さまに「タイが曲がっていてよ」と直されたり可愛がられることだ。中学受験用の予備校に通ってとにかく勉強した。オールAを撮り続け、通える範囲に唯一あった「中の丸学園」を受験し無事合格した。そして驚愕の事実が入学式のときに明かされることになる。
まず限りなく女子が多いだけで女子校ではなかった。マリア像の代わりに観音様が、十字架の代わりに曼荼羅が掲げられていた。あたしはマリみてを夢見て入学した先は釈迦みてだった。お姉さまに可愛がられたかったのにことあるごとに「外部進学の方はごめんなさいね」と浮いた存在でしかなかった。
それからもうひとつ、この学園の生徒会は「薔薇様とつぼみ」ではなく「上様と大奥」でできていた。
少女向け学園ラノベあるあるを踏襲しつつ、幼馴染みがイケメンだったり学園1の美女に見初められたりとかそういう王道展開をひっくり返していく感じで、雰囲気は懐かしい。丘の家のミッキー旧装版で育ったような世代の人1が読んだらドツボなんじゃないだろうか。
マリみてパロが楽しい2。「ロサキネンシスアンブゥトンプティスールのそのまたプティスール」が死ぬほどつぼにはまった。わたしは先代白薔薇様が好きだわー。
思ったよりびっくりするほどスクールカーストの話。
世田谷の私立お嬢様高校の普通グループの希代子は、外部からの編入生で有名カメラマンの父を持つ朱里と仲良くなる。朱里があまりに自由で、休みも多いのに先生には愛されてどこのグループにもまんべんなく付き合って、自分に正直なところに羨望を抱いていたが日記を盗み見したところからやがて嫉妬や怒りが沸いてくる。
クラスを扇動してクラス1の派手系女子も動かして朱里をいじめる。それも長くは続かなかった。
そういう話「フォーゲットミー、ノットブルー」からはじまる。
1番好きなのは「二人でいるのに無言で読書」である。
フォーゲットミー、ノットブルーにも出てくる派手系女子恭子の話。夏休みだというのに彼氏とも別れて店の手伝いもせず一人暇つぶしのため図書館にぶらぶらいってみたらクラスの地味女子「ウィンナー指」早智子と出会う。
恭子は本なんか読まないけど早智子の「本の話」は好きだという。早智子は「本は好きだ。恭子とは話は合わないけど綺麗。」というふたりが頭をつき合わせて無言で本を読み、時々本の話をして、ごはんを食べて一緒にいるという。恭子は人の目がすごく気になって、早智子は周りのことには割と無関心で、でも恭子といる時間は楽しいなあと思っている。
クラスの上位グループの女帝とオタクグループに潜む地味女子。その出会いにはじまる夏休みの話。
柚木麻子の単著を読むのはこれが初めてだけど、心理描写がすごくいい。
2学期デビューのため禁止されているバイトをするとか、自分以外の女子は皆普通とか、ここまで堕ちてくればいいとか、10代女子の自意識とか劣等感とか嫉妬とかたまらないな。まじ美味だな。