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雨の日のST☆RISH

 テイクアウト専門のファーストフードの軒先にそのアイドル達はいた。撮影の合間にほんの少し抜け出したのだった。オーダーにもたついて多少時間はかかったがまさかその数分のうちにそこまで天気が急変するとは誰も思わなかった。
 運が悪い。その一言に尽きる。
「キツネノヨメイリ! ワタシこの前マサトに教えてもらいました。お天気なのに雨が降るのです」
空を指差して言うセシルに音也はハンバーガーに噛み付きながら首をかしげた。
「狐の嫁入りっていうにはちょっと大雨過ぎるかな。これゲリラ豪雨っていうんだよ」
「ゲリラ……? ニホンの天気、色々言葉があってムズカシイ」
「まあいきなり降る雨だよ」
「ゲリラ豪雨って普通もっと夏っぽくなってから言うやつじゃねえの? 音也相変わらず雑」
 音也とは反対側で壁にもたれかかっている翔が話に突っ込んで話を終わらせる。誰かが喋るのはやめても7人もいれば大体誰かが喋りだす。元々無口なグループではないからなおさらだ。
「すぐ出られると思ったのに聖川がカタカナのオーダーに戸惑ったりしているからだよ。同じ分からないにしてもご老人のほうが可愛げがある」
「お前こそ来栖の注文をじっと聞いていたではないか。同じものを注文すれば作法を知らなくてもばれないとでも思ったか」
 トキヤと翔を間においてテイクアウト全般に不慣れな真斗とレンがにらみ合う。いつものことながらと翔とトキヤは聞き流しているが長々と言い合っている。
「ねえトキヤ、俺暑いし皆でここにいてもしょうがないから走って傘取りに行ってきてもいい?」
「いけません。濡れますし、どうせすぐにあがりますよ」
「俺フードかぶってるしちょっとぐらい濡れても風邪引かないから大丈夫だよ」
「誰があなたの心配をするというんです。衣装さんが泣きますからやめてください」
音也が頬を膨らませてトキヤに何かを言おうとした瞬間那月が大声を上げて向かいの通りを指差した。
「あ! 皆あれ見てください」
 那月が指差したのは向かいのビルの小さな街頭ビジョンだ。新曲のMVが繰り返し放映されている。今流れている映像はシャイニング事務所の先輩にあたる寿嶺二の新曲のMVだ。久しぶりの新曲は嶺二らしい曲調ではあるものの物悲しさに溢れた曲だ。日ごろのバラエティ色溢れた嶺二をよく知っている後輩たちはトレードマークのマラカスも持たずスタンドマイクひとつだけ握り締めて歌うMVをみてとても衝撃を受けた。
「僕達も頑張りましょうねえ」
 雨はやがて小降りになりつつある。やがてやんで空には大きな虹がかかるはずだ。

いんすぱいあーもと:https://twitter.com/jjiroooo/status/461486186721058816

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