カテゴリー「 一般文庫 」の記事

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PR誌astaに掲載されていた「思い出に残るあの店」を語るエッセイ。お店情報もあり文字で読むワカコ酒みたいな本だ。

アンソロジー形式で寄稿(といえばいいのか参加といえばいいのか)されているのは三浦しをん、西加奈子、森見登美彦、宇垣美里、山田ルイ53世、はるな檸檬、バービー、塩谷舞といろんな分野で活躍されている方々だ。

髭男爵の片割れ、山田ルイ53世さんがあの芸風で実は人見知りで「個人を認識された瞬間に店から足が遠のく」タイプなのは意外で、親近感が湧いた。

内容はランチ・ディナー・スイーツ。お店はほぼ都内だが、若干九州が含まれている。
◎作家一覧(掲載順) 三浦しをん、西加奈子、中江有里、美村里江、宇垣美里、清水由美、山田ルイ53世、塩谷舞、稲垣えみ子、道尾秀介、ジェーン・スー、岡崎琢磨、バービー、朝井リョウ、瀬尾まいこ、佐藤雫、清水ミチコ、あさのますみ、畠中恵、はるな檸檬、小川糸、久住昌之、川内有緒、澤村伊智、朱野帰子、最相葉月、藤岡陽子、森見登美彦

書影が出ない……。頑張れAmazon

結婚に至る道の1冊(最後まで読んでも結婚式ではない)。
今回地味に面白かったのは男女間の意識の齟齬的なあれ。絶妙にかみ合ってない(そして別にそれをあえて確認したりしていない)のが面白かったです。淡々とした描写にまあまあの頻度で混ざってるのが面白い。思えばこのシリーズも11冊か。結婚とともに終わるんだろうか。結婚生活も描かれるんだろうか。どうせなら太陽がお父さんしているところまで読んでみたい。

宮田陽彩は大学へ通う傍ら週6でコンビニでバイトをする。月20万ぐらい稼いで手取りは16万ほどになり、うち8万は家に入れている。残りは学費に消える。奨学金も借りているがそれはあくまで保険で一切手を付けず卒業と同時に一括返済するつもりだ。
大卒の資格の元就職する。それが大学に入学した目的だ。宮田はの母と2人で暮らしている。高卒で働けという母を説得して何とか大学へ通うことができた。家に入れる8万も自分支払いの学費も奨学金も家から近い大学に通うこと親の意向だ。

同じバイトの江永(女)と堀口(男)、同じ授業を取っている木村(女)が主な登場人物だ。宮田は家を出て江永の家に転がり込むことになる。友達のいない宮田は江永に関するうわさ(いわく、父親が殺人犯)を知らず、木村から聞いてそのことを本人に尋ねたりした。

「幸福」「普通」「よくいる」とはお世辞にも言えない境遇の宮田と江永の話は時々つらく、2人が出会えてよかったと思う。何らかの理由で離れることがあってもずっと仲良くしてほしい。
ちなみに本作はそんなにべたべたはしてない女同士の友情や関係性の物語で、一線は超えない。人間関係はとても狭いし、貧困や孤独や苦悩やシビアな現実の話でもある。

ちなみにこの物語は東京オリンピックが迫る2020年よりちょっと前の世界が舞台だ。
外食産業とイベント会社が家業だという堀口の、ほんの数年後の未来はどうなっているのだろうと読みながら背筋がぞわぞわした。

文明開化したころの東京が舞台。
17歳の蒼(あおい)は手品団で下働きをしながらサトリとして舞台にもあがっている。7歳より昔の記憶はぼんやりとしている。若干のしあわせな思い出と炎にまかれる両親、それから品のいい硬質の声。そのぐらいだ。7歳以後は親戚の家を転々として12歳から今の手品団で蔑まれ食べることもままならない日があり、意に沿わない相手との結婚が決まっている。
疲労を抱え自室へ戻ると所狭しと本が積まれている。蒼がひそかに「栞の君」と呼んでいる支援者から贈られてきたものだ。
顔も年齢も性別も分からない栞の君と蒼が出会ったのは蒼の嫁入りの日だった。以前手品団で蒼の演目たる「サトリ」で壇上にあがった青年で、蒼の窮状に割って入ったのだった。
蒼の「サトリ」は異能ではなく並外れて優れた観察眼と記憶力によるものだ。
栞の君こと城ケ崎宗一は壇上で蒼が見抜いた通り病気、しかも病名の原因も不明の病に侵されており、蒼は看護係として嫁入りが決まった。

帯には分かりやすく「帝都にきらめくシンデレラロマンス」の文字が踊ってるんですけど、
ラブロマンス一辺倒ではなく、鷹泉医学学校での学友、特に生涯の腹心の友になりそうな千夜子との交流もあります。

1冊でまとまっているように見えるものの(いかにも以下続刊! スタイルではないものの)、ここの話もうちょっと詳しく聞きたいよねという点がそこかしこにあるので、続き読みたいな。特にこれ、というのは銃創関連です。伯爵と呼ばれていた宗一が別の呼ばれ方をしていたあたりも気になります。

明治時代の医大関連については、確か発売日当日の昼休みにタイムラインに流れてきたこの漫画で見たやつや! と謎にテンションが上がる。

その生い立ちから自身も自己肯定感も自尊感情もあったものではない蒼が幸せというものに触れる、大事なものが増える、目標ややりたいことがが増える物語です。

小説家になろうで連載→書籍化→加筆修正して文庫化が本作。連載第1回は2010年。
ハルカがまだ女子高生だったころ、日本から異世界に召喚された。言葉を教えられ理解できるようになったころ、召喚者には「手違いだった。元の世界には戻してやれない」と言われた。ハルカはその後生活のために魔術の道を歩み、師匠となった老魔術師はある朝死んでいた。それから6年後、ハルカは戦地に立っていた。
ハルカは女性だが、出征を求められた際に侮られないよう魔術で男性の姿に化けてから出立した。

物語はハルカが粉塵爆発で敵を殲滅し、息のある味方を片っ端から蘇生し魔力の限界まで癒し続けて限界を迎えたところから動き始める。生きる気力をなくしていた青年にハルカは「私が死んだら家に帰って自殺でも何でもしろ、その代わり私が生きのびたらお前が捨てたお前の一生は私が拾う」と宣言し、ハルカは生き残った。
青年の名前はリカルド・メルツァース・ブラムディ。美形で騎士用の儀礼服を身にまとい実用性を妨げない程度に装飾された剣を佩いた絵に描いたような騎士だ。騎士といえば軍部のエリートで高貴な人間の護衛から指揮まで行う、ただの魔術師のハルカから見ればとてつもない高位の人間だ。
リカルドは貴族でありながら平民ハルカの従僕として仕えるし我が家で療養してくださいという。

物語の着陸場所が分からないままに読んでいた。1人称小説だけど、語り手が時折変わる。カメラを持つ人間は1人や2人ではない。視点が変わったことはわかるが誰目線なのかはすぐにはわからないところがもどかしかった。
読みながらロマンス小説ってこういう感じなのかなあと思うことが結構あった。そう思う程度に戦時下においても戦闘描写より恋愛描写のほうが圧倒的に多い。

前作(忘れじのK 半吸血鬼は闇を食む)に比べると随分と読みやすかったような……。

異能異能したバトルありきの事件がなく(テネブレやヴァンピーロは登場するが)描かれているのは日常が多い。
ダンピールのK=加藤和樹=かっぱとニボーテ(ダンピールの監視役)のガブリエーレ(ガビー)の関係性やフィレンツェでの生活や二人の今後について比重が多かったように思う。
ガブリエーレはニボーテとしてふさわしいのかと観察に来た神父のバシリス視点からもかっぱやガビーについて描かれる。
ガビーが選ぶ道も興味深い。

加筆修正された少女文学1号〜3号連載分と書下ろしの最終章とあとがきが追加された個人の同人誌で、去年天金加工(黄金に輝くキラキラ本)で話題だった。現在手に入るのは現在はkindleの電子書籍(kindle unlimited対象)。紙で読みたい人は今年加工なしの通常版が頒布予定だそう。
黄金と骨の王国【通常装丁版】 - 栗原移動遊園売店 - BOOTH

大陸の中央に位置し、国土のほとんどが高原のこの国のことを人々は「黄金と骨の王国」と呼んだ。火山が多いところには竜がたくさん住んでいる。この国もその例外ではなく一時は王族と竜は契約を結び共存していた時期もあったが、ある時から竜は契約以上の生贄を求め、人はそれを退けた。その時竜は王国に呪いをかけた。
竜の一吹きで国民の3分の1が金の像と化し、砂となり崩れ落ち一か所に固まったそれは壁となった。
接触で感染するその呪いは黄金病と呼ばれ、全身が黄金へ変わるその病はなお恐れられている。

竜殺しという触れ込みに己が殺した竜の骨を兜として寝るとき以外は装着しているギョウは闘技場で見た足のきかないごみのような見た目の人間を傭兵として雇った。ギョウが男だと思っていたその足の悪い人間を自宅で風呂へ放り込むと半身を黄金病に侵された女エンだということを知った。

第1王女ハイリが露台から落ちて死んだという。王族の弔いのため、多くの民が「嘆きの民」として埋められる。狩られた各集落の民99人にのぼる。葬列を襲撃して長の娘を奪還せよと依頼を受けたのがギョウだ。そうして葬列が通る輿へとかけあがったエンは第1王女として棺で寝かされていた女の死骸をギョウへ見せた。彼女こそが依頼のあった長の娘だ。

そういうはじまりをする神話が終わって歴史が始まる物語です。結構硬いファンタジーで、奈落に突き落とされた少女のその後の物語。

続編。今回はお仕事小説ではなくフェロモン店長も1巻比登場控えめ。
息子夫婦の都合で家や田畑を売って見知らぬ土地に引っ越した祖母は店長に恋をした。(恋の考察をグランマと)
コンビニ店員廣瀬太郎とその元カノと志波3きょうだいの話(廣瀬太郎の憂鬱)
1巻からの続投、高校生になった村井美月のその後の話。(クイーンの失脚)
明らかに続刊ありきのボスキャラ的な登場と引きがあって終わった。

カクヨムからの書籍化。

何かというと自殺を企てる曽根崎を六文銭が甲斐甲斐しくお世話する(ついでに自殺も阻止する)ライトなミステリで、ブロマンス的なやつ。
曽根崎は自殺か他殺か死の匂いをかぎ分ける能力を持っていて、それは写真でもスーパーマーケット(魚とか)でもいかんなく発揮されるのでかなり引きこもり傾向で生活能力は低い。
六文銭は曽根崎のことを「つづるちゃん」と呼びまるで「飼い主に追いすがる大型犬」男子だ。
途中でいきなり過去編に時間軸が飛んでるのがちょっと分かりにくかったかな。結構軽快に人が死ぬ話でそこは良かったんだけど、ブロマンスを売りにするなら死体を増やすよりもっと絡みを増やしてほしかった(あとがきを読むまでは「これをブロマンス入門としてすすめてほしい」というほどにそれをメインにしていることを知らなかった)
全体的には面白く読んだ。

これは在りし日の富士見ミステリー文庫のGOSICKを思い出す感じのミステリ。
夫デイビットが好む女性でいようと自分を殺していた女王オフィーリアはある夜本当に殺された。死の間際にオフィーリアは声を聴いた。「妖精王リアの王冠を持つ者が死んだ。古の約束に従い条件がそろえば呪いが発動する。まずはオフィーリア、君が10日だけ生き返るよ、さあ君の願いを言ってごらん」
オフィーリアは望んだ。「自分を殺した人間が知りたい」

そうして生き返ったオフィーリアは、10日だけ生き返るといわれたオフィーリアはもはや誰の意向をうかがうこともなく自分のやりたいことをはじめた。
オフィーリアを殺したのは誰なのか、あと10日のうちに弟ジョンを後継に仕立て上げないといけない。
石田リンネ作品はおこぼれ姫以来久しぶりに読んだが、「強い女性」は健在だった。

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