カテゴリー「 読了 」の記事

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私を知らないで (集英社文庫)

デビュー作だけは読んでいて、しばらく読んでなかったんですが年末のタイムラインでよく見かけた。
いつものところじゃなくて、編集さんとか書評家さんとか(そのRTを含む)だった気がする……。

中学校2年生で転校生である「僕」、黒田慎平は横浜市内北端の町へ引っ越してきた。
転勤族の父をもつ僕にとってこの転校はすでに4回目、転校生に対する洗礼やクラスから浮かないためにはどうすればいいか分かっている。僕は「片親のこども」に興味を引かれることが多かった。このクラスの「キヨコ」はその傾向が今まで出会ってきた人の誰よりも強かった。美しい彼女はクラス中から無視されていた。
キヨコは「年金世代の祖母との2人暮らし」で家庭に問題のある要するに「貧乏人の子」といわれているが通学に使っているものはブランド物だったり休みのたびに渋谷で目撃されたり、そんなことが重なったりして援助交際をしているといわれ、それで僕と転校生の高野はキヨコを尾行するという。

実際のところキヨコは援助交際はしてなくて、お金の使いところ・締めところを分かっていて、「知りたいことがたくさんあるから進学したい」「普通に暮らして生きたい」という気持ちが強い。
キヨコの家のヒマワリがすごく印象的で(表紙にもあるしね)わたしとしてはOver the Rainbow - 一十木音也(寺島拓篤) - 歌詞 : 歌ネットこの歌を! おもいだすしかなかった! 音也さん片親からの施設だったし!

おばあちゃんのひまわりがっていってるとことか、掃除機が動かなくなったっていってるシーンとか。
キヨコ的に掃除機とおばあちゃんと重ねちゃったんじゃないかとかそういうのを思ってしまうわけですよ。どうなんですかね。いや答えなんていらねーですけど。

壇上のシーンとか、僕とキヨコがヒマワリの種を収穫してるところとか、僕と父がラーメン食べてるシーンとか、ちらちら影はしてたけどやっぱりそういうことだったねっていうあれらがほんとうにいい。

泥酔懺悔

朝倉かすみ、中島たい子、瀧波ユカリ、平松洋子、室井滋、中野翠、西加奈子、山崎ナオコーラ、三浦しをん、大道珠貴、角田光代(敬称略)による酒にまつわるエッセイ。

お母さん。何度も申していますが、ジョッキ2杯のビールなんて、大半の酒飲みにとっては、本当に水みたいなものなんですよ。酔っ払ったり記憶をなくしたりといった体に悪影響が出るような酒量じゃ、全然無いんですよ。

(P136)

 

そして未だに、私は自分が酒飲みのどの位置にいるのか、わからない。つまり、私の飲む量が、多いのか少ないのかふつうなのか、分からない。

(P169)

これに激しく同意する程度の酒飲みです。
わたし自己認識では並程度に飲める口と思ってたけど割と飲めるほうだと思ってたんですがどうやら割と飲めるほうらしいと。え、カクテル上から順にとか果実酒5種類あるから全部飲むとかやらないですかやらないですか。今の職場の飲み会は20台前半〜半ばが多いので「大学生よりひどい」やかましい飲み会です。
ビール飲んでると大抵誰かが注いでくれるので最近は何杯飲んでいるのかいまいち分かりませんが2時間ぐらいは飲んでます。
三浦しをんさんのエッセイが祖母が亡くなった当時の弔い酒の話でした。弟さんすごかった。

ゴールデンタイム番外 百年後の夏もあたしたちは笑ってる (電撃文庫)

泥沼してる本編とは変わって、気持ちさわやか系。いや割とどろどろしてるけど。
表題にもなってる「百年後の夏もあたしたちは笑ってる」がすげーすきで、あの香子さんと岡ちゃんが友情しててすげえ! とおもった。こーこさん友達できてよかったね……ととてもしみじみした喜びがあった。
いやまばゆいビーチにそそり立つフレンチ土管のあたりで無言で死ぬほど肩を震わせながら(JRの中で)読んでいた。
全体的に重いのはずっと変わらないんだけど、時々ふっと軽くなって、また死ぬほど重くなるよねー。
百年後〜は未来に何が待ち受けてるんだろうとか、幸せにはなってないんじゃないかとか、想像せざるを得ない。
皆ある程度は失っても幸せになれるといいのに。

残穢

「私」が聞いた久保さんの奇妙な体験から端を発する呪われた話。
穢れは感染する。ストーリーセラーみたいに「これ主上自身の体験談なんじゃねーか」と思う感じの。

スマップウォッチング

年末年始はいっぱいSMAPを見てよさを再確認してたら図書館でこんな本を見つけたので……。
書いた方は中居担のようです。社会学的SMAPの分析本というあれですね。理屈っぽいアイドル本です。

その出来事は突然起こった。もともと芸能界に興味が無かったわけではなかった。テレビは人並み以上に見ていたと思う。しかしスマップとの出会いによって、私は、送られてくる画像を消化する受動的オーディエンスの立場から引き剥がされて、五人の若者の芸能活動の情報収集にいそしむ活動家ファンへと変身したのである。
スマップとともに過ごすようになった私の生活は一変した。テレビでスマップのメンバーが出演する番組を追い、ラジオから語られる言葉から、彼らの日常や人間関係に思いを馳せる。

(P17)

スマップをST☆RISHに置き換えてもこの違和感のなさ……。
まあそれを主として読みましたが。
内容としては2003年のSMAPです。世界にひとつだけの花、吾郎さんの検挙による活動停止と4人のSMAP。
その辺の話です。びっくりしたのは吾郎さんイメージカラーがピンクということですよ、
そうか翔ちゃんと一緒か……

鬼談百景 (幽BOOKS)

ひとり百物語みたいな淡々とした語り口の、短い怪談の集まり。
こっちは創作怪談だとは思うんですが、学校の階段とか水辺とか隙間とかエレベーターとか金縛りとかね。
虫の知らせみたいなのもあり、時々ガチで怖いのもあり。読んでる最中はなんともこう、隙間が気になって、ベッドの下とか見れなかったな。誰もいない駅のホームとかでも読んでたので、来るはずの無い方向から人が歩いてきてお、おう!と思った1

残穢とリンクしているということだったので、同時進行で読んでました(がこっちのほうが先に読み終わりました

  1. 本当はやってはいけないことだけど、時々線路を歩いてくる人がいる…… []

紺碧の騎士団 -サラキアの書と海の宝石- (ビーズログ文庫)

ビズログの新シリーズ、騎士団で隊長と新米隊員(女子)の同居モノ。

幼いころに聖獣・水棲馬で駆けるネプトゥス隊に命を救われたリリアは騎士団に強く憧れ腕を磨いた。
親兄弟の激しい抵抗に遭いつつも、事情の変化からリリアは単身王都に残ることになりバルトランツ王国騎士団所属も許された。師匠に紹介された下宿先に向かうと「住み込みの家政婦さんがいる屋敷」のはずが実態は通いの家政婦さんがいる男の一人暮らしの屋敷だった。すったもんだーがあって奇妙な同居生活が始まる。

割とゆるめの、ビズログ! っていう感じのラブファンタジー。
同居相手、というか下宿先が上司で隊長で、同居していることはお前絶対ばらすなよばらすなよという王道のあれです。なんせ展開としては王道にしてベタ。でもブラコンシスコン盛りすぎだと思う。
あらすじの「ドS隊長クラウディオと同棲生活」ですがクラウディオは振り回され型ツンデレ亜種っすねという感じでした。

萩を揺らす雨?紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)

割と前に書評家の方がTLであげていた日常系ミステリ。何が会ったのか最近本屋の平台で見かけることが割とあった。
関東かつ観音様が見下ろす街ということは鎌倉のあたりなんだろうか。コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営むおばあさん、杉浦草が語り手である。65歳になってこの店をオープンして、今は人気のある店となっている。ここは草さんがいれた振る舞いのコーヒー目当ての客もそれなりにいる。無料のコーヒー目当ての者もいるが、それはそれである。常連たちとの会話で小さな事件に気がつくのだった。短編集。
語り口は淡々としている。「紅雲町の草」と「0と1の間」が好きだな。

幽霊伯爵の花嫁 -彷徨う少女と踊る髑髏の秘密- (ルルル文庫)

第6弾。次で終わりらしい。あれ、終わりなのか、と思うのは1冊完結の体をとっているからだろうなあ。

いきなり過去の話からはじまったので、過去編か? と思ったけど先の展開への手番だった。
あの、要するに「さあ、うまれておいでなさい」だよなと思った。ネタバレですが、そういうことだよな。
明らかに招かれざる客として対応されているサアラと、いつもどおりのあれと、アシェリーゼが大切なんだなあというあれと、

あとはあれですか、朝チュンですか。あのシーンいいですね。とても好きです。私やっぱりラノベでは匂わせる程度でいいと思いました。そういうのは女のためのR-18文学賞とかあの辺で探すからイラストがついている小説でそれは求めてないんだよっていう。

「人の心の内側は、不可侵にして絶対の領域です。誰もそこには手が出せませんの。それでも、私はジェイク様の内側を覗きたくて仕方ないのですわ。全部私だけのものにしてしまいたいの。皮を破って肉を裂いて血を啜って、そこに詰まっている物を全部独り占めにしてしまいたいのですわ」

(P175)

せりふだけ見ればヤンデレっぽいけどすごく熱烈な愛の告白だよなあ。こういう子だよ。

“朝顔

6冊目にしてようやく折り返しとのこと。真夏の話です。

五ノ宮の当主織女が書いた文字には力があるという。織女が贈られた字を飾ることでお墨付きをもらうような、そんな勢力図を塗り替えるような力が。
帝門の当主前妻、一朱の母弘華を支持する薔薇派と後妻藤乃を支持する藤派による帝門後継者問題について、朝衣は織女の字がもらえるように日々朝顔が咲き誇る五ノ宮の屋敷を訪れ孤軍奮闘していた。
朝顔というとサマーウォーズが刷り込まれているあたり映像の力はすごい。

朝ちゃんは本当は可愛い女の子なんだというのが1冊かけて語られるわけですよ。可愛いな!
病弱の人に飲まされるお茶は大抵危ないというのは直感的に思い知る。すごい。ダチュラでガタッとなったわたしの話はやめるんです

これだけ女子に好かれてるのになあ! ハーレムとは思えないあたり一人しか見えてないせいかな。

庭に咲き乱れる、朝顔の花。
誰も目覚め朝のうちから凛と花弁を広げ、少しずつ萎んでゆく。
目にあざやかな青、高貴な紫、官能的な白。
清楚で気高くありながら、どこかいびつで、とげとげしい、グロテスクなものまでそろった、朝顔姫の--------。

(P189)
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