カテゴリー「 一般文庫 」の記事

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晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と (講談社タイガ)

タイガ創刊したはいいもののひまりさんはどこへいっても在庫がなくてこの前ようやく見つけた。
大学生の春近は幼稚園の頃からさかのぼってもずっと決まって好きになる相手は人妻だった。眠れない冬の夜、公園に散歩に出かけて人妻のひまりさんとサモエド犬の有海さんと出会う。
「今日は○○の日です」と恋と日常の謎ミステリ。

3話がすごく良くて、好きで好きでたまらなくなると、あとは飽和してしぼんでいくだけでしょうと語る大学の友達の彼女の話がとても刺さる。

あんなに大好きで、憧れていて、胸をときめかせていたのに、いつからその想いは薄れて消えていったのだろう。
好きでたまらないものへ一途に向けられていた情熱がさめてしまうことは、あたりまえにあることなのだ。
決して、薄情とか移り気というわけではなく、生活してゆく中で、ごく自然に、あたりまえに、それは残酷な事実で。

(P189)

薄れたり壊れたりするかもしれないけど百年分の幸せのために唇を合わせるんだっていうあれな。

女装王子の深遠にして優雅なたくらみ (富士見L文庫)

富士見ファンタジア大賞の銀賞作品でL文庫。
シャリア王国のルイーゼは王女として育てられた。というのも先王2人の息子が王位をめぐって争いに巻き込まれることを憂えたからだ。
自分が貴族の派閥争いの結果兄と争って王位についた第二王子だったからなおのこと心配し、第1王子オーギュストが王位を継ぐまでルイーゼの正体は秘密にしようと、事実を知っているものは本人、王、第二王妃、ルイーゼの世話役を任されたヴェルスタール家のみである。
ルイーゼ(ちなみにこの名前も男女どちらでもとれるように付けた名前だ)は予想以上に王女として演じたしオーギュストも王にふさわしい器に育った。王位を譲ればルイーゼのことも大々的に知らせるつもりだったが、王は急病であっという間にこの世を去った。
 「王妹ルイーゼは男である」と世に知らせることができるのは最早ルイーゼのみなのである。現状、唯一真実を知る世話役のクラウスは今すぐにでも言ってほしいがルイーゼはのらりくらりとかわしている。

そうして派手に知らせる場を見つけた。 王にして兄1が持ってきた「ルイーゼの花婿選び」である。花婿選びは同時に事件の始まりでもあったのだという。

ルイーゼは表向きは貴族の視線を一身に集める美貌の完璧な姫君なんですが、まあ本性は雑な、全裸で舞い踊る系の、ついでにいうなら3つ目の顔としてごろつきの親分もやっているという、まあ愛しい系のあほの子。このあほのこがめろめろになっていく話です。

まあ要するに、壮大な一目惚れの話です。

花婿選びに参戦した男は四十二人。自分の秘密をばらす舞台を作り上げるために、最高の人材を見つけたいとして「なんかめんどくさい事情を抱えてそうなやつとか、俺ぐらい美形のやつはいないのか」とサロンをみていたら本当にそんなヤツがいた。それがオレスである。

そして先ほど抱いた感情を打ち消すかのように、自らの頭を幾度も壁に打ち付けた。
「違う!! 違うぞ、今のは違うんだからなっ!!」
しかし思いとは裏腹に、波立った精神はなかなか落ち着くことがない。
「なっ何にもドキドキしてとかないからな!! ふざけるなよ!! 馬鹿っ、変態!! ……って、痛あああっ!!」

(P193~194)
  1. ちなみにお兄ちゃん妹がとても大事にしている。自分もいずれ子供ができたらお前に構う暇がなくなってしまうかもしれないからお前を大事にしてくれる相手を見定めたいというあれである。 []

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

なかなか萌えの塊だった。 サイコパススピンオフの二冊目。
本の大半を占めているのが六合塚弥生と唐之杜志恩、それから弥生のモトカノの話で、これは霜月監視官着任後の話。
もうひとつは宜野座メインの話で、若い。佐々山も生きてる。つまり咬噛さんが監視官でぎのさんも監視官である。

サイコパススピンオフの1冊目はグソンの話がメインで、とことん救いがなくてかなりえげつない話だったけど、この巻はその辺が相当マイルドである。サイコパスなので人は結構死んでるけどグロさはない。
公安局に助けを求めた記憶障害のある少女、未来の証言で弥生は反シビュラレジスタンスの巣食うライブハウスへ潜入捜査をしていた。
この反シビュラ組織にはかなりの少年少女が拉致されており、この組織が狙っているのは色相が悪化しつつある、10代半ばの妊娠の見込みのある少女である。十分な医療施設で手術して赤子をとりあげてから母体は殺しているようだ、という話。
結構サイコパス二期と似た手触りの話で、もうひとつのカムイみたいな感じ。弥生&志恩の愛の話もがっつりとあった。

で、ぎのさんがメインの話である。
これがくっそもえのかたまりでやばい! やばい! っていいながら読んでいた。
動物の再導入という、動物に野生を思い出させようとしたら害獣化して殺処分対象になった本末転倒な計画のせいで若き監視官宜野座が走り回る話である。
何がすごいかとうとおはようからおやすみまでならぬ、幼い頃のギノさん、プライベートのギノさん、実は犬が大好きギノさん、こーがみさんとは良好な仲だったギノさん、もし自分も家庭を持つようなことがあれば思うギノさん、ピルイーターギノさんなどなどさまざまな宜野座が見られるので宜野座ファンはぜひとも読んでいただきたい一冊!

《だからな、ギノ。俺はお前が誰よりも監視官という職に対して真摯であることは理解しているつもりだ》
 そうだ、今だって。
「……いきなり、何だ、急に……」
《征陸執行官の問題については理解している》
「……咬噛」
 分かっている。相手は浅慮で物を言っているのではない。だが、それでもーー。
《しかし、それでもお前は優れた猟犬を正しく扱うべきだ》咬噛のあまりに率直でまっすぐな言葉。《親友だと思うからこそ言わせてほしい。今の俺たちは人数こそ少ないが、かなりベストなチームだ。お前が指揮官となり俺たちを動かすことができるなら、どんな事件であろうと解決できると思っている。負けなしのはずだ。それだけの戦力が揃っている》
 まったく本当にこいつはもう、まるで変わっていない。

(P261〜P262)

この辺のシーン本当に全部引用したいぐらいの鳩死亡ポイントで。
終始こんな感じなので(ああ、サイコパスだなっていうシーンはあるんですが)「犬好きな宜野座」ですでにピンと来た方は是非。

王女コクランと願いの悪魔 (富士見L文庫)

王女コクランの元に現れた伝説のランプの悪魔。しかし願いなど何もないと悪魔を追い返そうとするが悪魔はなんとか願いを聞き出そうとする。ふたりの奇妙な同居生活が始まる。「物語の方」と呼ばれるコクランと「願いはない」ということばの道筋をたどる話。
後宮といっても寵愛を奪い合う場所ではなくて貴族の子女の教育の場みたいな感じで、割とコミカルだったりするんですけど賑やかしの悪魔、冷静な王女のやりとりは面白いんですけど全体的な空気はシリアスで。
どう言うところに着地するんだろうかと思っていたらお、そこか! ってなった。ダンスとかチェスとか悪魔が王女を心を開いていく話かと思ってたんですが、すべてを与えられている王女が唯一欲していたものは誰も与えられることはなかったという。
よい物語だったー。

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

本編の前日譚。グソンの生い立ちと朱ちゃん着任前のかがりくんメインの話。
グソンの過去はまじえぐいです。同じジャンルの箱にはされ竜が入ってます。まじ色相濁る話なのでアニメ版のサイコパスがぐろいと感じる人は読まないほうがいいレベルー。多くの犠牲の上で生かされてしまったグソンの話です。王陵璃華子がちらっと出てたのが嬉しかった。でもグソンやべえ。
女神(シビュラ)に徹底的に無視された存在だという填島が出てきた辺りはちょっと癒しのターンだった。ここまで救いとかなんもないからな。

かがりくんの話は本編の1年前でグソンの話に比べたらなんと平和なことか。1年前なので管理官ギノさんいるしこーがみさんいるしまさおかのおっさんも普通にいます。料理大好きかがりくんが生まれる話です。クッキングアイドルは一人の料理人と出会うまでは食事とは栄養補給の手段で流動食とか簡易なもので構わないと言っていた頃がありました。そんな話です。

分量としては6割グソン4割かがりくん。

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

竹宮ゆゆこだった(ざっくりした感想)
あらすじは「お前は何言ってるんだ」っていう感じなんですが話の内容を強引にまとめるとあんな感じです。
23歳無職の枇杷と親友の朝野の小学校の時のまずよくて、プールいいなあっておもった。でんぐり返り、やってたわー。
枇杷と朝野の物語がもうほんとうにきれいなんだよ。でも23歳の枇杷は現実で時々スコップもって殴りに来てた。側溝組には空の広さも眩しい。
二人なら永遠になれるはずだったとかなーーーーー。
喪失と断罪と贖罪と代替品で。枇杷と昴は朝野を中心においてその周りをまわって相互補助みたいな感じで、読んでるほうもすごいぐるぐる回ってる感じあった。

枇杷の「私は家族のためにいろんなことをやってきたのに」っていうことが実はいなくても世界は問題なく回っていて、久しぶりに会った義姉は心配もしてないと思ったらちゃんと居場所を明らかにされていたとか、うまく言えないけどー透明人間(いなくなっても誰にも気づかれてないと思ってたけど朝野がいなくなってもだれかはちゃんと見つけてくれていた)みたいななにかが要するに「めっちゃゆゆこっぽい!!!!!!!」っていうところに落ち着きました。

あやかし飴屋の神隠し (メディアワークス文庫)

紅玉さん・現代・お祭り・メインか少女じゃなくて男です。妖怪も出てきます。神社には妖怪が付き物なのでしょうがない。
私が祭りというとまず想定するのが阿波踊りでその次がえべっさんでな。
縁日の一角にある飴屋を営む叶義と牡丹。あやかしを見るをもった青年と作れないものはないという飴細工師である。キャラ飴を作ったりする中で妖怪飴もつくる。悩み相談的な、妖怪退治的な、なんかそういうのとあと才能の話。
雰囲気的には夜市とあまつき。全四話っていう感じで最初の一話ぐらいは攻撃力低いなー(でも生活に困難をきたす程度の腱鞘炎は俺覚えがあるので胸が痛い)と思ってたら真綿を持ち出してきてやっぱり鈍器もって殴りかかってきたのでいつものやつだーーーーーーーーーーー! ってなった。

皮肉屋の青年でなまえが叶義っていう時点でこいつは吐血しないなと思った。違いない。
私基本的に才能の話っていうか持ってる人とと持ってない人の話が好きなので……あと一宿一飯の恩義とか生きろとか。

「行く手を阻まれても、背中をどんなに押されても、ゆらいだりしない、フラットな気持ちが……一番強いんじゃないかとは、思います」

(P97)

うちの執事が言うことには (角川文庫)

年若い当主と執事の物語。若干のミステリ要素。短編集。

烏丸家27代当主についた花穎は若干18歳。父真一郎は当然の引退声明とともに前執事鳳をつれて旅に出てしまった。
花穎につくことになった執事は衣更月というこれもまた若い青年である。花穎は鳳が自分についてくれることを楽しみにしていた分がっかりした。衣更月もまた鳳が執事ではなくなり自分が使える主人が年若い青年でがっかりしていた。
わたし小説で執事というとジーヴスを連想するんですけど若い主人を助ける有能な執事というのではなくて、一緒に成長するというのはよいと思います。まあライトなんですけど。
そしてこの2人が心酔する鳳さんがスーパー執事(今出世して家令)なんですよ。まあだいたいパーフェクト執事です。よい執事です。

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

そういや一番最初のは読んだことなかったなと思って読んでたんですがスーパー胃が重くなる本でした。表題作のポトスライムの舟と12月の舟の2編収録で、ポトスライムはワープア、12月はパワハラと。淡々としているのにすごく怖い。
12月のツガワの頭がだんだんぼうっとしてくる感じとか、「みんなが優しくなった気がする」とか、V係長とか、生々しい! この感じ覚えがある! こわい!!!!! 重い!!!!!!!!って転がりながら読んでいた。読み終わる頃にはげっそり疲れていた(ので復帰すべく気分を変えようと外出した)

確か何かの対談系で津村さんが前に勤務していた会社がパワハラ系でっていうのを読んだ覚えがあるんですが、その時の体験はいってるのかなと思った。とにかく生々しい。そこに優しさなどない。脱出できれば勝ち、みたいな。こわいこわい。決して面白い本ではないんだけどすごい本を読んだ。

社会人必読なんて書かれているけどけっして「明日から頑張ろう☆」みたいな本ではないし、「働くってしんどいことだ」っていう感じで日常的に激務でフィクションぐらいは優しいものが読みたいっていうひとは読んじゃ駄目だと思う。

バー・コントレイルの相談事 (富士見L文庫)

富士見L文庫創刊ラインナップの2冊目。
横浜関内の小さなバーが舞台でそこに初めて訪れたメモ魔のOLとそこにやってくる常連客の話。
「すべての答えはグラスの中に」が決めせりふだったりするのかな。
バーテンダーが接客中に客が持ち込んできたトラブルの謎解きをするパターンなのかなと思っていたら割とこの酒うめえ! →ここのバーテンすごい→このバーテンは洞察力もカクテルに対する知識もすごいこの人なら……と打ち解けていく課程があってようやく「父が母にプロポーズとともに送ったカクテルを解明してほしい」という段階に。
バーテンと謎解きという時点で香菜里屋シリーズ連想するんですけど、ああいうのではない。
私は酒は飲むけどカクテルとかは飲まない、バーも行ったことないっていうかバーみたいなところって行く人もいないのでむかしドリンクラリー1でいったなあのレベルで。だからこう、場面が想像しにくいところもあって割とピンとこなかったところもごろごろ。あとバーといえばあれもそうだなQED 百人一首の呪

説明臭いっていうかうんちくの香りが時々するので。
そのへんはQEDあたりを思い出したな、バーの話はよいものだよ。

  1. 参加費を払って地図を渡されて1杯ぐらいはただのみできる。いつもはいかないような新しい店を開拓しようという企画 []
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