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2016年02月

四ノ宮那月はサンタクロースの存在を信じていますか?(2013/12/19)

――クリスマスはいつもサンタさんを待って外を眺めていました。でもいつも眠たくなってしまって起きていたためしはないんです。クリスマスじゃなくても空を見上げるのが好きなのは優しい人たちの祈りが空を泳いでいる気がするからかもしれません。

「翔ちゃん! 翔ちゃんすごかったです! 格好よかったです!」
クリスマス公演を終えた忍び道楽屋は来客を迎えてにぎやかさに溢れていた。元々シャイニング事務所内でも年少組で構成されている忍者チームは教室かなにかかと思うぐらい騒がしい時がある。それでもいざ稽古なり公演前ともなれば真剣な雰囲気となるのだが、今日はマスカレイドミラージュチームが観劇後の感想を伝えにきたのだった。
「ステージの端からバク転で中央まで行くところすごかったです! 翔ちゃんの笑顔もしっかり見えました!」
「それだけ喜んでくれたら俺も稽古がんばった甲斐あるよ」
風邪を引いていないか、先輩方に迷惑をかけていないか、今度の休演日に頭から見に行くからな、と翔の話は徐々に実家の両親じみてきたところで嶺二の声が遮った。
「翔たんとなっつん、公演終了記念におにいさんがジュースを奢ってしんぜよう! クリスマスプレゼントだよ。何飲みたい?」
小銭入れを片手に嶺二が外を指差している。楽屋の少し向こうに自動販売機が置かれている。火気厳禁の場所柄さすがに喫煙スペースはないが、軽く横になれる程度の大きさのソファがあり休憩スペースも備えられていることから出演者から裏方まで等しくお世話になっている場所だ。
「寿先輩! 俺が買いだしに行きます!」
「翔ちゃんひとりじゃ持てないだろうから僕もいきます~」

*

「寿先輩っていつもあんな感じなのか? 俺あんまり一緒の現場になったことないか分からないんだけどいい兄貴分て感じだよな」
「れいちゃん先輩はすっごく可愛いですよ。あいちゃんも可愛いですけど、レン君をもっと大人にした感じですねぇ」
那月がしゃがみこんで出てくる缶を取って、翔がお金とボタンを押す係だ。がしゃんがしゃんとすばやい手つきで小銭が自動販売機へ吸い込まれていく。
「クリスマスプレゼントなー。そういやお前なんかもらったんだったな。何だったんだ?」
「からあげが好きなサンタさんからはこれ探してるんですって言ったピヨちゃんで、お茶が好きなサンタさんからは僕がこの前見たいっていった舞台のチケットでした。優しいサンタさんたちです。僕も何が用意すればよかったな」
人数分揃っているか数えて那月は立ち上がった。袋の中で缶が転がってごろごろと音を立てている。翔は伸びををしながら歩き始めた。
「今からでもいいんじゃねえの。昨日だったか音也がブログに書いてたじゃん。クリスマスの日を皆と過ごせて嬉しい。俺忍者の役だけど明日はサンタの気持ちで皆に幸せを届けたいって。遅くはねえよ」
翔が何気なくそういった瞬間袋が那月の手を抜けて缶が床に散らばった。
「おおおい! 炭酸も混ざってんだぞちゃんと持っとけよ。ったく……」
翔が缶を拾おうとしたその瞬間、那月の腕が伸び翔をしっかりと捕らえた。
「翔ちゃんやっぱりすごい! そうだね今からでもいいよねじゃクリスマスプレゼントって何がいいかなやっぱり好きなものがいいよねあいちゃんが好きなものは……ツリーにぶら下げてたものだよね、あっれいちゃん先輩の大好きなもの僕からあげ以外はよく分からないや。そうだ音也くんなら分かるよね。れいちゃん先輩には秘密にして聞かないと! 翔ちゃん今僕が言ったこと内緒にしといてね!」
ぎゅうぎゅうと翔を締め上げて喋りながら那月の中で結論が出ると同時に楽屋へ向かって走り去った。後には崩れ落ちた翔と置き忘れられた空き缶が残された。

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