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PR誌astaに掲載されていた「思い出に残るあの店」を語るエッセイ。お店情報もあり文字で読むワカコ酒みたいな本だ。

アンソロジー形式で寄稿(といえばいいのか参加といえばいいのか)されているのは三浦しをん、西加奈子、森見登美彦、宇垣美里、山田ルイ53世、はるな檸檬、バービー、塩谷舞といろんな分野で活躍されている方々だ。

髭男爵の片割れ、山田ルイ53世さんがあの芸風で実は人見知りで「個人を認識された瞬間に店から足が遠のく」タイプなのは意外で、親近感が湧いた。

内容はランチ・ディナー・スイーツ。お店はほぼ都内だが、若干九州が含まれている。
◎作家一覧(掲載順) 三浦しをん、西加奈子、中江有里、美村里江、宇垣美里、清水由美、山田ルイ53世、塩谷舞、稲垣えみ子、道尾秀介、ジェーン・スー、岡崎琢磨、バービー、朝井リョウ、瀬尾まいこ、佐藤雫、清水ミチコ、あさのますみ、畠中恵、はるな檸檬、小川糸、久住昌之、川内有緒、澤村伊智、朱野帰子、最相葉月、藤岡陽子、森見登美彦

書影が出ない……。頑張れAmazon

結婚に至る道の1冊(最後まで読んでも結婚式ではない)。
今回地味に面白かったのは男女間の意識の齟齬的なあれ。絶妙にかみ合ってない(そして別にそれをあえて確認したりしていない)のが面白かったです。淡々とした描写にまあまあの頻度で混ざってるのが面白い。思えばこのシリーズも11冊か。結婚とともに終わるんだろうか。結婚生活も描かれるんだろうか。どうせなら太陽がお父さんしているところまで読んでみたい。

面白かったとか共感したとかうっかり言えない怒りを感じる本だった。
主人公の井沢釈華は生まれながらの難病で筋組織の形態が異常だった。具体的には背骨が右肺を押しつぶす形で湾曲している。40を過ぎた今は両親が残したグループホームで暮らしている。働かなくても食べていけるだけのお金はあるが、時にこたつライターをやり、R18の小説を書き、大学生もやっている。
釈華のライター仕事である風俗店体験レポで始まる本作は100ページにも満たないとても短い物語だ。生々しい重度障碍者1の生活の描写と怒りの色が見える物語は突然に幕が切れた。

厚みが3、4センチはある本を両手で押さえて没頭する読書は、ほかのどんな行為よりも背骨に負荷をかける。私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、----5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。その特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた。

(P27)
  1. 市川さんが人工呼吸器や気管カニューレを使っているまさに当事者だ []

久しぶりに本の感想でも書こうと思ったらAmazonから書影が引っ張って来れなくなった。
写真を貼ってみたりしたけど不格好なのでちょっと様子を見てみます。

(11/14追記 書影引っ張って来れました!)

さて文章術の本である。一時こういう本をたくさん買ったり読んだりしていた。この本との出会いは確かnoteでこの本の販促連載が組まれていたように思う。筆者の近藤さんは朝日新聞社で長年勤めた後、九州へ移住して農業をやったり猟師をやったりライターをやったりライターを育てたりしている。
内容はそれなりに攻撃力が高い本だ。「など」「いろんな」「さまざまな」は読者の抗議をかわすためのエクスキューズ語だ具体的に言えてない考えてない。読みにくい文章になるとそういう話をしている。

世間というのは、そういうものなんです。また、世間を離れて、ものは書けないんです。世捨て人とは、世間を捨てた人ではありません。世間に捨てられた人です。
ライターは、作家は、世間に向けて、他者に向けて、書くんです。なんとも音がしない、ブラックホールのような深い井戸に石を投げ込むのであっても、絶えず、倦まず、石を投げ込むんです。ゆっくり行く者は、遠くまで行く。歩くように、息をするように、健やかに、今日もまた書き続ける。石を投げ続ける。
そして世の中のだれかが、石の落ちる音を聞いてくれているものなんです。

(P108)

読みやすい文章とはいう話をたくさんしているだけあって、この本はとても読みやすく、読み終わった後じわーっときいてきている。わたしは特に職業ライターというわけではないが、長らく何かしら書いてきた人間だ。そろそろ休みの期間もやめてちゃんとコンスタントに書いて読んでいきたいと改めて思った本だ。良い本を読んだ。

以前刊行された東京ディストピア日記が小説の一部になった感じだ。
2019年9月終わり、茨城県南部を震源とする地震があった。都内では震度3を観測したその日、乳がん治療中の小林波間は通り魔事件と旧友に遭遇した。中川甍(なかがわいらか)は学生時代のよく遊んだうちのひとりで、親友の恋人だったこともある。LINEを交換して別れたあと、中川のことを思い出した。中川はいかにも着慣れた風にスーツを着ていたが、確かいろいろあって今は漫画家になっているはずだった。
後日、また会おうということになり待ち合わせ場所にいったが中川の姿はない。同じ時間同じ場所にいるのにいないのだ。LINEビデオ通話越しに見る2人の世界は一見同じようで建物が違っていた。あの地震の日、何かの拍子でつながった世界で出会ったふたりはもう会えることはないのだろう。それでも別の世界線で暮らす2人はLINEで連絡を取り異なる世界同じ空間同じものを見て食べる。
2つの世界は同じようで違うことがほかにもあった。スクショや映像や音声は送れるがリンクは通らない、様々な歌手が存在するかどうか。
決定的に違うことはほかにもあった。
小林波間の世界は2020年に東京オリンピックが開催された。
中川甍の世界は2020年に新型コロナウィルスの出現で世界、特に都内在住の甍の世界は一変した。

「弱い者達が、夕暮れ、さらに弱い者を、たたく」と歌いだしてるシーンは雷神の系譜が脳内で流れたけど、これTRAIN-TRAINなんだな。そんな歌だったんだと今ググって知る。

読みながら甍側の世界にいるはずのわたしは波間の気分を味わっていた。
何回か書いてる話なんですけど、私が住んでいるところは地方of地方で高齢化と過疎がそこそこ進んでいるところです。
わたしは職業柄コロナ陽性者やそれ以外の感染症陽性者と毎日接近接触している期間が2年ほどあったけど、まだ未感染で済んでいます1
それのひとつの理由として、5月にマスクが個人の自由とされてからもマスク装着率が9割ぐらいあるからなのでは? とふと先日思いました。本当に10人いたら1人いるかどうかなんですよノーマスク。あっこの10人には乳幼児は含まずで。
近所のスーパーもイオンモールみたいな人が大勢集まる商業施設も職場も図書館もJRもバスも9割マスクしてる。この前イオンモール行ったとき、スタバの男性店員さん2人ともマスクしてなかったな、とかフードコートの唐揚げの店のレジやってる人だけマスクしてなくて、マスクしてないのに声小さくて聞き取りづらかったとか、かなり個人を特定できるレベルでしかいない。
すえひろがり(刀ミュの野外公演)の「ノーマスクで叫んだあと咳エチケットもなく咳きこむのやめてもらっていいですか」的なRTを見ると異世界感はぬぐえない。ハレの日だから説あるけど、首都圏在住の友達は「電車でマスクしてない人めっちゃ多い」って言ってたもんな。
いうてわたしが住んでいるところはすでに県内全域でインフルエンザ注意報が出ていて、感染者数は今年2月のピーク時に追い抜いている状態ではあるんですけど。

病気に関することも多くて癌サバイバーの人が読んだらそれはそれで思うことが多いんじゃないだろうか。

  1. 無症状感染歴はあるかもしれないけど明確に陽性ですと診断されたことはありません []

池井戸潤読んだのたぶんはじめてじゃないだろうか。ドラマから原作に遡りました。ドラマ、すごい土着ホラーめいたいい出来ですね。先があまりにも気になって、おっいい値段するなあでも読みたいから買ってしまえーという気持ちで買いました。kindleは「保管場所を考えると買えない」という気持ちをクリアできるのでその辺はありがたい。この本はたぶん紙の本で読むのがあってる気がしたんだけど。
ドラマの方は今放送されているところ(ちなみに本日4話放送、まだ3話しか出てない世界)は割と原作に沿った展開で、リンコはあんな神棚に飾られる存在ではなかった。情景描写や感情描写が映像だとざっくり削られる分「わかりやすく」そして「視覚的に分かりやすくおどろおどろしくした」という感じ。

ここからはネタバレを含みます。ドラマだけで楽しみたい方はお気を付けください。

宮田陽彩は大学へ通う傍ら週6でコンビニでバイトをする。月20万ぐらい稼いで手取りは16万ほどになり、うち8万は家に入れている。残りは学費に消える。奨学金も借りているがそれはあくまで保険で一切手を付けず卒業と同時に一括返済するつもりだ。
大卒の資格の元就職する。それが大学に入学した目的だ。宮田はの母と2人で暮らしている。高卒で働けという母を説得して何とか大学へ通うことができた。家に入れる8万も自分支払いの学費も奨学金も家から近い大学に通うこと親の意向だ。

同じバイトの江永(女)と堀口(男)、同じ授業を取っている木村(女)が主な登場人物だ。宮田は家を出て江永の家に転がり込むことになる。友達のいない宮田は江永に関するうわさ(いわく、父親が殺人犯)を知らず、木村から聞いてそのことを本人に尋ねたりした。

「幸福」「普通」「よくいる」とはお世辞にも言えない境遇の宮田と江永の話は時々つらく、2人が出会えてよかったと思う。何らかの理由で離れることがあってもずっと仲良くしてほしい。
ちなみに本作はそんなにべたべたはしてない女同士の友情や関係性の物語で、一線は超えない。人間関係はとても狭いし、貧困や孤独や苦悩やシビアな現実の話でもある。

ちなみにこの物語は東京オリンピックが迫る2020年よりちょっと前の世界が舞台だ。
外食産業とイベント会社が家業だという堀口の、ほんの数年後の未来はどうなっているのだろうと読みながら背筋がぞわぞわした。

文明開化したころの東京が舞台。
17歳の蒼(あおい)は手品団で下働きをしながらサトリとして舞台にもあがっている。7歳より昔の記憶はぼんやりとしている。若干のしあわせな思い出と炎にまかれる両親、それから品のいい硬質の声。そのぐらいだ。7歳以後は親戚の家を転々として12歳から今の手品団で蔑まれ食べることもままならない日があり、意に沿わない相手との結婚が決まっている。
疲労を抱え自室へ戻ると所狭しと本が積まれている。蒼がひそかに「栞の君」と呼んでいる支援者から贈られてきたものだ。
顔も年齢も性別も分からない栞の君と蒼が出会ったのは蒼の嫁入りの日だった。以前手品団で蒼の演目たる「サトリ」で壇上にあがった青年で、蒼の窮状に割って入ったのだった。
蒼の「サトリ」は異能ではなく並外れて優れた観察眼と記憶力によるものだ。
栞の君こと城ケ崎宗一は壇上で蒼が見抜いた通り病気、しかも病名の原因も不明の病に侵されており、蒼は看護係として嫁入りが決まった。

帯には分かりやすく「帝都にきらめくシンデレラロマンス」の文字が踊ってるんですけど、
ラブロマンス一辺倒ではなく、鷹泉医学学校での学友、特に生涯の腹心の友になりそうな千夜子との交流もあります。

1冊でまとまっているように見えるものの(いかにも以下続刊! スタイルではないものの)、ここの話もうちょっと詳しく聞きたいよねという点がそこかしこにあるので、続き読みたいな。特にこれ、というのは銃創関連です。伯爵と呼ばれていた宗一が別の呼ばれ方をしていたあたりも気になります。

明治時代の医大関連については、確か発売日当日の昼休みにタイムラインに流れてきたこの漫画で見たやつや! と謎にテンションが上がる。

その生い立ちから自身も自己肯定感も自尊感情もあったものではない蒼が幸せというものに触れる、大事なものが増える、目標ややりたいことがが増える物語です。

同人誌です。
通販はここで買えます→少女文学館公式通販 - BOOTH
試し読みはここにあります→会社づくりエッセイ本『社長転生〜会社爆誕! 頼れる仲間と創作ライフ〜』試し読み|紅玉いづき|note

今年、紅玉いづきさんと栗原ちひろさんは会社を作りました
起業を決めた理由(紅玉さん)・副社長(栗原さん)の実務コラム・事務方(港区万能OLの森さん)による起業エッセイ。
わたしはTwitterに住んでいる会社勤めなので、インボイスの被害を被るのはクリエイター関連だと思っている節あるんだけど、いろんな方面にインボイスに頭を抱えている人はいるんだろうなあと思っている。

会社づくりのエッセイである。いうて小説家2人なので、「自分たちでできなくもないけど、そこはお金を払ってプロにお願いしていい感じにしてもらう」という感じ。会社を作るためにはこれこれこういうことが必要で、めっちゃ大変なんだなというのはわかる。
ちなみにわたくしわかるのは療養病棟に近い病棟を別の病棟の一部として立ち上げることの一部に携わり、電子カルテ変更のあれこれについてはめっちゃ携わったので、「立ち上げの大変さ」はある程度想像できる。

これは万が一にも誤読を防ぐために書くんだけど、これは誉め言葉なんだけど、あの、紅玉さんと栗原さんは「オタクはよくそういうけどほぼ叶うことはない、『老後は同じグループホームに入ろう』みたいなことを体現されているなあ」という感想を持ちました。20ページに対する感想です。
ちなみにTwitterでよく見る「好きな社長のカット」は14ページ(しおしおのぱー)と37ページ(ガラの悪い社長)です。
来年秋のコミティアでは起業2年目の社長転生を読みたいなと思います。
知らない世界を垣間見れるエッセイめっちゃ好物。

小説家になろうで連載→書籍化→加筆修正して文庫化が本作。連載第1回は2010年。
ハルカがまだ女子高生だったころ、日本から異世界に召喚された。言葉を教えられ理解できるようになったころ、召喚者には「手違いだった。元の世界には戻してやれない」と言われた。ハルカはその後生活のために魔術の道を歩み、師匠となった老魔術師はある朝死んでいた。それから6年後、ハルカは戦地に立っていた。
ハルカは女性だが、出征を求められた際に侮られないよう魔術で男性の姿に化けてから出立した。

物語はハルカが粉塵爆発で敵を殲滅し、息のある味方を片っ端から蘇生し魔力の限界まで癒し続けて限界を迎えたところから動き始める。生きる気力をなくしていた青年にハルカは「私が死んだら家に帰って自殺でも何でもしろ、その代わり私が生きのびたらお前が捨てたお前の一生は私が拾う」と宣言し、ハルカは生き残った。
青年の名前はリカルド・メルツァース・ブラムディ。美形で騎士用の儀礼服を身にまとい実用性を妨げない程度に装飾された剣を佩いた絵に描いたような騎士だ。騎士といえば軍部のエリートで高貴な人間の護衛から指揮まで行う、ただの魔術師のハルカから見ればとてつもない高位の人間だ。
リカルドは貴族でありながら平民ハルカの従僕として仕えるし我が家で療養してくださいという。

物語の着陸場所が分からないままに読んでいた。1人称小説だけど、語り手が時折変わる。カメラを持つ人間は1人や2人ではない。視点が変わったことはわかるが誰目線なのかはすぐにはわからないところがもどかしかった。
読みながらロマンス小説ってこういう感じなのかなあと思うことが結構あった。そう思う程度に戦時下においても戦闘描写より恋愛描写のほうが圧倒的に多い。

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