鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫—ホワイトハート)

ついったーで話題だった本。ホワイトハートの新人さん。多分単巻ものでファンタジー。
あらすじでは「迷宮ファンタジー」と銘打たれてますが、迷宮街クロニクルみたいな迷宮にもぐって戦ったり財宝で一攫千金とか死と隣り合わせみたいな本ではありません。
祖母の弔いに故郷アラニビカ島へ向かう貴族の一行。その令嬢プルーデンス(13歳。祖母の影響で年の割には知識が豊富。孤立しがち。可愛げはあまりない)が黄金比の美しさについて語ったり大人たちの陰謀に巻き込まれたりする話。アラニビカへ渡るまえに伯爵が雇ったオスカーと名乗る蒼い衣をまとった吟遊詩人が現れた。周りは歌がすばらしいと絶賛するがプルーデンスはその詩人がとても胡散臭いものに感じられる。

聡明さゆえに孤立する少女と胡散臭い詩人っていい組み合わせですね。
基本口先三寸だけどたまに真理をついたりもする歌のうまい詩人というとオペラシリーズの詩人が脳内検索ではHITするわけですが、あちらよりは相当健康的な雰囲気(部分的に性的な意味で)。
地味めの話だけど神話とかプルーデンスの変化とかがすごくよかった!

「ああ、そういう人もいるね。いろんな人がいるよ。無慈悲で浅慮なのに愛される人もいるし、優しくて相手を理解しているのに、愛されない人もいる。この世は不公平で不条理で、割に合わないことばかりだよ。プルーデンス」

(P107)

「なにも考えずに泣いたり怒ったりするのは、罪がないことだと思っているのね。でも私はそんなの嫌よ。それは安易で浅はかなことだわ。可愛くないとかひねくれてるとか言われたって、私は我慢するの。そして最初から泣かずにいられる方法を考えるわ」
「プルーデンス……」
「私はたしかに子供で小さくて、無力よ。でもだからって私を弱くしないで!」

(P158)